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学校選択制から1年目の品川区


独自の教育改革計画「プラン21」を策定し、通学区域の弾力化(学校選択制)や小学校の教科担任制、習熟度別学習などの学校改革に取り組んでいる東京都品川区は十日、二〇〇一年度の活動を報告する「プラン21フォーラム」を開いた。会場には区民や保護者、教員などが多数参加、区の教育改革に対する関心の高さを浮き彫りにした。

2001年(平成13年)3月17日(土曜日)


▼プラン21とは
副題は「明るく楽しい学校を目指して」。国の一連の教育改革の流れや二〇〇二年度からの新学習指導要領実施などを受けて、品川区独自の教育改革の推進策を定めたものだ。@社会の変化に対応し品川区の公立学校の質を向上させる教育改革A品川区の「第三次長期基本計画」に位置づけ段階的に実施B学校・家庭・地域との連携を充実する教育の推進C教育委員会は学校の創意ある教育活動をサポートー−を基本コンセプトに、一九九九年度を準備期、一年次の二〇〇〇年度を活動期、二〇〇二年度までを応用期、二〇〇三年度以降を評価期と位置づけている。
「品川区の特色ある施策」として掲げたのが@教育課程の管理の充実(小・中)A教科担任制の実施(小)B小・中学校連携教育の推進(小・中)C小学校の外国語教育の推進D公開授業の実施(中)E施設・設備連絡会の実施F通学区域のブロック化・弾力化−−。同区の公立学校は小学校が四十校(約一万千三百人)、中学校が十八校(約五千六百人)。通学区域のブロック化・弾力化は、大都市地域初の学校選択制として全国的に話題になった。

▼人気楼さらに増加
小学校の学校選択制は、二〇〇一年度が実施二年目。今春の通学区域外の小学校入学希望者は、二月一日現在308人。新一年生の16.2%にあたり、前年度の13.0%より上昇した。一番人気の小学校では区域外からの希望者が前年度の四十八人から六十九人とさらに増加。入学見込み者数は百四十人で、区内で唯一百人を超す。ただ、前年度はゼロだった他区域希望者も四人おり、区教委では「大規模校を避ける保護者も現れ、選択基準が多様化している」と分析した。
最小規模の小学校の入学見込み者は七人で、前年度実績(八人)とほぼ同水準。十四人が他学区を希望したが他学区からも二人が希望した。前年度並みだったことで区教委は「必ずしも大規模校にばかり流れるわけではない」と分析。さらに前年度十二人が区域外へ流れ新入生が十二人だった小学校では、流出者五人、流入者一人(前年度はゼロ)で入学見込み者十九人。区教委は学校の自助努力などで盛り返したと強調する。
中学校の選択制は二〇〇一年度が初年度。二月一日現在三百八十九人が区域外を希望しており、入学見込み者千六百六人の二四・二%を占めた。ただ二月に入試が行われた国私立中学への進学者数はこの数字には未反映。区教委では五百人前後が最終的に国私立へ進むと見ており、区内の現小学六年生のうち、今春通学区域内の公立中学に進むのは半数程度と見ている。
最も人気のあるA中学は区域外からの希望者が六十一人、区域外への希望者が四人だった。区は施設などの関係から、各中学で区域外からの受け入れ上限枠を四十人(A中学のみ三十人)に設定、超過した場合は抽選としていた。A中では抽選が行われたものの、国私立進学などで辞退者が相次ぎ、結局希望者全員が入学できるという。
半面、B中では区域外への希望者が五十四人に対し区域外からは二人、C中では五十三人に対し九人。入学見込み者はB中二十五人、C中三十七人で、前年度入学者の四十四人、六十三人を大きく下回り、人気校不人気校が鮮明に。区が今春中学進学者の児童・保護者に行ったアンケートでは、児童の七二%、保護者の七六%が「中学も学校を選べるようにしてほしい」と答えた。

▼各校独自の試み
源氏前小では、週に一定時間、学級を課題別・習熟度別にグループ分けしてプリント中心の学習を進めた。担任と指導助手、嘱託や管理職も加わって個別指導をしたり、五、六年では課題別に学年を超えて一緒に学習をするなどの工夫も重ねた。二年生(二十四人)のかけ算ではプリントを九五%以上できた児童は十月には四人だけだったが、二月には十八人になり、九〇%以下は十八人から二人に急減した。児童からは「わからないところをよく教えてもらえる」、保護者からは「きめ細かい指導で理解できるようになった」などの声が出たという。
荏原第三中は大学院生と校長が加わって数学と英語で習熟度学習を実施。基本的問題を解く集団から発展的問題を解く集団まで四群に分け選択させた。自分のリズムで学べるため生徒の意欲が高まり学習に充実感を持てるようになったほか、仲間で教え合い人間関係作りにも役だつなど、多くの効果が表れたという。
三木小は六年生(家庭科と体育)、五年生(家庭科・書写と理科)、四年生(社会科と理科)、三年生(パソコンと書写)で教科担任制を導入。教師の専門を生かしわかりやすい授業を行えた上、各学級が教員間にガラス張りになり、”学級王国”解消効果もあったと報告した。
このほか、同一敷地内の品川小と城南中の小・中学校一貫(連携)教育や、地域の大人が教室で一緒に学習する公開授業を実施した荏原第一中、小規模校の長所を生かした教育を進める第二日野小が発表をした。


「学校と教育委員会という左右のエンジンで、学校の閉そく状況を打破するために、大空に向かって飛び立ったところ」。若月秀夫教育長は品川の教育改革を離陸する旅客機に例えた。フォーラムで自校の特色ある取り組みを発表した各学校の校長・教員は、一様に生き生きとしていた。学校に裁量権を与え、独自の工夫を認め特色を競わせることが、画一的で進取の気風が乏しいとされる公立学校に、新風を吹き込んだのは間違いない。参加者の一人、教育改革国民会議委員の大宅映子氏も「こんなことがどんどん広がり学校に刺激を与えられると良い」とエールを送った。
だが、若月教育長が指摘し、大宅氏も気掛かりだと述べていたのが、「特色の横並び現象」である。学校選択制を導入する以上、学校自身が選択に堪えるだけの特色を持たなければ制度は画餅(べい)になってしまう。学校に特色を競わせるのは、選択制導入の当然の帰結でもある。しかし、隣の学校で成果の上がった試みをすれば、自分たちの学校でも導入してほしいという声が保護者から上がるのは当然だし、教師も自分たちもやりたいという気になるだろう。成功した試みに続々と追随し、特色の横並びが起こりかねない。
厳しい言い方をすれば、フォーラムで発表された試みは、習熟度別学習にせよ、小学校の教科担任制にせよ、考え方自体は必ずしも.目新しくないものが多い。今までは様々な事情で難しかったが、できるなら取り組みたいと多くの教員が考えていたものだ。
本来の特色とは、その学校なればこその試みでなければならないはずである。「特色ある学校作り」は教育界の流行語になっているが、特色の横並びを防ぐためにも、本当の学校の特色とは何なのか、今、そのことが問われている。

(編集委員 横山晋一郎)