学ぶ楽しさを一緒に探そう
1997/3/5/水 掲載記事
「うちの子は小学校の成績が悪くてしようがない」と嘆く親をよく見かける。子どもの方も自分は「できない子」と思っている例がある。こんなとき、親はどう子どもとかかわっていったらよいのだろうか。全国学校教育相談研究会幹事で、束京の品川区立杜松小学校教諭・岡村克志氏にアドバイスしてもらった。
子どもはだれもが、よりよく学習したい、できるようになりたいと願っている。〃できない子〃というレッテルを背負わされている子どもは、その気持ちを分かり、共に歩んでくれる大人を求めている。そのことを理解せずに、成績や偏差値にのみ目を向け、ほかの子と比較ばかりしていると、子どもの個性的な持ち味を摘みとってしまうことになりかねない。この点には十分に気をつけなければならない。
知識の問題ではない
では、勉強ができるとはどのようなことなのだろうか。できるとは、単に知識や技能が優れていることではない。なにより大切なことは「自ら考え、やることを決めて、それを実行する力」と「何をどのように学んだらよいかという学び方」を身につけていることだ。この「考える力」と「学びとる力」は生きる意欲に支えられているもので、子どもの生涯にわたる学習の基盤になるものだ。このことを考えると今、子どもに必要なのは目先の解決策ではなく,学習に対する意欲を高め、この二つの力を育てることにあるといえるだろう。親の期待が過剰であったり、親が安心感を得るためだけに学力の向上を願っていたりしてはいないか。あるいは熱心さのあまり、子どもの気持ちを無視して傷つけているようなことはないか。心当たりがあるならは、もう一度、子どもを見つめ直してほしい。
子どもは親のために生きているのではない。子どもの将来を見据え、焦らずに見守り、親子が共に育ち合う関係を築いてほしいと思う。そして、子どもが安心できる心のよりどころになることが大切。なぜなら、親の愛情に包まれ情緒が安定すると、心のエネルギーが増大して、「やるぞ!」という意欲が生まれてくるからだ。
最初は短い時間から
学習の習慣を形成するためには、親子で一緒に学習計画を立てるとよい。その際に、子どもの意見を十分に取り入れる。子どもは自らの意志で「こうしよう、こうしたい」と進む方向を決定したときに、主体的に活動するようになる。計画は無理をせず、短い時間から始めると長続きする。学習内容も簡単なものから取り組む。自分で問題を解決したという成功体験を積むと、学習することの楽しさが味わえるからだ。親子で共に学習することを楽しめるようになると、親の気持ちの上での負担も軽くなることだろう。
子どもの考える力を伸ばす秘けつは、正しい答えを出すトレーニングではなく、子ども自身が誤りの原因に気づき、自分で修正するという経験を積み重ねることだ。学習の基礎は、試行錯誤しながら学ぶ過程を通して定首していく。誤りであっても、子どもの思考の過程があり、それなりの意味があるのだ。それでは、実際のかかわり方の例をいくつか紹介しよう。
まず子どもが質問してきたときには、すぐに答えず一緒に考えたり、調べたりする。それによって、子どもは学び方を身につけるし、自分で考え、調べて分かったときの成就感は次の学習意欲を呼び起こす。
「ここまでできた」
子どもが自分で解決できそうな場合は、あまり関与せず、なるべく多くのことを任せる。・自分で成し遂げた経験は、学習の進歩を実感させ、自信と学習意欲を高めることにつながる。「よくできたね」よりも、どこがよいのかを具体的に伝えることもポイント。心の励みになる言葉かけは子どもの心の栄養になる。迷っているときには「○○したいのかな」「□□と△△では、どちらがやりたいことに近いのかな」とはたらきかけるとよいだろう。解決方法は自分で決定するように促し、成功の可能性を意識させるようにかかわると「やる気」を引き出す効果がある。
誤りを気づかせるには、「どうしてそう考えたの」と声をかけ、子どもの考え方を確かめながら誤りに気づかせるようにする。うまくいかないのは能力のせいではなく、方法や努力に改善点があるかもしれないことに気づかせることも考えたいところだ。「できなかった」よりも,「ここまではできた」と,自分の学習を前向きに受け止めさせることも大切なことだ。
どれも子どもの可能性を信じ,温かく見守る親の愛情が欠かせない。