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教育白書第二部第2章

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第U部 文教施策の動向と展開
第2章 生涯学習社会の構築を目指して
第1節 生涯学習社会とは何か
第2節 普及・啓発と情報提供
第3節 学習機会の拡充
第4節 学習成果の評価と活用
第5節 生涯学習とボランティア活動
第6節 地方公共団体の推進体制の整備

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第2章 生涯学習社会の構築を目指して


第1節 生涯学習社会とは何か

1 生涯学習の必要性

 21世紀に向かい,豊かで活力ある社会を築いていくためには,「人々が,生涯のいつでも,自由に学習機会を選択して学ぶことができ,その成果が適切に評価される」ような生涯学習社会の構築を目指していくことが重要である。

 生涯学習社会の構築が必要となってきた社会的背景としては,次のような点が指摘されている。

1.  学歴社会の弊害

いわゆる学歴社会の弊害を是正するためには,形式的な学歴によらずに,生涯の各時期の学習の成果が適切に評価される社会を目指すことが求められていること。
2.  社会の成熟化に伴う学習需要の拡大

所得水準の向上,自由時間の増大,高齢化等,社会の成熟化に伴い,心の豊かさや生きがいのための学習需要が増大していること。
3.  社会・経済の変化に対応するための学習の必要性

科学技術の高度化,情報化・国際化,産業構造の変化等,社会・経済の変化に 伴い,人々が絶えず新しい知識・技術を習得することが必要になっていること。

 学習は,学校教育や社会教育の中で,意図的・組織的な学習活動として行われるだけではなく,スポーツ活動,文化活動,趣味,レクリエーション活動,ボランティア活動などの中でも行われるものである。また,これらの活動の場も,小・中・高等学校,大学などの高等教育機関,公民館,図書館,博物館,文化施設,スポーツ施設,カルチャーセンター,企業・事業所など多岐にわたっている。生涯学習は,人々の生涯を通じてこれらの場で展開される多様な学習活動を包含するマスターコンセプトということができる。

2 学習機会の提供者

 生涯学習の振興を図るためには,人々のニーズに応じた多様な学習機会の一層の拡大・充実を図っていくことが重要である。このため,文部省及び都道府県・市町村の教育委員会は,学校教育,社会教育,文化,スポーツなどの各分野において各種施策を進め,多様な学習機会の提供に努めている。

 また,他の行政機関,民間の教育事業者も様々な学習機会を提供している。都道府県の知事部局は,高齢者福祉,農村振興,環境保護,地場産業振興など,また,公安委員会は交通安全など,それぞれの行政目的に応じた様々な学習機会を提供している。さらに,財団法人,社団法人や株式会社等の民間教育事業者も,都市部を中心に各種の事業を盛んに提供している。例えば,民間営利の社会教育事業の一つであるカルチャーセンターは,企業としての特性を生かし,学習需要に柔軟に対応した学習機会を提供している。

 さらに,企業も,従業員等に対して様々な形で教育・訓練を行っているほか,従業員が大学等に再入学することを奨励したり,有給の教育訓練休暇を認めたりしているところも増加している。

3 文部省の役割

 文部省は,多様な学習活動を総合的に推進し,生涯学習社会を構築していくため,生涯学習局において,学校教育,社会教育,文化,スポーツの振興を総合し,生涯学習振興のための施策の全省的な推進・調整を図っている(図U−2−1 生涯学習社会を目指す取組)。また,生涯学習に関係する行政機関との連携・協力に努めている。

 平成2年6月に制定された「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」(いわゆる生涯学習振興法)は,生涯学習の振興に関する初めての法律である。同法に基づき,文部省に生涯学習審議会を置くこととされ,2年8月に発足した。

 同審議会は,平成4年7月に「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」を文部大臣に答申し,生涯学習振興の基本的考え方と当面対応すべき課題についての方向を示した。

