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「少年犯罪が戦後第四のピークに入りつつある」といわれる中、全国少年補導員協会などが十二日、東京都内で「子どもを非行から守るために」ど題したシンポジウムを開いた。パネルディスカッションでは少年非行の増加の背景として、規範意識の低下など子供側の変化のほか、自信喪失など親側の問題も指摘された。さらに教育改革の方向性として「個性重視」が強調されることに対し、「学校などで社会性を身につけさせることも必要では」との声も相次いだ。
シンポには補導員など約四百人が参加。基調講演で舟本馨・警察庁少年課長は、少子化の中でも刑法犯少年の補導件数が二年連続して増えたことなどを説明。表面的には普通に見える子供による「いきなり型」の犯行が増えた、と述べた。ただ、周囲が子供の変化を見逃した結果、「いきなり」との印象を与えている面もある、と指摘した。
また、「オヤジ狩り」と呼ばれる集団強盗などでは、明確な〃ボス〃がいなくても「みんなで渡ればこわくない」とばかりに犯行に及ぶケースもある、と報告。今後は犯罪捜査とは違う観点から、少年補導職員を中核とした「少年サポートセンター」を設置していく方針を示した。
シンポでは、非行を抑止するうえで、「個性」を重視する教育がどう作用するかについて活発な議諭が交わされた。口火を切ったのは耳塚寛明お茶の水女子大教授。国立大学の付属小学校の研究主題に登場する言葉を分析した結果、「自已」や「個」といった単語が目立ったが、「個性重視の教育がバラ色かは疑問だ」と問題提起した。
耳塚氏は「学校の非行抑止力は小さくなる傾向にある」としたうえで、「元々バラバラな志向性の人間を、一人前にするためにはどこかで『社会化』が必要。学校の任務である社会化がおろそかにされていないか」と指摘した。
エッセイストでサンケイリビング新聞編集長の山谷えり子さんも「自已実現が『他人を征服すること』のように誤解されている。小中学生ではとんちんかんなわがままになってしまう」などとして、「個性化」の独り歩きに懸念を示した。
教育評論家の尾木直樹氏も大卒者の高い転職率や高卒フリーターの増加などを例に挙げ、「かつては勉強して東大から大蔵省や一流企業へ、という流れに説得力があった。しかし、大手銀行さえ解体される今の状況では、目標も見えない。社会化の困難さを感じる」と述べた。
元教師でもある大阪府警少年課婦人補導員の来間規子さんはこれまでの補導例から、子供の規範意識の低下を指摘。薬物についても「好きでやってる。かめへんやん」という子が多く、「たばこはいつから吸ってるの?」などと問いかけても、「わからん」「関係ない」「別に」などの単語しか返ってこず、「言葉のキャッチボールができない」と嘆いた。
尾木氏も「過去三回の少年犯罪増加期には子供が段階を踏んで転げ落ちていった。たばこもシンナーもやっていない子がナイフをかざしたりすることはなかった」と発言した。
山谷氏は”援助交際”などに走る女子高生の心理の背景として、ゲームの「リセット」感覚がある、と指摘。ある女子高校生に「新しい恋人ができたらオールリセツトでバージンよ」と言われたケースを紹介、「自分の体すら記号化している」と述べた。
親の自信喪矢も深刻のようだ。来間氏は補導した子の親を呼び出した際に「もっと毅然(きぜん)としていてもいいのに」と思うことがあると指摘。ケロッとしている子の横で、オロオロ泣くばかりの親もおり、「指導力の低下を感じる」と報告した。半面、離婚などでなかなか、子供と全画的には向き合えないケースにも配慮。「補導員も含めて周囲が支援する体制を作り上げる必要がある」と訴えた。
コーディネーター役を務めた藤本哲也中央大教授は「子供の居場所」をめぐる社会的変化を指摘。インターネットなどの情報空間や、地べたに座ってたむろする子供たちが共有する「たまり場」的空間の発生に対して、「単にダメだと言うだけでない指導が必要」と締めくくった。