フランスで高齢者による教育ボランティア活動が広まっている。もともと西部の地方都市で始まった取り組みだが、活動内容が高い評価を得て、今年九月からは全国に広がる勢いだ。学校を通じた孫の世代との触れ合いに、シニアたちは新たな生きがいと役割を見つけ始めている。.
仏本土の最西端に近い人口約十五万人の軍港都市ブレスト。ジャクリーヌ・フロックさん(67)は毎週木曜日、住宅地にあるケルボンヌ小学校で教壇に立つ。低学年担当のフロックさんは生徒の傍らで一緒に絵本.を音読、ちゃんと読めるように丁寧に教えている。ボランティアを始めてから約七年。元秘書という職歴から人あたりも良く、「やさしくて、本当のおばあちゃんみたい」と生徒からの評判も上々だ。
フロックさんのような退職した高齢者による教育ボランティアは、ブレスト市内で現在約七十人。十校あまりの小中学校の生徒約千四百人を対象に活動している。
市内の高齢者団体がこのボランティアを始めたのは一九八五年。宣伝などは一切しなかったが、評判を聞いた学校からの求めに応じる形で、現在の規模にまで成長した。活動は、新学期に学校と高齢者団体が保護者と作成する「契約書」を基に行っている。参加を希望する退職者は少なくないが、教育の現場に入っていくだけに、趣味感覚ではできないことを説明してふるい分け、一年問を通じ貢剣に参加できる人だけに限っている。参加者の年齢は五十五歳から八十歳まで。元教師という人は少なく、それまでの職歴は様々だ。
一年間の指導計画は学校や担当教師の方針に沿って準備する。小学校低学年向けにゲームや絵本を使って読み書きを手ほどきすることもあれば、高学年には小説の解説や語彙力をつける指導など本格的な授業も行っている。
放課後に宿題の手伝いをしているグループもある。両親が仕事をしている家庭にとって、無料で学業の面倒を見てくれるばかりか、夕方まで学校に子供を預けることができ、非行防止にもつながると好評だ。こうしたブレストでの成果を聞きつけ、昨年から今年にかけ「ブレストを見習え」という動きが仏国内に高まってきた。
仏教育連盟や仏家族協会連合などの既存のネットワークを持つ市民運動団体がまとめ役となり、組織作りを開始。仏文部省や教員組合も支援の輪に加わり、地方自治体や学校、保護者らとスクラムを組み、今年九月から国内約三十県の学校で本格的に始動することになった。
昨年十月から五十歳以上のボランティアを募集したところ、すでに一万件を超える電話の問い合わせがあった。国内の四百の小中学板を対象に、計千人ほどの馬齢者が新学期に向け準備に入っている。異世代間のコミュニケーションは双方に貴重な経験だ。核家族化で親や兄弟以外の家族と会う機会の少ない子供たちにとって、ボランティアは本当の祖父母のような存在。学校の先生や親には言えないことを話す子供もいる。
仏全国への組織化については、ジャンマリ・ルクレジオ氏ら仏作家百人も支持を表明、フランステレコムなどの企業も援助に名乗りを上げた。高齢者と子供たちの交流を通じ、家庭環境の変化や学校制度のほころびを繕う「新しい共同体」づくり。フランスの新たな取り組みは本格的な高齢化社会を迎えた日本の参考にもなるはずだ。