 平成7年4月には第3期の審議が開始され,@地域における諸施設の生涯学習機能の充実方策,A学習成果の活用方策の2点について調査審議が行われている。

第2節 普及・啓発と情報提供

1 生涯学習についての普及・啓発

 生涯学習の振興を図るためには,生涯を通じて学習することの意義について国民の理解を深め,自ら学ぶ意欲を喚起するための普及・啓発が重要である。

 文部省では,普及・啓発のための事業の一つとして,地方公共団体等との共催により,全国生涯学習フェスティバルを開催している。これは,文部省や地方公共団体が主催する生涯学習見本市などの事業や,関連団体・企業が主催するシンポジウム,講演会,フォーラム,展示等の各種イベントなどによって構成されている。このフェスティバルは,学習に役立つ情報を広く提供するとともに,学習成果の発表の場を提供するなど,生涯学習の普及・啓発を進める上で重要な役割を果たしている。平成7年度には,9月28日から10月2日までの5日間,北海道(札幌市)で第7回全国生涯学習フェスティバルが開催された。

 また,このようなフェスティバルは,多くの地方公共団体においても独自に企画・実施されている。

2 学習情報提供・学習相談

 人々が学習活動に参加できない原因の一つとして,学習機会に関する情報の不足がしばしば指摘されている。このため,コンピュータをはじめとする情報機器の活用も含め,地域住民に対して各種の学習情報を広く提供したり,学習の内容・方法等についての相談に応じる体制を整備することが重要な課題となっている。文部省では,都道府県が実施する生涯学習情報提供システム整備事業に対して補助を行うなど,学習情報の提供や学習相談のための体制の充実を図っている。

 生涯学習情報提供システム整備事業は,都道府県と市町村が連携協力し,コンピュ [タ等を利用して学習情報のデータベース化やネットワーク化を図り,社会教育施設等で学習情報の提供や学習相談を実施するものである。この事業により,平成6年度までに,31道府県で生涯学習情報提供システムが整備されている(図U−2−2 生涯学習情報提供システム整備事業)。

 また,文部省では,生涯学習に関する情報を全国的に提供していくための体制の整備に向けた施策を推進している。青少年教育等については,国立オリンピック記念青少年総合センターを,婦人教育・家庭教育等については,国立婦人教育会館を,それぞれ拠点とする情報提供体制の整備を進めている。さらに,全国的に利用されるデータベースの構築や,文部省所管の生涯学習関連施設の各種データベースを統合するシステムに関する調査研究等を実施している。


第3節 学習機会の拡充

1 学校教育における生涯学習機能の拡充

 生涯学習の振興における学校教育の意義・役割としては,初等中等教育から高等教育までの各段階を通じて,次の3点が重要である。

 第一は,学校教育そのものが生涯学習における重要な学習活動の場であることである。生涯学習とは学校外の学習活動を意味する,という誤解も一部にあるが,学校教育は,生涯学習の中で極めて重要な部分をなすものである。

 第二は,生涯にわたる学習活動の基盤を培うことである。人々が生涯にわたって学習活動を続けていくための意欲や態度を育成することが重要である。

 このため,学校教育においては,新しい知識を学んだり,発見したりすることの楽しさを体験させるような教育を進めることが必要であり,現行の学習指導要領においては,「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力」,すなわち自己教育力の育成が基本方針の一つとされている。各学校においては,基礎・基本を重視し,個性を生かす教育を行うとともに,自己教育力をはぐくむ指導の充実が図られている。

 第三は,職業人・主婦・高齢者などの幅広い人々を対象として,学校教育へのアクセスの拡大や社会教育的事業の実施を進めることにより,より広く学習機会を提供していくことである。

 これらのことから,人々に多様な学習機会を提供していくため,文部省は,学校教育の分野において,@生涯学習時代に向けた大学改革,A新しいタイプの学校の整備,B地域に根ざした小・中・高等学校,という視点に立って施策を展開し,生涯学習機能の拡充を図っている。その内容については,本節の2から4において詳述する。

2 生涯学習時代に向けた大学改革−高等教育へのアクセスの拡大−

 現在進められている大学改革においては,社会に開かれた高等教育機関を目指して,社会人の学習機会の一層の拡大・充実に努めることなどを内容とする生涯学習への対応が重要な位置を占めている。

 また,近年の技術革新の著しい進展や産業構造の変化などに対応して,学校での社会人再教育を行うリカレント教育【用語解説】へのニーズが高まってきているが,特に職業人を対象として高等教育機関が実施する職業指向の教育(リカレント教育の中でも,このようなものはリフレッシュ教育と呼ばれる)の拡充について,大学等に寄せられる期待は大きい。

