いじめの解消を目指した地域ぐるみのいじめ対策

 

 1地域ぐるみのいじめ対策について

    いじめ問題の解決のためには、家庭、学校、地域社会が連携して地域を挙げた

   取組を行うことが重要である。このような取組を推進するため、文部省において

   は、(下表1)のような「地域を挙げたいじめ根絶運動の参考例」を掲げ、各地

   方公共団体における自主的な取組の展開を促している。全国の各地方公共団体に

   おいては、これに掲げられた例を参考にし、学校、教育委員会のみならず、PT

   A、青少年教育やスポーツなどの関係団体、教育センター、児童福祉機関、人権

   擁護機関、警察などの関係機関などにも協力を呼びかけ、地域の実情に応じて、

   創意工夫を生かした地域ぐるみのいじめ対策を展開することが望まれる。

 2地域ぐるみの取組に対する支援

 

 (1)モデル市町村の指定

        文部省では、平成8年度から新たに「いじめ対策地域連携モデル市町村」

       事業を行うこととしている。この事業は、全国の18市町を指定し、地域ぐる

       みのいじめ対策のパイロット事業を行うものである。モデル市町村では、

       「モデル市町村推進委員会」(仮称)を設置し、学校、PTA、地域の関係

       団体、機関などの協力を得て、意識啓発をはじめ、家庭教育、青少年教育、

       スポーツ関係等の各種事業などを積極的に展開し、実践的、先進的な地域ぐ

       るみの取組を行うこととなる。

 (2)

       モデル市町村に対する支援措置

        モデル市町村における種々の取組を文部省としても積極的に支援するた

       め、初等中等教育局のみならず、生涯学習局、体育局の家庭・学校・地域社

       会の連携事業、家庭教育、青少年教育、スポーツ関係等の各種事業や補助金

       について、モデル市町村がセットで優先的に活用できるようにし、効果的な

       取組ができるようにした。(下表2)

 

表1.地域を挙げたいじめ根絶運動の参考例

 各市町村においては、以下の例も参考にし、ここに示した例を適宜組み合わせるな

ど、地域の実情に応じて、創意工夫を生かした運動を積極的に展開することをお願い

したい。

 

      例1 キャンペーン展開型運動       

       〇いじめ根絶推進本部の設置

       〇いじめ根絶市民大会の開催

       〇いじめ根絶都市宣言の採択

       〇いじめ根絶強調月間の実施

       〇ポスター配布、垂れ幕、アドバルーン等による広報

       〇子ども参加による「いじめ根絶1日市議会」の開催

 

      例2 既存組織活用型運動

       〇地域のスポーツ関係団体等の協力を得たいじめ根絶対策

       〇地域の社会教育団体等の協力を得たいじめ根絶対策

 

      例3 人材活用型運動

       〇「いじめ根絶地域リーダー」人材バンクの設置

       〇あいさつ運動等の展開

 

      例4 事業連携展開型運動

       〇「いじめ根絶マスタープラン」の策定

       〇ファミリースポーツ・レクリエーション大会等の開催などスポーツ関係の事業を

        積極的に実施する取組

       〇ボランティア・体験活動の週末親子体験等の開催など体験活動に関する事業を積

        極的に実施する取組

 

      例5 意識啓発型運動

       〇地元のメディアを活用したいじめ根絶の意識啓発

       〇青少年教育相談シンポジウム等の開催

       〇家庭の意識啓発及び家庭、学校、地域の連携推進会議の開催

 

表2.いじめ対策地域連携モデル市町村の指定について

 

      モデル市町村名    セ   ッ   ト   事   業   名 

                    豊かな心を育む教育推進事業,ボランティア体験モデル推

          茨城町    進事業

        (茨城県)  〔国のウィークエンドサークル活動推進事業(茨城県指定

                    )をあわせて実施〕

          藤岡市    ボランティア体験モデル推進事業,青少年自然体験活動推

        (群馬県)  進事業,ファミリースポーツ推進事業

          大宮市    ボランティア体験モデル推進事業,スクールカウンセラー

        (埼玉県)  活用調査研究委託事業,青少年自然体験活動推進事業

          上越市    教育ネットワーク構築推進事業,スクールカウンセラー活

        (新潟県)  用調査研究委託事業,ファミリースポーツ推進事業

                    ボランティア体験モデル推進事業,スクールカウンセラー

          可児市    活用調査研究委託事業

        (岐阜県)  〔国のウィークエンドサークル活動推進事業(岐阜県指定

                    )をあわせて実施〕

 

