「あそこに座ってピザを食べながらパソコンの将来を諮り合ったのはほんの20年前のことだよ」とひげ面の男。「でもこんなふうにバツクミラーを見る(過去を振り返る)なんてことはあまりしなかったな」。「
そんなことを予感させる事件が最近あった。9月中間決算の結果をインターネツトで流そうとした企業に東証が事実上待ったをかけたとされるものだ。「特定の人にしか情報が伝わらないためインサイダー取引規制に関する自主ルールに違反する恐れがある」という。米国ではすでにインターネットを使った企業情報の開示が定着している。日本も遠からずそうなるに違いない。そうなった場合、インターネツトを使って重要な企業情報を入手できる人とそうでない人とは、株の売買や仕事の取引を通じて刹益に大きな差が生じる。無店舗販売の安い商品の情報に接することのできる人とできない人の間にも、やはり有刺、不利の差が出てくる。
そうした情報は一定の荊用料金さえ払えぱだれでも入手できる。情報入手に意欲的に取り組み情報強者となるか、それとも機械操作にアレルギーを起こし情報弱者となるか。道は二つに一つである。企業やそこに働く人々もまた、情報花社会の中では強者と弱者にくっきりと二分される。
ソフトバンクの孫正義社長によると、役員全員に来年二月までにパソコンをブラインドで打てるようにせよ、との厳命を出したという。できない場合は、罰金五百万円を科すとのこと。
これは導巾の役員報酬から差し引くのではなく、それに上乗せされる成功報酬(95年3月期では1億円を超える役員が出た)をその分、滅額するものだが、それにしてもパソコン操作の巧拙だけで500万円の差を生じるのである。同社は、会議は問題提起と議論の場と位置づけ、重要な意思決定はいつどこにいてもアクセスできる電子メールで行っている。この結果、意思決定が大幅にスピードァップしたという。電子メールだと、その場の雰囲気に左右されたり、他人の顔色をうかがうこともなく、合理的な判断をしやすい点もある。電子メールには最新の生情報が瞬蒔に飛び込んでくる。その情報をどう読み取るか。肩書とは関係のない本人の実力が問われる。
人にも企業にも「好奇心年齢」がある。前述の対談でおもしろいエピソードがビル・ゲイツによって語られている。
ビルが中学二年のとき、母親たちがコンピューターの端末を学校に寄付した。まず先生に使い方をおぽえてもらい、それから生徒に教えてほしいと願った。しかし事態はまったく逆になった。生徒が熱中しそれから先生に教えたのである。好奇心は一般に若い人、若い企業の方が旺盛である。しかし暦年齢の若さ、企業の設立後年数の浅さと好奇心年齢は必ずしも一致しない。
高齢でも、企業の歴史が古くても、好奇心年齢の若い人や企業はいくらでもいる。情報化時代を生き抜くにはなによりも好奇心をもって情報の本質に迫ることだろう。情報強者と弱者を分かつのは最初はちよっとした心の持ちようだが、やがてその差は加連度的に広がっていく。心の若い人に末来が開けるのはいつの時代も同じである。
論説委員 小川 博之
1995/12/17/日