 このような背景の下に,以下のような施策が推進されている。

 (1) 社会人特別選抜

 多くの大学では,社会人を対象とする特別選抜制度が実施されている。平成6年度には,207 大学(うち国立大学は28大学)において実施されており,これによる入学者は4,199 人(うち国立大学は 534人)となっている。

 (2) 編入学

 短期大学や高等専門学校を卒業した人で,4年制大学への編入学を希望する人が増加しているのを受け,平成3年の大学設置基準の改正により,編入学のための定員枠を設定しやすいものとした。7年度には,短期大学・高等専門学校からの編入学者数は1万2,348人(うち国立大学は2,427人)となっている。

 (3) 夜間部・昼夜開講制

 学習者の時間的制約に対応するため,多くの大学では夜間部の設置や昼夜開講制の実施が行われている。

 平成6年度には,夜間の学部・学科は, 152の大学・短期大学(うち国立大学は3 7)に置かれており,在学者数は14万 4,975人(うち国立大学は1万 7,891人)となっている。また,職業に就いているなどのため昼間の学習が困難な社会人の高度な学習ニーズに対応して,専ら夜間に教育を行う夜間大学院も,6年度現在,10大学(うち国立大学は2)に設置されている。

 また,学生の都合に合わせて,昼間・夜間の両方の授業を受けることができる昼夜開講制を実施している大学は,平成6年度現在,27大学(うち国立は22)であり,大学院についても,92大学(うち国立は60)において実施されている。

 (4) 科目等履修生

 社会人等に対し,パートタイムの学習機会を拡充し,その学習に適切な評価を与えるため,平成3年の大学設置基準の改正により科目等履修生制度が設けられた。これにより,大学における授業科目の一部を履修して単位を修得することができるようになった。

 平成5年度において,科目等履修生を受け入れている大学は, 253大学(うち国立は53),科目等履修生の数は 5,431人(うち国立は 1,510人)となっている。

 (5) 聴講生・研究生

 聴講生・研究生は,正規の学生や科目等履修生とは異なり,法令上の根拠はなく,各大学の規定によって受け入れられてきたものである。平成6年度現在,聴講生・研究生の総数は,約3万人である。

 (6) 通信教育

 平成6年度に通信教育課程を設置している大学・短期大学の数は25(放送大学を含む。)であり,在学者数は合計約24万人(うち放送大学が約5万人)である。また,学校教育としての通信教育課程以外に,文部省認定社会通信教育を実施している大学が4校ある。

 (7) リカレント教育推進事業

 文部省では,産業構造・就業構造の変化や技術革新に対応する組織的な学習機会を提供するため,リカレント教育推進事業を実施している。これは,高等教育機関,地方公共団体,産業界等の関係者で構成する,地域リカレント教育推進協議会が実施主体となり,@社会人・職業人の学習ニーズなど情報の収集・提供,A学習プログラムの研究開発,B学習コースの開設,などの事業を総合的に実施するものである。平成7年度においては,北海道,山形,千葉,京都の4地域で実施されている。

 (8) 大学の公開講座

 大学公開講座は,大学における教育・研究の成果を直接社会に開放し,地域住民等に高度な学習機会を提供するものである。平成5年度には,国公私立を合わせて 4,590講座が開設され,受講者も約54万人に上っている。講座の内容は,職業人を対象とした専門的・技術的なもの,いわゆる現代的課題に関するもの,語学,スポーツなど,極めて多岐にわたっている。

 (9) 大学入学資格検定制度

 大学入学資格検定制度は,高等学校教育を受けられなかった人などに対して,能力に応じて広く大学教育の機会を提供するための制度であり,この資格検定を受け一定の科目に合格した場合に,大学入学資格が与えられる。平成6年度は,受検者数約1万7,700人,合格者数約5,200人となっている。

3 新しいタイプの学校の整備

 (1) 放送大学

 放送大学は,テレビ・ラジオの放送を利用して,大学教育の機会を広く国民に提供することを目的とし,昭和60年4月から,関東地域の一部を対象に放送の実施と学生の受入れを開始した。平成7年度第1学期には,約6万人の学生が学んでおり,7年3月までに 6,679人の卒業生を送り出している。

