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「パソコンもソフトがなければただの箱」といわれるように、パソコン利用にあたってソフトが基本的に重要なことはいうまでもありません。パソコン雑誌は毎月、新作のソフト紹介記事であふれています。ページをばらぱらめくるだけでパソコン利用の範囲が想像以上のスピードで広がっていることを実感できます。販売されているパソコンソフトの中には海外の英語版ソフトを日本語化したものも多く含まれています。海外とくにアメリカでは家庭へのパソコンの普及率は40%にも達しているといわれます。この膨大な市場をめざして数多くのソフトが販売されています。たとえば、英語版ソフトの情報が収録された月刊のCD‐ROM版データペースをみてみると、そこには5万本近いソフトの情報が収録されています。それらはパソコンだけでなく、メインフレームコンピュータ(大型コンピュータ)やワークステーション(高性能の小型コンピュータ)用のソフト情報も含まれています。この情報を機種別に調べてみると、95年12月現在でWindows版ソフトは1万3千本を超えています(マッキントッシュ版は約6千本)。データベースに収録されていないその他のソフト、とくにゲームソフトやCD‐ROMソフトを加えるとその数は膨大になります。ソフトウェアに関するこのデータベースではソフトを77のカテゴリーに分類して情報を提供しています。
こんなにたくさんのカテゴリーに分類するほどのソフトが本当に必要なのでしょうか。これまでワープロ、表計算ソフトなどせいぜい5、6種類のソフトしか利用してこなかったパソコンユーザーにすれば、これほどの数のカテゴリーに分類される膨大なソフトを、だれが、何の目的に利用するのかと不思議に思われることでしょう。しかし、これらの膨大な数のソフトを検討することは将来の日本におけるパソコン利用の可能性を考えるための重要な情報になるはずです。もちろん、その中には学校におけるパソコン利用に関する多くのアイデアも含まれていることでしょう。
さて、たとえばワープロ程度の利用を考えて一体型のWindowsパソコンを購入したとしましょう。しかし、パソコンには上記のようにワーブロソフトだけでなく20数種類のソフトもあわせてついてきました。これらのソフトはどのように利用できるのでしょうか。個人利用をイメージしながらパソコン利用の可能性を具体的に検討してみましょう。
自宅で利用するソフトウエアー
ワープロ 37%
表計算 20%
データベース 12%
言語処理 17%
その他 12%
(電子工業振興協会 パソコン白書 94-95)
ワープロソフトは悪筆やくせ字の悩みを解消してくれます。たしかに、プリンタ−から印刷されてきた手紙や文章は自分が書いたものとは思えないほどのできばえ(見た日だけ!)になります。しかし、せっかく手書きで書いた文章を雨だれ式(人差し指だけでタイプすること)のタイプで、手書きの数倍の時間をかけて苦労して入力するのでは、「面倒だ、悪筆でもいい!」となってしまうかもしれません。もちろん、ワープロソフトは手書きの悪筆をきれいな文字で魅力的に印刷してくれるだけではありません。「こんなにも!」と思われるほどの豊富な機能を備えており、それらの機能の10%も使いきっているユーザーがどれほどいるか疑問に思われるほどです。
一度作った文書は保存しておけば何度でも利用できます。転居や時候の挨拶などは標準的な文例を手直しすることで短時間で作成できます。文章の形式などが心配な場合は文体チェック機能を利用することで、ある程度のチェックをソフトにさせることも可能です。とくに英文の場合は単語のスペルをチェックして誤りも即座に訂正できる機能もあります。同じ文書を複数のあて先に送りたい場合は差込印刷機能が便利です。また、写真やイラストあるいは表やグラフなども文書に挿入できます。紙の場合には別途用意した写真などを切り貼りしなければなりませんが、それと比べれば便利さがわかります。さらに、人の書いた文章に手を入れることも、印刷された素案に赤字をいれるのと同様の感覚でできます(グループ文書推敵という)。また、加えられたコメントもタイプし直す必要はなく、ソフトが自動的にコメントを反映して修正してくれます。
このように、パソコン利用の出発点ともいえるワープロソフトを例にしたときに、パソコン利用には次のように二つの側面が考えられます。
