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講演会

「総合的な学習について」

2000年6月19日(月)

午後3時〜午後4時40分

大正小学校 図書室


講師

教育相談員

松嵜 敏次 先生


今日は呼んでくださいましてありがとうございました。
昨年から、声がかかったところに行ってお手伝いをしています。いろいろな学校に行っています。

総合的な学習ですが、子供の育ちの中から教育の理論が生まれてくると言えるでしょう。

ある学校の校長からの話。横浜市が総合を実施していないので(2割程度だった)叱られたという話であった。横浜市は全国的に研究ではリードしているだけあって驚いた。随分と研究をやっているのに、何でと思うが、横浜市の総合がごちゃごちゃしているという感じがする。
これまでの教育課程というと、こう(板書)。生活科の延長と見られているのではないかと思うがどうか。
これまでのやりかたでは21世紀の子供を育てることができないというように見られてきた。総合的な学習の時間というように、これは時間なのである。

教科内の総合科(ア)、教科間の総合化(イ)、その先に総合的な学習の時間(ウ)を入れている。アとイは教科であり、全員が学習する必要がある。横浜はこのイの部分が進んでいるといえる。でもこれからはこちら、ウのほうを進めていかなければいけない。教科主義、学級王国的では、子供の一部を伸ばせなくなっている。生きる力というものであるが、21世紀に生きていくのに必要な能力、拡散的思考、集約的思考、表現力などが求められる。
問題解決能力を養う場を設定。学び方、学習事項の基礎基本をベースに21世紀に必要な能力を伸ばす活動として、総合的な学習ととらえる。現実を教材にし、そこから学んでいこうということである。いろんな教科の成果、力を使うので、教科の部分はどうしても必要である。それが基礎・基本である。

横浜市では23の成長課題を出している。
教科の手法を使うと、まずねらいから書かれる。しかし、総合的な学習では、みんなが同じねらいを、というのは不可能。これまで持っていた指導観、学力観といった、「観」の転換をしないといけない。子供があくまでの主人公というのがある。しかし、そうは言っても、外に出るといたずらをする、安全上の問題が気になり、怪我をするといった考えをもつ人はいる。たとえば、修学旅行で子供が集合場所に向かうという案を出したら、保護者から反対の意見が出た。それを子供に伝えたら、子供自身がどう考え、どう計画を立てているかを保護者に説明する活動を展開した結果、保護者が納得して、箱根まで自分たちでいくことを認めたという。最初は保護者もそうだが、教諭だってそうではないか。
時間を与えて作業をさせていたときに、ある作業ができていなかったときに、どうするか。これは実例であるが、作業が進んでいないのを見た教師が、「苦労しているのね」と言ったところ、子供が自分の苦労を話したという。子供はきちんとやろうとしていてその子なりのものをもってる。それが「心の育ち」、「生き方」につながってくる。子供は「自分なりに自分を育てる」とういう要素をもっているのだ。「何かをなす」ことによって「育つ」のであって、「言葉で育つ」のではない。「することで育つ」のだ。いかだを作ったことを報告した子がいて、その時に協力という実感をこめて言ったとすると、自分たちが体験することで抽象的な「協力」ということを実感することができたわけだ。それを(教師が)価値づけてあげることが必要である。
体験学習でかくれてお菓子を食べたことを事後に作文にした子がいたが、そのことを通して、子供は「友情」の気付きとかを育てているのである。
なすことによって育つが、それは「やりたいこと」、「自己没入できるようなこと」でなければ自分のよさを発揮できることはないのではないか。
活動を通す中で生き方を見つける子供もいるのである。一人一人違うが何かよい面をもっている、という見方ができるのが総合的な学習の時間ではないか。

子供には、速く伸びる子、スローな子と、いろいろあるが、自分のペースでできる総合的な学習が大事になってくる。これは教科学習ではできないことではないか。偏差値で測るようなことではないと思うが。

さて、あと20年になると今の子供が働きざかりであるが、子供が育たなければ、と思う。

子供が育つかどうかについては、いわゆるマニュアルはないがテーマはある。総合の時間をやていきますよね。今年は、そうですね、少なくて30時間、時間を行事で使って、実際30時間以上使っています。

テーマの視点として、3つあげられます。
1 今日的な教育課題。情報、国際理解、環境、福祉。
2 子供の興味関心に基づくもの。遠足、体験学習、教科からの興味関心
3 地域のもっている地域の特性(自然など)
この3すくみ(トライアングル)で、学校として大きなテーマを考えなければいけない。
たとえば、3年、4年では地域から出るものが多いようだ。地域のお祭りにふれる、福祉にふれる等。こうした3すくみの中から、この学校のテーマができる。となると、先生方は地域のことをよく知らないといけない。
テーマの考えとして、ここは5、6年でやろうとか、3,6年でやろうとかいう活動がどこかでやってほしい。いろんな人と出会いながら育ていくのですから。
先生でもいろんな先生がいるのだから、子供もいろいろな先生とふれあうことがあってよい。だから、学級だけでやるのはやめてもらいたい。異学年とのかかわりで成長するものがあるだろう。