 放送大学は,入学試験を実施しておらず,また,多様な学習ニーズに対応できるよう,卒業を目指す全科履修生のほか,希望する科目のみを履修する選科履修生(1年間在学),科目履修生(1学期間在学),特定の事項を研究する研究生などの種別を設けている。

 現在の放送対象地域は関東地域の一部に限定されているが,生涯学習の中核的機関として,国民の高度化・多様化する全国的な生涯学習ニーズに対応し,教育の機会均等を確保するため,放送衛星3号後継機を利用した,放送大学の全国化(対象地域の全国への拡大)の準備を推進することとしている。このため,各都道府県への地域学習センター【用語解説】の整備を行っている。

 (2) 単位制高等学校

 単位制高等学校は,誰でもいつでも高等学校教育を受けられるよう,単位制のみによる履修形態とした高等学校であり,多様な学習歴や生活環境を持つ学習者に対して,広く高等学校教育の機会を提供するものである。

 単位制高等学校は,学年による教育課程の区分を設けないこととするとともに,入学・卒業時期に関する特例や多様な科目の開設と複数時間帯の授業実施などの特色を持っている。平成7年度現在,42都道府県に75校の国公立単位制高等学校が,7都府県に12校の私立単位制高等学校が設置されている。

 (3) 専修学校

 専修学校は,社会の要請に即応した実践的な職業教育,専門的な技術教育等を行う教育機関であり,入学資格の違いにより,専門課程(高等学校卒業程度対象),高等課程(中学校卒業程度対象)及び一般課程(限定なし)の三つの種類に分かれる。平成7年5月現在,学校数3,476校,生徒数81万3,342人に達している。

 文部省では,特色ある専修学校教育の振興を図るため,種々の施策を行ってきているが,平成6年3月の「専修学校教育の充実・振興に関する調査研究協力者会議」の報告を受けて,同年6月,専修学校設置基準を改正した。これにより,専修学校が多様な学習ニーズにより適切に対応できるようにするとともに,専修学校への社会人・職業人の受入れの促進に資することとしている。

 さらに,文部省においては,平成7年度から,専修学校への社会人の受入れの一層の促進を図るとともに,企業や職業人のニーズに適切にこたえるために,専修学校における職業人等の再教育に関する調査研究事業を開始した。

4 地域に根ざした小・中・高等学校

 (1) 高等学校開放講座等

 教育委員会等が,高等学校の教育機能を活用して開設する高等学校開放講座も,各地域における学習ニーズに対応するため,数多く実施されるようになっている。平成6年度には,多様な分野について,全国で 878講座が開設され,受講者も約3万人に達している。

 また,専修学校においても,地域住民を対象とする開放講座を実施している。

 (2) 学校施設の開放

 学校施設の地域への開放は,従来から積極的に行われている。平成5年度に何らかの形で施設の開放を行った公立学校は,小学校93.5%,中学校88.6%,高等学校63. 4%に及んでいる。開放されている施設は体育施設が多いが,特別教室,図書室,調理室などの開放も,今後増加していくことが期待される。

 (3) 地域住民の利用を考慮した学校施設整備

 地域住民が学校を学習活動の拠点としていくためには,施設の整備に関しても十分な配慮が必要である。このため文部省では,「学校施設整備指針」において,地域住民の学習活動への利用にも配慮した施設整備の在り方を示すとともに,ミーティング室や更衣室等を備えたクラブハウスを校舎や屋内運動場に整備するなど,学校開放を推進するための施設整備に対して補助を行っている。

 (4) 余裕教室の転用

 児童生徒の減少により近年余裕教室が生じてきているが,このような余裕教室を社会教育施設やスポーツ・文化施設に転用し,地域住民の学習活動のために活用していくことは,生涯学習振興の観点から大きな意義を持つものである。このため,文部省では,平成5年4月に「余裕教室活用指針」を策定し,余裕教室の転用の意義と余裕教室の具体的活用例や管理運営上の留意事項等を示し,余裕教室の積極的活用が図られるよう地方公共団体に対し指導してきている。

 (5) 地域の教育力の活用

 地域の職業人など,多様で実際的な経験を有する人々が小・中・高等学校で教育を行う方法として,特別免許状制度やいわゆる特別非常勤講師制度が設けられている。後者は,教員の免許状は持たないが各種の分野において優れた知識や技能を有する社会人を都道府県教育委員会の許可のもとに非常勤講師として活用できる制度である。平成6年度には,この制度により,高等学校を中心として延べ2,302人が教壇に立っている。

