子供の学力(保護者編)

 文部科学相の諮問機関、中央教育審議会が今週「ゆとり教育」の見直しに着手、教育行政が大きく方向転換する中、「子どもの学力」を巡って保護者や教師らから多数の投稿が寄せられた。保護者からは基礎学力の重視を求める声が多かったが、学校現場からは「安易な方針転換で間題は解決しない」との指摘も。双方の見方を二週にわたり紹介する。今週は保護者の声を中心に。


教師の裁量広くクラス間で格差

神奈川県藤沢市の主婦、橋本真紀子さん(43)新学習指導要領がうたう「生きる力」は確かに必要だ。

しかし、実際は理想とだいぶかけ離れている。各学校、教師の裁量が広がり、学校間やクラス間の格差がとても大きくなっている。我が家の場合は高学年を兵庫県で過ごした上の子と、神奈川県で過ごした下の子で学習内容があまりにも違うのであきれている。今の状態では転校どころか隣のクラスに行ってもついていけない。公教育ではどこに行っても困らない基礎学力の定着を重視してもらわなければ困る。

問題に取り組む"耐力"を育てて

北九州市の主婦、泉ゆかりさん(41)中-と小三の子どもがいるが、公立小学校での授業内容はぜひ見直しを進めてほしい。中でも計算、漢字、読解の力を大幅に改善する必要があると思う。「総合的な学習の時間」の良さも分かるが、小中学校ではむしろ、こつこつと問題に取り組んだり、時間がかかる面倒なことでも克服していける心を育ててほしい。ゆとり教育が言われるようになって、一番低下したのはそうした"耐力〃ではないかと思う。子どもを甘やかさないこと、子どもにこびないこと。その必要性を親として感じている。


公教育に見切り私立中学を受験

千葉県習志野市の会社員、小泉あゆみさん(39)

長男の中学受験が終わった。もともとは高校まで公立へ通わせたいと思っていたが、ある日子どもが持ち帰った算数のテストがあまりに簡単すぎるのでがくぜんとして、私立中学受験を考えるようになった。公教育に見切りをつけた家庭では夜遅くまで子どもが塾に通っている。これがゆとり教育なのか。

「生きる力」のつく教育ができれば理想的だ。しかし、それは十分な基礎学力の上に成り立つものではないか。また、ゆとり教育導入の理由となった子どもの無気力、学級崩壊、犯罪の低年齢化などの原因は、テレビ番組、ゲーム、コミック雑誌などもっと幅広い視点から考えるべきだ。


親が必要以上に期待し過ぎでは

川崎市の主婦(35)小一の長女と幼稚園の二女がいる。子どもの学力が論議されているが、そもそも親自身が子どもの学力に必要以上の期待をかけているのではないか。長女の友達の多くは放課後はたくさんの習い事を抱えており、一緒に遊ぶ時間を見つけることさえ難しい。

私たちの小学生時代といえば、学校から帰っておやつを食べるとすぐに友達とゴム跳びやドッジボiルをして暗くなるまで遊んでいた。そういう中で、おのずと大切なことを学び取っていたと思う。


試験で勝つのは一部の人間だけ

大阪府豊中市の大学研究員、仲尾久美さん(41)学力という言葉が、受験やテストで測定できる能力という意味で使われることが多いが、大人が子どもたちに身につけてほしいと願っているのはそういった力だろうか。学力とは何かという問いに納得できる答えを持たないまま、科学的分析や評価をすることなく、一種のブームのように教育のあり方が批判されている。あまりにも行き当たりばったりだ。ついには文科相から「学校でも競争意識を高める必要がある」という言まで飛び出した。果たしてそれで子どもたちは幸せになるのだろうか。テストで測れる力を競わせても、勝ち残れるのはごく-部の人間しかいない。

文科相、教科内容の充実要請

「ゆとり教育」見直しの機運が急速に高まった背景には、最近発表された国際調査で、日本の子どもの学力低下が相次いで示されたことがある。

主要四十−カ国・地域で義務教育修了段階の生徒を調査した経済協力開発機構の「学習到達度調査」では、日本は読解力が前回(二〇〇〇年)の八位から十四位に低下した。

二十五カ国・地域の小四と中二を対象に数学(算数)と理科の学力を国際比較した国際教育到達度評価学会の調査でも、日本は小四理科の平均点が前回(−九九五年)の五百五十三点から五百四十三点に低下、中二数学が五百七十九点から五百七十点に下がった。

これを受け中山成彬文部科学相は十五日、中央教育審議会に対して学習指導要領を全面的に見直し、「世界トップレベルの学力の復活を目指して教科内容の改善充実を検討してほしい」と要請。今秋までに方向性が出る見通し。

2005年2月18日(金)日経夕刊

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