(1)これまでと同じ文書をよりはやく、より手軽に処理するという効率性の側面と
(2)より見やすく、そしてより整った文書を作成できるという文書作成の目的にかかわる効果
の側面です。
「ワープロなんか使うよりも手書きの方がはやいし、面倒なくてよい」とするのは現在のままでよいとする態度です。「もう少し、うまい文章を考えたい、もっと魅力的な文書を作りたい」といったように、現状に満足せずに改善をめざそうとすれば、そのためにパソコンは大きな役割を果たすことができるのです。
もちろん、パソコン操作が難しくて駄目というのでは新しい挑戦をする意欲もわきません。パソコンの有効活用の基本条件の一つは使い勝手といえますが、Windowsなどによって従来に比べて格段に改善されました。しかし、ワーブロのように文書作成のためにはタイピングの技術が求められます。タイプがうまくなればパソコンもぐっと身近になるはずです。そのためにはタイプ練習ソフトが利用できます。上記のソフト群にタイプ練習ソフトが加えられていないのは残念ですが、2、3千円で購入できるのでぜひ、そろえておきたいものです。
ワープロソフトと並んでよく利用される表計算ソフトについてもワープロソフトと同様のことがいえます。従来の手書きの家計簿を表計算ソフトで行えば、数値の入力は別として計算はすぐに終わってしまいます。しかし単に家計簿をつけるだけでなく、保有株式の買値と現在値から損益を分析したり、過去の収入や支出を費目別に比較して家計構造の分析をしたり、子供の成長などにあわせたライフプランを立てるといった新しい目的を考えてみることもよいでしょう。ここでも従来の仕事(作業)をよりはやくより正確にこなすという効率性と、投資分析によって収益を増やすといったこれまでになかった新しい使い方を考える効果の側面をみることができます。
パソコンが開く新しい世界
最近、マルチメディアやパソコン通信そしてインターネットが大きな話題になっています。言葉はむずかしく聞こえますが、実際にためしてみると楽しく有益な新しいパソコン利用が可能となります。まず、マルチメディアはその基本はAV(Audio Visual)といえます。たとえば、オールインワン型パソコンに添付されたソフトの中でCD‐ROMソフトはマルチメディアソフトの例です。これはパソコンに組み込まれたCD‐ROMプレーヤでためすことができます。それによって音楽が聞こえたり、写真やビデオ動画が画面に表示され、ワープロソフトや表計算ソフトを使う場合とまったく違ったパソコンの世界を見せてくれます。もちろん、手持ちの通常のCD(コンパクトディスク)の音楽を再生して楽しむこともできます。画面には再生やポーズなどのボタンが表示され、マウスでボタンをクリックするだけで操作できます。 CDに収録されている曲名など各種の情報を記録することも可能です。CDコレクションが増えると大変に便利な機能です。
写真もまた、DPE店でPhotoCD(写真をCDに記録したもの)に焼き付けておけば、好きな写真を画面に表示させたり、写真をワープロ文書に貼り込んでカラフルな日記を作ることが可能となります。最近は写真のプリントも安くなったので、3万円程度のスキャナーを購入して紙焼きの写真を取り込むという方法も考えてもよいでしょう。また、TV機能つきのパソコンはビデオキャプチャー機能がついており、ビデオカメラなどの動画を記録できます。ファイルの大きさなどの点で実用的でないかもしれませんが、ためしに動画入りの手
最近ではさらに、パソコン雑誌の多くにデモソフトなどを収録したCD‐ROMが添付されるようになりました。これらは文章で読む内容に加えて、写真やビデオそして音声などの媒体で関連した情報を与えてくれます。また、新しいソフトの具体的な内容を実際の画面で見たり、操作してみることができるのでソフトを購入したいときに使利です。さらに、ソフトバンク社から発充されているOnHandとよばれるCD‐ROMは膨大な数のソフトのデモ版を収録しており、広大なソフトの世界を実感するためにはぜひ、 ためしたいCD‐ROMといえます。もちろん、上で紹介したように膨大なデータを収録したCD‐ROM版データベースも各種、販充されています。パソコンにバンドル(添付)してある上記のソフトの中で駅すばあと、広辞苑、統合辞書、ブラッツOVAL、電子地図、HyperPlanetなどはCD‐ROM版のデータベースやソフトです。パソコン通信はパソコン通信サービス会社が運営するホストコンピュータを通じて各種サービスを受けようとするものです。電子メール(FAX送信も含む)、 電子掲示板、同好の集まり(SIGとかフォーラムとよばれる)、各種データベース、電子ショッピングなど多様なサービスが含まれており、家でしか利用しないパソコンを外の世界へと広げてくれます。オールインワン型パソコンにはパソコン通信に必要なモデムや通信ソフトも標準添付されており、しかも加入中込書もついているのですぐにパソコン通信をはじめることができます。
