学力向上フロンティアスクール
2002年(平成14年)9月13日(金曜日)
一部の公立小中学校の教室で、今年から"異変"が起きている。文部科学省が指定した「学力向上フロンティアスクール」では、児童生徒の理解に応じた習熟度別学習などに取り組んでいる。子どもたちからも「分かりやすい」と好評だ。ただ、習熟度別のクラス分けに親や子どもの「見え」が絡むことも。教え方への関心も高まり、教師の意識改革も問われている。
福岡県芦屋町は、全国でも異例の「学力向上フロンティア宣言」を出し、町内三つの小学校と一つの中学校すべてで習熟度別授業などを導入した。各学校の校門には「学力向上フロンティア宣言」の看板が立つ。文科省のフロンティア校指定は三校だが、町独自に残る一小学校を"協力校"に指定、同様の取り組みをしている。「きっかけは中学のクラス分けのテストの平均点、特に数学の低下」と中島幸男教育長は打ち明ける。
芦屋小学校の五年生の算数では、今年から教科書の単元ごとにニクラスを三つのグループに分けた。グループ分けは子どもの自己申告に基づいている。二学期最初の単元は小数同士の掛け算。「一材で一・ニキロ修の鉄棒の○・八屑の重さ」を求める設問だが、進み方はグループで随分異なる。理解の早いグループでは既に習った小数と正数の掛け算とわり算をミックスして答えを導き出すと、次の単元へのステップとなる問題にも取り組ませる。一方、理解が遅い子どもは前の単元の復習から。教頭らも手伝い、二人体制で指導する。中間層の子には通常のスピードで教えている。三グループとも、教師が子ども一人ひとりとやり取りする頻度は従来より格段に多い。スローぺースグループの子どもからも「四年の時より分かりやすい「算数は嫌いだったけど、好きになれそう」との声も聞かれる。
末吉靖彦校長は「子どもの集中力が違う。一人ひとりが目をかけてもらっている実感があるのでは」と指摘する。
ただ、グループ分けの際に子どもは理解の遅いグループを希望しても、親の希望で理解の進んでいるグループを選んだケースもあった。同町の山鹿小学校は市販のテストで、国語と算数のクラス平均目標として「八十点以上」を打ち出した。高学年の習熟度別授業のほか、低学年でもクラスを半分に分けた少人数指導を実施した。中学校教師だった佐々木敏幸校長は「中学だけでなく小学校から力をつけないと伸びない。基礎基本を身につけさせて中学に送り出そうと思う」と話す。
千葉県浦安市立堀江中学校も今春指定校となり、全学年全クラスの数学と英語で少人数指導を試みた。習熟度に差が付きやすい数学では以前から少人数指導への二一ズが高かったという。「授業が分かるようになったかどうか」の生徒アンケートの結果、全校約四百六十人のうち肯定的な回答が六割を占めた。一方、問題点も見えてきた。各学年五クラスずつを六グループに分けて指導したが、元々のクラス単位ではないため教師の病欠などによる振り替え授業が難しく、今後は方式を改めることに。
また、従来は教科担当の教師が一学年すべての生徒を把握していたが、追加配置された教員もフル活用した指導体制を取ったため、一人の教師が把握している生徒数は半分に減り、成績を付ける際の判断が難しくなったという。複数の教師の指導を見比べられるため、生徒や親が「あっちの先生の方が教え方がうまい」などと評価を下すようになった面もあるという。
教師の意識改革の効果も
学力向上フロンティア校での取り組み例
◆少人数指導
◆習熟度別授業
◆習熟度に応じた指導資料(プリント)作成など
◆小学校での教科担任制
◆50分授業を10分×5コマで毎日振り分けるなどのrモジュール授業」
学力向上フロンティア校は、ある意味では「学力低下」批判に対する文部科学省の回答の核ともいえる部分だ。新指導要領に沿った「薄い教科書」への批判に対し、文科省は理解の早い子どもと、遅れ気味の子どもとにそれぞれ対応する個別指導の必要性を訴えるようになった。文科省は小中学校で今年度約八百五十校を指定。来年度予算概算要求ではこれを倍増したほか、高校版のフロンティアハイスクールも導入する。
フロンティア校導入のもう一つの効果として、教師の意識改革を促すという側面もありそうだ。芦屋小学校の末吉校長は「新要領の『最低基準化』でプレッシャーは大きくなった。学習内容三割減というが、すべての子に必ずマスターさせるのは大変。教育研究をしっかりやらないといけない。一人の先生が好き勝手をやる"学級王国"はもうできない」と話している。