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チャイルドライン


1999/2/12/金


「学校でいじめられる」「両親も助けてくれない」。そんなやり場のない子供の悩みを二十四時間体制でじっくり聞く「チャイルドライン」の定着を目指す動きが進んでいる。昨春、二週間の試行事業を実施した「せたがやチャイルドライン」(東京・世田谷)が今月末から二度目の試行に乗り出すほか、同様の試みを全国各地で展開していくための支援組織もこのほど発足した。今、なぜ電話相談なのか、俳優で世田谷ボランティア協会会長の牟田悌三さん(70)らに聞いた。

1069件の電話が殺到
チャイルドラインの本家は英国で、民間組織がボランティア活動として、二十四時間フリーダイヤルで子供の相談を受け付けている。対面方式ではなく電話を使うことで匿名性を保ち、子供が悩みを話しやすいようにしている。
日本版チャイルドラインも、まず子供の話の聞き役に徹することを大原則としており、電話相談員も「受け手」と呼ばれる。「行政の教育相談などはどうしても同問題を解決しなければ』という前提があるため、指示や助言をしてしまう。それでは子供はそっぽを向く」と牟田さんは指摘する。「たとえ電話であっても、愛話器の向こうに学校とか親の顔が見えてしまうと子供は警戒する。とにかく子供から信頼されることが第一」と言う。
昨年試行したせたがやチャイルドラインには千六十九件の電話が殺到した。相談内容は、友人関係やいじめなど学校関係が六八%、家族関係が一五%、自分自身のことについてが一四%など。中には「学校で上履きに画びょうを入れられる。仲良しの友人に相談しても『私もいじめられるから学校では話さないで』と言われた。担任に話しても信じてもらえない」(小学校高学年女子)といった切実な相談もあった。

相談相手がいない
一方、別の意味で牟田さんが驚いたのは無言電話の多さだったという。いたずら電話もあったが、ただひたすら泣くだけの電話もあった。中には受け手が「聞こえたらトントンと受話器をたたいてね」と話すと「トントン」という音だけが返ってきたことも。「言いたいことがあっても表現できない子供もいる。それが一番心配だ」
電話相談にすがらざるを得ない子供の多さは、子供を守ってやれない社会のお寒い状況の反映ともいえる。同チャイルドラインの運営委員の昧岡尚子さん(54)は「隣のおじさん、おぱさんでもいい。子供のそぱにだれか(相談に乗ることができる人間が)いればいいのだが-…・。残念ながらこういうシステムは今後も必要でしょう」と話す。
せたがやチャイルドラインは試行事業第二弾として、今月二十八日から三月十三日までの二週間、世田谷区内在住者を対象に「二十四時間子ども電話」を行うことにしている。
もっともチャイルドラインの運営は楽ではない。子供の悩みは尽きないが、ボランティアの数には限りがある。特に二十四時間体制で電話を受けるには十分な体制が必要だが、それを常設化するのはかなり難しい。

地域でのケア課題に
親に話せない相談も多いだけに、子供は公衆電話などから電話をかけることもある。負担をかけないためにはフリーダイヤル化も選択肢の一つだが、多額の運営資金がかかる。このため、相談を幅広く受け付けようとすると、各地でそれぞれに相談電話を設けることが必要になってくる。こうしたことを受けて、先月には牟田さんらが中心になって、チャイルドラインの全国展開と定着を目指す初めての全国組織「チャイルドライン支援センター」も発足した。支援センターそのものが直接相談を受けるのではなく、ボランティアの研修を行ったり、海外の相談事例や各地の相談施設についての情報提供などを行うのが狙いだ。
既に熊本、福島の組織が同センターの会員になっており、ネットワーク構築への一歩を踏み出している。
半面、常設化、全国化することで子供の深刻な状況に直面する比率が高くなるのも事実。これまでも「受け手」からは「聞き役に徹するのは難しい」との悩みが出ていた。関係者からは「今後は受けた相談に対して、地域でどのようにケアに当たるか、ということが研究課題になる」との声も強まっている。