もうすぐ新学期。中でも、初めて「学校」に通うことになる小学校の新一年生には、すべてが新たな経験だ。そんなピカピカの一年生のスムーズな船出のために、親は何を教えておくべきか。小学校関係者の証言を基にした上つのケーススタディーで検証してみた。(事例に登場する名前は仮名)
【事例1】
服部先生は東京都心部にあるA小学校の養護教諭。新学期のある日、新入生の一団が保健室に駆け込んできた。「先生、健太君の顔から血が出てる!」。服部先生はギョッとしたが、ほどなく現れた健太を見て一安心。「これは鼻血っていうんだよ」具合が悪くなって保健室を訪れても、泣きじゃくるだけで言葉にならない子供が少なくない。服部先生は「どこが痛いか、どこが昔しいのか自分の言葉で脱明できるようにしておいて」と話ず。
【事例2】
下町にあるB小学校の養護教諭、木村先生はトイレ内でドアの前に落ちているスカートとパンツを見つけた。個室から出てきた一年生の道子に木村先生は、服を脱ぎ散らかさないよう注意したが、「うちではこうしてたもん」。先生は個室をのぞいてまたため息。便器にはかわいいうんちが流されずに残っていた。「うんちの色で健康状態を見る親もいるが、流すことまでは教えてほしい」
【事例3】
ヒザをすりむいた明に薬を塗りながら服部先生がふと見ると、手のひらの外側がまっ黒け。「何がついてるの?」「クレヨン」。明は「ちゃんと洗ったよ」と言う。「一緒にもう一度洗おう」と後ろから手を添えると「こんなことされたことない」。服部先生は「手を洗いなさい、と言うだけではダメ。手の汚れが落ちたか、歯慶きで磨き残しがないかまで確認するのが親の役目」と強調する。
【事例4】
A小の一年担任の安東先生はもどかしそうに真由美の着替えを見守った。小さな手が不器用に動くが、そでのボタンがなかなかはまらない。ようやく着替えを終えたが、足元のズックも左右逆。先生は「いくらかわいい服でも、一人で看られなきゃね」とつぶやいた。
【事例5】
B小の一年生、隆司は悪戦苦闘していた。国語の授業で先生から「自分の名前を書いてみて」と言われたがうまく書けない。ベネッセコーポレーショ
ンの昨年四月の調査では、ひらがなを「すべて読める」一年生が八割だったのに対し、「すべて書ける」は半数以下。文字の読み書きはすべて入学後に教えることになっているが、持ち物に名前を書くことぐらいはできた方がいいのは確か。隆司は「自分の名前は練習しとこう」と思った。
【事例6】
五月に入つてからの学校近くの交差点。「キキーツ」というブレーキ音に続き、「ダメじゃないか。よそ見してちゃ」とドライバーの声。警察庁の統計では、父母や学校が注意しているためか、四月の新一年生の交通事故は必ずしも多くなく、むしろ五、六月の方が多い傾向が続いている。びっくりして泣いている子供を助け起こしたお巡りさんは「学校に慣れてきたからって気を抜いちゃダメだよ」と諭した。
【事例7】
朝礼で一年生の晶子が倒れた。木村先生が「朝ごはん食べてきた?」と尋ねると、「ママが朝寝坊しでご飯作ってくれないの」。朝食を食べない子供が倒れるのは今に始まったことではないが、最近はどうも事情が違う。「母親の夜更かしで親子とも朝起きられないケースが増えている。子供は親の写し鏡。子供の様子から親の虐待が分かったケースもある」と木村先生は言う。
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新一年生が学校で戸惑うことはこのほかにも多い。東京都中央区の泰明小学校の多賀義治校長は「最近は少子化の影響か、子供が”王様”になっている。親はまず自分がしてほしくないことは人にも絶対にしないことを教えてほしい」と、要望している。
1998/4/3/金 夕刊掲載記事