では、どうやって入るか。スパッと落とす手もある、教科間から切り口を見つけてもよい。
子供も「総合的な学習」に慣れていない。ただ、条件をつけてもらいたい。学年は活動の母体であるというから。

次に社会と関わる。公害についてやるとする。模造紙に書いて発表したってどんな成長が見られますか? 社会と関わる以上は、文字からだけではなく人と関わることが大事です。たとえば三つ沢小学校の学区では実際に3世代で住む人が多く、おじいさんと関わったりするという活動がある。どう活動するかを考えるように仕向ける。(子供が)おじいさんとお世話になったので掃除をしようとしたら、おじいさんから止められたという。おじいさんが言うには、子供からも生きる力を得られたから(そうじをする必要は子供にはない)という。そこに人間のふれあいが出てくる。こうした活動から本当に社会とかかわることができるのではないか。
子供が学びたい、知りたいというときに本職の人と関わることがあるとよい。そこで、人の生き方を学ぶことができるし、自分の生き方と比較し、重ねることで成長するだろう。
ということで図書室の資料は使わない、という条件をつけることが大事かなと思う。

それから、「本物とふれあう」ということ。本牧小学校でカッター(船)に最初からふれているので、カッターでレースをしてもよい成績が出る。

模擬体験もよいが、それはあちら(イ)でやればいいだろう。

この活動は、結果で何ができた、どうなった、何ができたということではなく、この時間で終わりという活動、本物を志向する活動を。

体験だというので、嫌だなと思う子にも無理矢理やらせるというのはどうか。その子の個性を見抜いてどう誉めてあげるか、であろう。心のたかまり、よろこび、ふるえ、が伴わないと「育ち」につながらない。心のたかまりの場をどう、子供といっしょに見つけていくか、作っていくか。みんながおんなじことをやってもしようがないだろう。
教科は一定のレベルにもっていくのだが、総合ではそうではなくそれぞれの子供の思いでやっていくから育ちが見られる。
教科でも伸ばす必要あるだろうが。

まあ、挫折体験も必要である。
結果でなく、経過である。

この活動で、ねらいが何なのか、何がねらいかをはっきりさせておく。教師が育てたいという視点を、子供も気付くようにさせたい。また、人のよさをみつけたりその反対に自分のよさをみつけたりするだろう。
育ちという観点からすると、活動は手段なのである。大事なのは子供の育ちである。そうなるとこういうテーマでやってこういう子に育ちましたという報告会になるだろう。

総合的な学習には7つの段階がある。
1 総合の時間とは何かを子供が理解する段階

人間として育っていくための時間であることを、新プランに出ているので、発達に合わせて理解させる。何をそだてるか、それをはかる、そしてともだちのよさに気付く。条件として、本などを使わないし時間もかぎられているということをよく伝えておくこと。また、地域や保護者にも理解をもとめる。

2 テーマについて。どこから入るか
地域をまわってみる、それから専門家の話を聞いてもらいたい。それから活動を始める。活動が問題ではなく(社会を認識し、変える力に高まること)育つこと、育つきっかけになることが大事である。
3 テーマから、自分で問題を見つけること。

4 課題(活動計画)を立てる
最初は子供自身の認識が薄いから、そこをさらにみつめていき、問題をみつける。町の人に直にあい、自分ができることは何か考える。たとえば、福祉の活動をして、そこからジュニア民生委員が生まれるかもしれない。
ある子供が、難聴者と話して、難聴者に困ることはないかと聞いたら、困ることはないという返事が返ってきた。この返事に自分がもっている概念が壊れるということになるだろうが、そこまでいかないと課題が生まれない。

5 実践・体験をもつこと
これは一人ひとりの活動である。その活動について、そこからこの子が育つか、できるか、よさが発揮できるかと見極めることが大事。一人ひとりの育ちの速さに違いがあるのだから、活動に違いがあって当然。
教師ははげまし、活動の意味づけ、価値づけが必要で、ここに教師としての力量が問われる。子供の心情をみていなければいけないからだ。

6 自己実現のステージを設ける
まあ、発表会になるのだろうが、ステージとしては発表の場は大きいほうがよい。それはとても大事な場である。子供には、そこでは自分が育ったことをことを中心に話をし、活動は二の次であることを明示すること。

いろいろなことについて教師が指示するだけが良いのではない。これからは自分で考えるということが大事になる。

7 ふりかえりの場を設ける
評価といおうか。次へのステップになるものでもある。また活動で足りなかったことは何かと問うことで、何ができなかったということから、教科の「学びなおし」に向かうということもある。

総合的な学習を教科の「研究の仕様」でやらないでください。総合的な学習が結局は教科になってしまう学校が見られるが、そうではなく、子供の活動を語る会にしてもらいたい。

まったく新しい活動として、新しい研究仕様を開拓していただきたい。決して教科の仕様ではやらないでいただきたい。「観」を変えていただきたい。