          沼津市    スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,学校体育実

        (静岡県)  技指導協力者派遣事業,家庭教育ふれあい推進事業

                    青少年スポーツ活動推進事業

 

          西尾市    教育ネットワーク構築推進事業,ボランティア体験モデル

        (愛知県)  推進事業,スクールカウンセラー活用調査研究委託事業

                    家庭教育ふれあい推進事業

          中主町    ボランティア体験モデル推進事業,運動部活動指導者派遣

        (滋賀県)  事業,父親の家庭教育参加支援事業

 

          亀岡市    スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,学校体育実

        (京都府)  技指導協力者派遣事業,家庭教育学級,青少年地域活動

                    青少年スポーツ活動推進事業

          京都市    スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,家庭教育学

        (京都府)  級,父親の家庭教育参加支援事業,学校体育施設開放事業

 

         加古川市   スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,運動部活動

        (兵庫県)  指導者派遣事業,家庭教育学級,青少年自然体験活動推進

                    事業

 

          湯浅町    スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,家庭教育学

       (和歌山県) 級,青少年地域活動,青少年スポーツ活動推進事業

                    学校体育施設開放事業

          大野町    ボランティア体験モデル推進事業,家庭教育ふれあい推進

        (広島県)  事業,ファミリースポーツ推進事業

 

         国分寺町   スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,父親の家庭

        (香川県)  教育参加支援事業,青少年地域活動,ファミリースポーツ

                    推進事業

         八幡浜市   スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,家庭教育ふ

        (愛媛県)  れあい推進事業,青少年自然体験活動推進事業

          豊前市    教育ネットワーク構築推進事業,スクールカウンセラー活

        (福岡県)  用調査研究委託事業,学校体育施設開放事業

          大村市    スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,家庭教育学

        (長崎県)  級,ファミリースポーツ推進事業

          鹿屋市    スクールカウンセラー活用調査研究委託事業,家庭教育学

       (鹿児島県) 級,スポーツ活動推進地域の指定

 

                                               (初等中等教育局 中学校課)

 

いじめの問題の解決のために当面取るべき方策

 

いじめは人間として絶対に許されない

 

 文部省におけるいじめ対策の基本的な方針は、平成7年3月に出された「いじめ対

策緊急会議」の報告及び平成7年1215日付けの初等中等教育局長通知(「いじめの

問題への取組の徹底等について」)において明らかにされている。

 特に、「いじめ対策緊急会議」報告は、「弱い者をいじめることは人間として絶対

に許されない」という基本的な考え方の下、学校、教育委員会、家庭、国、社会のそ

れぞれにおいて取り組むべき方策について、各般にわたる提言がなされている。

 また、平成7年12月の通知では、これまでの通知の徹底に加え、児童生徒の自殺を

食い止めるためのあらゆる手だてを講じることをはじめとして、11項目の具体的な事

項を挙げていじめ問題への取組の一層の徹底を求めている。

 各学校、教育委員会等においては、これらの報告を踏まえ、いじめ問題に最大限の

取組を行うことが求められる。

 

いじめ対策緊急会議報告概要−平成7年3月13日発表−

 

1 いじめの問題への対応に当たっての基本的認識  

 (1)「弱い者をいじめることは人間として絶対に許されない」との強い認識に立

       つこと

        誰よりもいじめる側が悪いのだという認識と責任の所在の明確化

 (2)いじめられている子どもの立場に立った親身の指導を行うこと

        子どもの苦しみや辛さを親身になって受け止め、子どもの発する危険信号

       を鋭敏に捉えるよう努めること

 (3)いじめの問題は、教師の児童生徒観や指導の在り方が問われる問題であるこ

      

        児童生徒の人格のより良き発達を支援するという観点に立った指導

 (4)関係者がそれぞれの役割を果たし、一体となって真剣に取り組むことが必要

       であること

        親や教師等の関係者の一体となった取り組み

 (5)いじめは家庭教育の在り方に大きな関わりを有していること

        家庭教育の役割の重要性の再認識

 