 これらの制度のほかに,教科や特別活動等の中で,学校の計画の下に,地域の人々の協力を得ながら指導が行われている例も多い。

5 社会教育・スポーツ・文化活動の振興

 生涯学習の振興においては,学校教育とともに社会教育・スポーツ・文化活動の振興を図ることは極めて重要である。

 社会教育については,多様で弾力的な学習の形態という特色を生かすとともに,人々の自主的な学習意欲を踏まえながら,高齢化問題・環境問題等の現代的課題【用語解説】への積極的な対応を図るとともに,人々の学習活動の拠点となる社会教育施設の整備充実など,振興のための種々の施策を実施している(第U部第6章参照)。

 スポーツの振興については,スポーツ施設の整備,生涯スポーツの充実などの施策を推進している(第U部第8章参照)。

 文化活動の振興は,我が国の文化の振興の基礎をなすものであると同時に,国民の学習の機会や学習成果の発表の機会を拡充する意義を持っている。現在,地域における芸術文化の振興や文化財の保存と活用に係る施策をはじめとして,多様な施策が実施されているが(第U部第9章参照),これらは生涯学習の振興にも極めて深い関わりを有している。

第4節 学習成果の評価と活用

1 学習成果の評価システムの形成

 生涯学習社会を築いていくためには,学習活動を推進するだけでなく,人間に対する評価が形式的な学歴に偏っている状況を改め,様々な学習活動の成果が適切に評価されるようにしていく必要がある。文部省では,学習成果の適切な評価を促進するため,学校外の学習成果の評価について,平成5年度から調査研究を行っている。また,以下のような学習成果の評価システムの形成に関する施策を実施している。

 (1) 文部省認定技能審査

 青少年・成人が習得した知識・技能について,民間団体が,その水準を審査・証明する事業が多数実施されているが,それらの事業のうち教育上奨励すべきものを文部大臣が認定する制度が文部省認定技能審査である。この制度は,学習の成果を直接的に評価する仕組みの一つとして重要な意義を持っている。

 現在認定されている技能審査は,実用英語検定など23種目であり,平成6年度の志願者数合計は 484万 6,338人,合格者数合計は 242万 9,065人に及んでいる(図U−2−3 文部省認定技能審査志願者・合格者の推移)。

 (2) 学校における単位認定

 (ア) 大学等における単位認定

  大学については,平成3年の大学設置基準の改正により,大学外での学習の成果のうち一定のものについて,大学の単位として認定することができることとされている。これにより,専修学校で学んだ場合や文部省認定技能審査に合格した場合などにおいて単位認定が可能となった。一部の大学では,実用英語検定の1級に合格した場合の単位認定が実施されている。同様の制度改正は,短期大学・高等専門学校についても行われ,単位認定が実施されている。

 (イ) 高等学校における評価

  高等学校については,高等学校教育の改革の推進に関する会議の報告(平成4年6月)を受け,5年3月に学校教育法施行規則を改正し,高等専修学校における学修や,文部省認定技能審査などの技能審査の成果を単位として認定できることとした。

 (ウ) 科目等履修生制度

  科目等履修生制度によれば,大学の公開講座のうち高度なものについて,実施大学が「公開講座であると同時に正規の授業科目でもある」と位置付け,公開講座の受講者の中で単位の認定を希望するものを科目等履修生として受け入れることができる。従来,全ての公開講座は正規の授業科目ではないと位置付けられていたが,この制度により公開講座を受講するという学習の成果についても,一定のものについては,正規の大学の単位として認定することが可能となっている。学習成果の適切な評価の促進という観点から,このような取組を行う大学が増加することが期待されている。

 (3) 学位の授与と専門士の称号

 (ア) 学位授与機構

  平成3年7月の学位授与機構の創設により,生涯学習体系への移行等に対応するため,高等教育段階の様々な学習成果を評価し,大学・大学院の正規の課程を修了していないが大学・大学院の修了者と同等の水準にあると認められる者に対して,学位を授与することが可能となった。

  平成6年度において,同機構から学位を授与された者の数は,@短期大学,高等専門学校卒業者等が大学等において更に一定の学習を行った場合に当たるものが 292人,A同機構の認定する教育施設の課程の修了者に対するものが 886人となっている。

