総合的学習の時間

調べない生徒 右往左往の教師

日教組の教研集会リポート

2003/2/14/金 日経新聞夕刊

 

新学習指導要領の目玉である「総合的学習の時間」に、現場の教師が思わぬ苦戦を強いられている。児童生徒が自ら調べ発見することが求められるのに、周知の事実をさも初めて分かったように生徒が装うこともある。半面、固定教材がなく、教師の興味関心次第で授業が行き詰まる面もある。日教組の教育研究全国集会のリポートから課題を探った。

 

「百科事典で調べることも考えつかないのか……」。広島の県立高校の三島亮彦教諭は化学の法則をテーマとした調べ学習でがくぜんとした。法則の発見者、発見過程などを調べた生徒の調査シートで、内容がほぼ同じものが目についた。学校が購入させた副教材の記述を、そのまま写しただけだった。

半ばあきれ、図書室で独自の資料探しを命じたが、どんな本から探せばよいのか分からない様子だった。「インターネットで調べる子も少しはいるが、何かを調べるというすべができていない」と三島教諭は指摘する。

ある離島の中学では自然観察の一環で浜辺の漂着ゴミを調べたが、担当教諭は「海でペットボトルを拾った。いろいろな国のものがあることが分かった」との生徒のリポートに苦笑した。この教師は「このようなことは学習で初めて知ったわけではない。生徒はこれまでの経験からこのように書けば教師が安心すると考えている」と予定調和の危険性に警鐘を鳴らす。

「生きる力」を引き出すための総合的学習は子どもが自ら何かに気付き、調べ、理解を深めるプロセスを重視する。しかし、「中学一年程度の問題意識で自由に課題を選ばせて、現代社会を生き抜く力を与えられるか」と疑問に感じ、一定の枠からテーマを選ばせたという報告もあった。

半面、教師側の問題点を挙げるリポートも少なくない。「教職員が子どもとともに学びたい課題を持てず、文部科学省や教科書会社の示したモデルに頼ってしまう」「初めての取り組みで何をすればいいのか分からず、生徒には退屈な、教師には憂うつな時間になってしまった」との本音も漏れた。教科書のない学習だけに、どんなテーマでどんな教材を使うのか、ある程度は学校としての計画を立てても、教員一人ひとりの感性や力量に委ねられる部分もある。

人事異動でそれまで培ったノウハウが崩れ去るという報告も複数あった。

「都会と同じ成果を求めるのは田舎の学校には酷だ」と訴えたのは鹿児島県垂水市の中学校の日野洋隆教諭。「交通の便がよい都会と違い、一時間にバスが一本通るか通らないか。福祉・ボランティアについて福祉施設で体験学習をさせたくても学校からは車で三十分かかる」と嘆く。

一方、福島県只見町の中学校の斎藤篤子教諭は、予算など条件整備面の課題を掲げた。当初想定していなかった学外活動を子どもが提案しても予算上即応できない面もあったという。

教研集会の討議では「子どもたちはこの授業は自分たちで作るものだと思っている」と前向きな報告もあつた。もともとこうした学習は組合側が提案した経緯もあり、「こんな素晴らしい取り組みができると示すべきだ」との意見もあったが、「最後に必ずリポートを課すなど型にはめるのでは続けても意味はない」との声も出た。本格実施は今年度からとはいえ、新要領告示からは四年、先行実施からでも二年が経過した。「学力低下」批判の中では、学校内外で「総合的学習より教科優先」の指摘も少なくない。総合的学習は迷走は許されなくなりつつある。

 

中学校教師は74%が否定的

総合的学習への受け止め方は学校段階で異なる。ベネッセコーポレーションの昨秋の調査では、新要領が定める総合的学習の標準時数に対し「削減すべきだ」ないし「なくしてもよい」と答えた割合が、管理職、教師とも小学校より中学校の方が多かった。中学校教師では約七四%が否定的な見方をしている。

一方、学習内容(複数回答)については、特定のテーマを与えたり選ばせるテーマ学習が小中学校とも八割を超えたが、教科内容をより深める学習も小学校で半数近くあった。小学校では英語学習や英会話も六割近くの取り組みが見られた。

総合的学習導入の結果については、小中学校とも九割以上が「教師の負担が増えた」としている半面、「生徒は学ぶ力や学び方を身につけた」は小学校で約六七%、中学校では約半数にとどまる。苦労の割に成果が出ないと感じている教師の多さをうかがわせている。