読者から

子供の学力低下

学校現場編(下)

 

「子どもの学力」を巡っては、学校現場からも多くの意見が寄せられた。保護者からは「読み書き、計算の力を重視して」との要望が多かったのに対し、教師側は「総合的な学習の時間」の効用や知識偏重の教育への懸念を訴える意見も多かった。

 

総合学習の縮小貴重な体験減る

東京都三鷹市の臨床心理士、白崎由香里さん(40)総合的学習が縮小されようとしていることを残念に思う。スクールカウンセラーとして中学の相談室で子どもたちの声を聞くと、職場体験をしたり調べ学習をしたりする楽しさを語る子が多いからだ。

勉強に自信のない生徒が総合的学習では評価されたり、不登校の子が総合的学習なら参加できたりした。お年寄りや幼い子と交流して将来やりたい仕事が見えてきた子どももいる。しかし、こういった体験や子どもたちの反応は点数化されないため表に出にくく、学習到達度だけがクローズアップされてしまう。機械的に勉強する時間が増え、競争が激化して学校嫌いが増えることのないよう、生徒の声を生かした幅広い教育を望む。

 

忍耐力など落ち何するにも大変

東京都八王子市の女性中学教員(52)公立中学でみる限り、やはりここ数年で生徒の学力は落ちている。今、定期テストに出しているのは五年ほど前なら満点が何人も出て成績がつけられなかったような問題だが、満点はほとんどいない。

しかし落ちているのは学力だけではない。忍耐力、向上心、コミュニケーション力など生活全体の力が落ちていると感じる。人を信頼することができないし組織として活動することもできない。委員会活動、クラブ活動、清掃、どの場面でも十年前なら当たり前だったことをやるのがとても大変になっている。

 

レポート提出率低下に頭悩ます

大阪府茨木市の高校教員、中井仁さん(54)高校で物理を教えている。この十年あまり、実験レポートの提出率の低下に頭を悩ませている。生徒たちはできるだけ早く正解に達することを求められ続け、ひとつのテーマを追求して四、五時間もかけてレポー卜を書くことの価値が分かっていないのではないか。

レポートを書くときは、文法や文章の脈絡など様々なことを考えつつ作業を進めなければならない。その過程で考える力、考える技術が身につくのだ。共通一次でマーク式テストによる入試が始まって二十五年。その影響がこのような形で現れているのかもしれない。

 

若者に夢与えぬ企業側にも問題

東京都練馬区の男性高校教員(47)学力低下論という学校批判が横行しているが、これまでも社会、経済が行き詰まるといつも学校が批判された。経済成長が限界になると「創造性の育成ができていない」、いじめが問題になると「心の教育ができていない」といった具合だ。今回の批判も学校への八つ当たりだ。

漢字や計算がお手上げの者は昔からいたが、経済発展がそうした子も社会に取り込み、仕事を通して生きる力を身につけさせていた。ところが近年の企業は人を使い捨てのように扱うから、若者は就職に夢を抱けず、学習意欲も持てない。企業こそ生涯学習の中核機関となって、学力低下を食い止めるべきだ。

 

※ あきらめが早く挑戦する気ない

横浜市の大学生、馬渕理沙さん(20)一年半ほど前から小学生の家庭教師をしている。子どもを見ていて-番強く感じるのが、あきらめが早いことだ。算数の問題が分からなくてもう-度考えてみるとか、漢字を間違えたから何回か書いて覚えるとか、そういう考えが初めからない。本を読んだり、分かるまで解いたり、調べ物をしたり。こういう地味な作業こそが勉強だ。最初はつらくても、これを少しずつやれば、ある日、勉強は楽しいものに変わる。競争のためにではなく、自分のために勉強をしてほしい。

 

※ 自治体の取り組み

大阪市習熟度別授業を導入・横浜市夏休みの日数弾力化

「ゆとり教育」見直しの機運が高まり、中山成彬文部科学相は学習指導要領の見直しなどを打ち出しているが、自治体レベルでは既に学力向上に向けた取り組みが始まっている。大阪市は今年度から、市内の全小中学校に習熟度別授業を導入する取り組みを始めた。 

小学校は学級数よりひとつ多くクラスを編成し、中学校は学級をニコースに分ける。横浜市も来年度から、習熟度別指導の全小中学校での導入に取り組む。また、夏休みなど長期休みの日数を弾力化し、校長の判断で調整できるようにする。新潟県は今年一月、小中学生の学力を把握するため、十二万人が参加する学力調査を実施した。三月をめどに市町村別に発表する。