 (イ) 専門士の称号の付与

  専修学校の専門課程における学習の成果を適切に評価することなどを目的として,平成6年6月,「専修学校の専門課程を修了した者の称号に関する規程」が制定された。これらにより,修業年限2年以上などの一定の要件を満たすと文部大臣が認めた専門課程の修了者に対し,専門士の称号を付与できることとなった。

  この制度は,平成7年1月から実施されたが,現在,専門士の称号を付与することができる専門課程は 2,085校に設置され,その在学者数は約68万人である。また,6年度にこの称号を付与された者は約23万人である。

2 地方公共団体における学習成果の評価と活用

 以上のような評価方法以外に,社会教育施設等において開設されている講座・学級の受講者に対して,出席状況などに基づいて独自の修了証を与えたり,一定の称号的なものを与えたりして学習成果を評価している場合も多い。

 例えば,富山県民生涯学習カレッジにおいては,独自の単位制度を実施している。同カレッジが実施主体となる講座の場合,専門コースの講座については講義の7割に出席することにより,テレビ・ラジオ等を視聴する放送コースの講座については,2回のスクーリング(一定期間公民館等に集めて行う面接授業)に参加することと1回のレポートを提出することにより,それぞれ講座の修了が認定される。そして,講座の修了が認定されると,同カレッジにより講座の時間数分の単位が認定される仕組みとなっている。

 このようにして修得した単位数が50単位を超えた者には認定証が与えられ,さらに, 1,000単位に達すると県民カレッジアドバイザーの称号が与えられるなど,単位数により3種類の称号が設けられている。このような取組は,主として学習の奨励や学習の継続への動機付けを目的とするものであるが,更に発展して,地域における学習活動の指導者等としての活用を図っている例もある。富山県民カレッジの場合,称号を与えられた者を県の人材バンクであるカレッジリーダーバンクに登録することにより,指導者として活用される道を設けている。このような方法も,学習成果の活用につながる方法として注目されている。

第5節 生涯学習とボランティア活動

1 生涯学習とボランティア活動の関連

 生涯学習とボランティア活動の関連は,次の三つの視点からとらえることができる。

1.  ボランティア活動そのものが自己開発,自己啓発につながる学習の場である という視点
2.  ボランティア活動を行うために必要な知識・技術を習得するための学習活動があり,学習成果を生かし,深める実践としてボランティア活動があるという視点
3.  人々の学習活動を支援するボランティア活動によって,生涯学習の振興が一層図られるという視点

 平成4年の生涯学習審議会答申では,ボランティア活動は,豊かで活力ある社会を築き,生涯学習社会の形成を進める上で重要な役割を持つものであると述べている。

 また,その推進を図っていくための課題として,@ボランティア活動をめぐる社会的文化的な風土づくり,Aボランティア層の拡大と活動の場の開発,B情報の提供と相談体制の整備充実,連携・協力の推進,C事故等への対応と過剰な負担の軽減のための支援,D企業における課題,E評価に関する課題,などを示している。

2 ボランティア活動の支援・推進方策

 先の阪神・淡路大震災を契機として,国民のボランティア活動をめぐる機運が大きな高まりをみせている。このような中,文部省では生涯学習振興の観点からボランティア活動の支援・推進を図るため,青少年,女性,高齢者,勤労者等あらゆる層の人々を対象に,各種の施策を実施している。

 (1) 学校におけるボランティア教育の推進

 学校教育では,小・中・高等学校を通じ,主として特別活動のクラブ活動や学校行事の勤労生産・奉仕的行事の中で,地域の実情に応じたボランティア活動が行われており,その内容は,地域の清掃,高齢者福祉施設での奉仕など多岐にわたっている。また,現行の学習指導要領では,道徳,社会科,家庭科でもボランティア活動が取り上げられている。このほか文部省ではボランティア教育の推進のため,児童生徒に奉仕体験活動など様々な体験活動・学習機会を与える「いきいき体験活動モデル推進事業」の実施,ボランティア教育の在り方等に関する研究協議会の開催,指導実践例等を掲載した指導資料の作成など各種の施策を講じている。