2 学校における取組

 (1)実効性ある指導体制の確立

       〇学級担任の自覚と責任ある指導及び学校全体での一致協力した取組

       〇全教職員の参加による実践的な校内研修の積極的な実施

       〇保健主事の役割の重視と養護教諭の積極的な位置付け

       〇カウンセリング等に関する専門家や関係機関等との連携の強化

 (2)事実関係の究明と、いじめる児童生徒に対する適切な教育的指導

       〇事実関係の迅速かつ正確な把握と保護者とのきめ細かな連携による適切な

       対応

       〇いじめの非人間性等に気付かせるなどいじめを行う児童生徒に対する教育

       的指導

       〇いじめが一定の限度を超える場合には出席停止等の厳しい対応も必要

       〇その場限りではない継続的かつ徹底的な指導

       〇学校における児童生徒の「心の居場所」作り

 (3)日々の触れ合いを通じた教育相談的活動の充実

       〇教師の全人格的な接し方による児童生徒との深い信頼関係の醸成

       〇校務運営の効率化による児童生徒や保護者と接する機会の確保・充実

 (4)積極的な生徒指導の展開

       〇学校教育活動全体を通じてのお互いの個性を尊重する態度等の育成

       〇学級活動等の集団活動やボランティア活動等を通じた良好な人間関係、社

       会性の涵養

       〇生命を尊重する態度や生きる力を育む教育

 (2)家庭・地域のより良きパートナーとしての努力

       〇「開かれた学校」の観点に立った意義のある連携協力関係の構築

 

3 教育委員会における取組

 (1)いじめの問題の解決に向けた各学校の取組への支援

        指導主事や教育相談の専門家等の派遣等など学校に対するきめ細かな支援

 (2)効果的な教員研修の実施

        あらゆる機会を捉えた研修の実施及びその内容・方法の工夫等

 (3)相談体制の充実

       〇教育センター等における相談員の配置等相談体制の整備・充実(平成7年

       度地方財政措置予定)及びその周知広報

       〇学校と相談機関相互間の連携

       〇専門的な研修による相談担当者の資質向上

 (4)関係団体との連携協力による多様な教育活動の充実

        学校外における多様な体験活動や集団活動の機会の積極的な提供

 (5)家庭の教育力の活性化のための保護者等への啓発活動や支援方策の工夫

 

4 家庭における取組

 (1)家庭教育の重要性の再認識

        思いやりや正義感など基本的な生活習慣・態度等を身に付けさせる第一義

       的な責任の自覚

 (2)子どもにとって真の『心の居場所』となる家庭づくり

        何でも率直に語り合え、子どもにとって真にやすらぐことのできる家庭づ

       くり

 (3)地域活動への親子での積極的な参加

        ボランティア活動や地域における行事等への親子での積極的な参加による

       親子の絆の強化

 

5 国における取組

 (1)教育委員会や学校における指導体制を充実させるための支援

       〇教育相談に関し専門家を活用すること等についての積極的な指導・援助

       〇教諭のみならず、養護教諭も保健主事に充てることができるようにするた

       めの措置

       〇養護教諭に対する研修の充実

       〇いじめの問題に関する教師用指導手引書の作成についての検討

 (2)教員研修の効果的実施

        国レベルの教員研修の内容、対象、実施方法等の施策の一層の充実

 (3)教育相談体制の充実

       〇関係者の相談に応じるとともに、いじめの問題に関する事例や全国の相談

       窓口等の情報の提供を行う「いじめ問題対策センター(仮称)」(平成7年

       度予定)の早急な整備

       〇学校におけるカウンセリング等の機能の充実を図るため、「スクールカウ

       ンセラー(仮称)活用調査研究委託事業」(平成7年度予定)の早期かつ効

       果的な実施

 (4)家庭教育関連施策の充実

        家庭の教育力の活性化のための取組への支援

 

6 社会における取組

  〇一人一人がそれぞれの立場でその責務を自覚し、いじめの解消に向けて可能な

  取組を行うこと

  〇諸メディアの内容が不適切なものとならないような関係者の理解と協力

 

                                               (初等中等教育局 中学校課)