若者の国語力の低下

1999/1/29/

 

学習参考書の世界でちょっとした異変が起きている。少子化の影響などで学習参考書需要が全体に落ちている中、従来はあまり売れないとされていた参考書が売れ行きを伸ばし、国語参考書の書棚スペースを拡充した書店もあるという。予備校などは「大学入試センター試験に参加する私立大学が増え、マークシート対応の国語問題集需要が伸びた」と分析するが、参考書の著者からは若者の国語力の低下の影響を指摘する声も闇かれる。

従来、国語の勉強は英語や数学などの後回しになりがちで、参考書もあまり売れないとされていた。東京・千代田区の三省堂書店神田本店でも一昔前はそうだった。ところが、学習参考書担当だった関根俊郎さんが四年ほど前に、国語参考書の売れ行きが伸びて.いるのに気付いた。

 

難しい字大きく表記

特に目立っているのが大学受験用の参考書や問題集。最近は種類も増え、国語参考書の棚は現在七列六段を数えるまでになった。十年前に比べるとスペースにして約四割増の数字だという。最近の大学入試では小論文が重視されていることもあり、小論文専用の参考書の棚も一列ある。中には、難しい漢字の細部も分かるように字を大きくした参考書や、「原則縦書き」という国語参考書の常識を打ち破り、若者に読みやすい横書きを採用した古文参考書なども登場。最近は大学受験に限らず、中学受験向けの問題集の売れ行きも好調だという。

こうした国語参考書人気について、関根さんは「最近の子供は本を読まなくなり、自然な国語力が低下しているのではないか」と推測する。

参考書の著者からも、生徒の国語力の低下の深刻さを指摘する声が聞かれる。同書店の過去三カ月間の国語参考書売り上げ上位三十位のうち、約半数の参考書の執筆を手がけた塾講師、出口江(ひろし)さん(43)は「文章を何となく自分のイメージで読んでしまう傾向がある。選択肢から選ぶ問題なら五、六割は取れるが、記述させると極端に弱い」と指摘する。

 

抽象概念に弱い若者

出口さんが見る限り、「入試も世の中の状況もロジック重視に向かっているのに、若者の感覚はフィーリング重視。だから模試の現代文の点数も下がっている。特に抽象概念についての評論文はまったくダメ」だという。

出口さんは現代国語問題の読み方について、「いかに文章を論理的に読むか」を授業でも参考書の中でも繰り返し強調。「評論文は具体例、証拠、引用などイコールでつながる内容の繰り返し」などと構成について解説してみせたり、「評論文のテーマは現代日本の行き詰まった現状について批判的に書いであるというのが前提」などと基本的な考え方を示している。

駿台予備学校系列の駿台文庫でも大学入試センター試験向けの過去の問題集などがよく売れ、今月には品切れ状態になった。「前年比で約七%売り上げが伸びた。品切れにならなければ一五%まで伸びたのでは」(同文庫営業部)と話す。

 

センター試験参加増

同校広報部では、センター試験に参加する私大が増え、入試事情が変化してきたことが大きいと指摘。「私大独白の問題では筆記式もあるが、センター試験はマークシート方式。どう答えればいいかを確かめるため過去の問題集などが売れているようだ」という。私大の中には理系学部でも国語を必須(ひっす)とするところもあり、にわかに国語を勉強する必要に迫られた受験生も多いようだ。

もちろん、少子化傾向の中、参考書全体の売り上げが振るわず、売り場を縮小する書店もあるなど、「国語参考書人気」がすべてに広がっているわけではない。しかし、最近の若者に「外国語と違って、日本語だから分かって当然」という考えは通じなくなりつつあるうえ、入試改革などもさらに進むとみられ、国語参考書の重要性が増しているのは間違いなさそうだ。