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いらだち抑えきれない子供


落ち着きがなく、集中力にかけ、いら立ちを抑えきれない子供が増えている。その原因として最近、注目されているのがADHD(注意欠陥・多動性障害)と呼ばれる病気だ。米国ではすでに三百万人が治療を受けているが、日本では学校や親の認知度も低く、対応が遅れている。学級崩壊の一因と考える向きもあるだけに一刻も早い対応が望まれている。

1999/1/4/月


都内に住む小学校一年生のA君は授業中、じっとしていることができない。車の前に突然飛び出して親を驚かせたことも。大学病院の精神科を受診したところ、ADHDという聞き慣れない病気と診断された。

出現率は5.3%


ADHDの診断基準には米国精神医学会が作ったDSM-5と世界保健機関が作ったICD-10と呼ばれるものがある。DSMは不注意の症状を九項目、多動性と衝動性の症状を九項目挙げ、それぞれ六つ以上の症状が少なくとも六カ月以うえ持続する場合としている。これらの症状は学校、家庭、診察室などのうちニカ所以上で現れ、七歳以前の発症を条件にしている。
国立精神・神経センター精神保健研究所の上村靖子部長らが一九九一年と九三年の二回にわたって六〜十歳の児童を対象にADHDの患者を調査したところ、225人中12人がADHDと診断され、出現率は5.3%だった。30人クラスの場合、クラスに一人か二人いる計算になる。男女比は五対一で男児に圧倒的に多かった。この結果は米国の疫学調査ともほぼ一致している。
上林部長のもとに舞い込んだ相談件数はこの一年で二十四件。「これまでは多くて年に五人ぐらいだったが、マスコミがADHDを取り上げたこともあり急増した」という。東京都立梅ケ丘病院の市川宏伸副院長は「外来初診者に占める割合は十年前の約4.5%から約22%に増えた」と指摘する。ただ、全国的な疫学調査は実施されていない。

大脳の一部小さく


ADHDの原因は明らかになっていない。ただ、米国立精神衛生研究所のグループが画像処理技術を使ってADHDの子供の脳を調べたところ、注意をつかさどる大脳などの一部が小さくなっていることを突き止めた。シカゴ大学やカリフォルニア大学は、ADHDの子供の多くにドーパミンという神経伝達物質の受容体やトランスポーターというたんぱく質の遺伝子の変異を報告している。
市川副院長は「患者の七、八割は大きくなると普通の人とかわらなくなるが、二、三割は治らない」と指摘する。治療法としては「自信をつけさせることが第一」(市川副院長)という。ADHDの子供は周りから怒られたり、怠け者などと言われ、自己評価が下がっている。市川副院長は「良い点を伸ばすようほめることを心がけることが大切」と強調する。注意をする時もくどくど言うのでなく、「こうした方がうまくいく」などとわかりやすく注意する方がよいという。

投薬で改善効果


米国ではメチルフェニデートなどの薬も治療に使われている。約三割で著しい改善、軽度の改善も今めると七割近い患者で効果があるという。この薬は覚せい作用があるため、不眠や食欲不振などの副作用があり、通常は朝と昼の二回投与されている。日本でも軽度うつ病や睡眠障害の薬として認可されているが、ADHDは対象にされておらず、患者の中には認可を求める声もある。
上林部長は「ADHDはまだ認知度が低い。親だけでなく、学校の先生や教育相談室のカウンセラーに理解してもらう必要がある」と指摘。また、「三歳児検診のときに診断して、養育体制を考えるようにした方がよい」と早期対応の重要性を強調する。


「多動性および衝動性」の診断基準

以下の状態が「しばしば」見られる場合に該当する(医学書院「DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル」を参考に作成)

1 手足をそわそわ動かし、いすのトでもじもじする
2 教室内で席を離れたり、座っていなけれぱならないような状況で席を立つ
3 不適切な状況で走り回ったり、高い所に昇ったりする
4 静かに遊んだり余暇活動につくことができない
5 しゃべりすぎる
6 絶えず動き同り、「エンジンで動かされる」ように行動する
7 質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまう
8 順番を待つことができない
9 他人の邪魔をする