 (2) 生涯学習ボランティア活動等の支援・推進

 文部省では,各種のボランティア活動を促進するため「生涯学習ボランティア活動総合推進事業」を実施する都道府県に助成措置を講じている。この事業では各都道府県の教育委員会等を拠点にして,@県内のボランティア事業に関する連絡・調整,A u活動の場」の開発,B情報提供・相談事業,Cボランティア養成カリキュラム等の開発,Dボランティアの養成・研修事業,E生涯学習ボランティアセンターの開設などを実施し,学習活動の成果や能力を地域社会で生かすことのできる環境を整備している。

 このほか,平成7年度からは,新たに全国生涯学習ボランティア活動推進会議を開催するほか,海外ボランティア活動の現状を調査し,ボランティア活動の一層の支援・推進を図ることとしている。また,国立青年の家ではボランティア活動に積極的に参加できる機会や場の整備等を図り,ボランティア活動に対する関心を高めるため,指導者の養成や研究協議会を開催する青少年ボランティア育成事業を実施することとしている。さらに,青少年等の理工系分野に対する興味・関心を喚起するため,大学,高等専門学校の教員等をサイエンス・ボランティアとして登録する名簿を作成・提供していくこととしている。

 (3) ボランティア活動と評価

 平成4年の生涯学習審議会答申は,学校外のボランティア活動の経験や成果を学校の教育指導に生かすこと,ボランティア活動の経験やその成果を,資格要件として評価したり,入学試験や官公庁・企業等の採用時における評価の観点の一つとするなどを提言している。

 文部省では,答申を受けて次のような取組を推進している。

1.  大学の入学者選抜については,高等学校から大学に提出される調査書に,ボランティア活動などの諸活動を記入することとし,その適切な評価について配慮を求めている。
2.  高等学校の入学者選抜に関して,推薦入学や調査書において,ボランティア活動等が適切に評価されるよう,関係者に対して通知を行った。
3.  阪神・淡路大震災に多くの学生がボランティアとして活躍したことから,全 国の大学,短期大学,高等専門学校に対し,学生が被災地域におけるボランティア活動に安心して参加できるように,修学上の配慮などボランティアに参加しやすい条件作り等について協力を要請した。


第6節 地方公共団体の推進体制の整備

1 行政組織等の整備

 以上に述べてきた各般の施策を推進にするに当たっては,国に求められている責務や役割を十分に果たすことが欠かせないことはもとよりであるが,各地域における住民の多様な学習ニーズを直接的に把握している地方公共団体の果たす役割には極めて大きなものがある。

 また,生涯学習振興法は,都道府県教育委員会が実施すべき事業など,当面実現が可能な,また速やかに実施すべき諸施策を規定していることから,都道府県の段階を中心として,推進体制の整備や種々の事業が進められている。

 まず,行政組織の整備については,全都道府県で生涯学習担当部局が設置されている。さらに,生涯学習推進会議などの名称で,行政関係者,教育関係者,企業の代表者等で構成する連絡調整のための組織も全都道府県で整備されている。市町村においても,生涯学習の推進体制の整備が着実に進展しており,平成6年10月現在, 568市町村で担当部局が設置されているほか, 1,715市町村で生涯学習推進会議等が整備されている。

 また,生涯学習振興法に基づき,各都道府県においても,生涯学習審議会の設置が進められており,平成6年10月現在,30の都道府県で生涯学習審議会が設置されている。

2 都道府県の生涯学習振興計画

 都道府県においては,生涯学習推進会議や生涯学習審議会における審議等を受けて,生涯学習の振興のための基本計画や基本構想が数多く策定されており,その数は,平成6年10月現在,40都道府県に及んでいる。

 また,市町村において,基本計画や基本構想を策定済みであるものも 903市町村に上っている。さらに,「生涯学習のまち」などの宣言を行って生涯学習の振興に努めている市町村も多く,その数は,平成6年10月現在,61市町村となっている。文部省では,生涯学習モデル市町村事業を実施してこのような取組を支援している。

3 生涯学習推進センター

 各都道府県においては,各地域の生涯学習振興の拠点施設として,学習情報の提供や学習相談,学習需要の把握,学習プログラムの開発などを行う「生涯学習推進センター」の整備が進められており,その数は平成6年10月現在,24に及んでいる。

 市町村においても,大型公民館の整備などにより,生涯学習の中核となるセンター等の整備が急速に進展している。


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