パソコン通信はニフティやPC VANあるいはPeopleといった特定のホストコンピュタに用意されているサービスに限定されます。それに対して、インターネットは大学や企業そして政府機関などをつないだネットワクのネットワークであり、世界中の数百万といわれるデータベース(その多くは文字だけでなく、グラフや音声あるいは動画なども含んだマルチメディア的な内容となっている)へアクセスできます。それを可能にして いるのがWWW(World Wide Web)です。
このデータベースはWebサイトやホームページともよばれ、多くの企業が独自のホームページをもつようになりました。また、個人でも自らのホームページをもっことができます。インターネット上に自分のホームページをもつということは、自ら世界に向けて発信できることを意味します。外部に対して発信するベき情報や素材をもっているのかどうか、これはコンピュータの問題ではありません
これは絵心や音楽の才能があると思われる人々が積極的に自分の絵とか曲をホームページに載せることです。それによって、世界の人々に自らの才能を認められる可能性を少しでももつことができるようになります。インターネットはその中を自由に歩き回ることだけでも新しい世界を開いてくれます。ホワイトハウスの大統領ファミリーをのぞき、次の瞬間に博多ラーメンの専門店のカラフルなサンブルを眺め、次の瞬間ルーブル美術館の名画を鑑賞できるのです。しかし、そんな歩き方をしていたのではすぐにインターネット迷子になってしまうでしょう。電話帳にあたるディレクトリサービスもあり、自分の欲しい情報を得ることができるWebサイトの検索も可能です。
インターネットをサーフィン(情報の海をすいすい泳ぐという意味でこんな言葉も使われる)しているうちに自らも発信したいと思うようになるでしょう。ホームペ ジを件るにはHTMLとよばれる一種のプログラミング言語(文章の書式と考えてもよい)を学ぶ必要があります。しかし、HTMLを知らなくとも、発信したい内容をワープロ風に編集すれば自動的にHTMLに変換してくれる使い勝手のよいソフトが急速に市場にあらわれはじめました。また、ワープロや表計算ソフトの文書やワークシートをHTML書式で保存する機能もつくようになりました。近い将来、もっともっと手軽に自ら、ホームページを作ることができるようになるでしょう。予測によれば将来、世界人口に近い数にまでWebサイトが増えるといわれます。これは世界中の人人がインターネット上で発信することを意味します。そうした時代がいつくるかはわかりませんが、自ら発信する情報を得るためにも、従来の生活の仕方に満足せず、パソコンをきっかけとして新しい試みに挑戦すべきでしょう。それはパソコンを学習することではありません。音楽、芙術、小説、料理、etc、人に負けないような何かを身につけることです。学校教育においてもますます創造性が求められることになります。そのさいに重要なことは積極性、好奇心です。価格、操作性などの点で身近になった情報技術に開心をもち、自ら積極的に挑戦することからおのずと、情報化社会に生きる術が得られることになるのです。
学校教有とパーソナルコンピュータ
小中学校から高校、大学そして専門学校などほとんどの教育機関に急速にパソコンが導入されつつあります。また、(通産省の)100校プロジェクトのようにインターネットの上でさまざまな教育の試みを行う例も出てきました。学校でもまた、効率性と効果の二つの側面を考えることができます。
まず、効率性からいえば学校事務の支援をあげることができます。教材の準備のためにワープロソフトや図形ソフトなどが利用できます。また、学生、生徒の名簿や成績菅理にも役立てることができます。さらにこれまで調整に難航していた時間割もさまざまな条件を織り込んでパソコンが自動的に作成することも可能です。そのためのソフトも販売されています。しかし、こうした効率性の側面よりも教育効果の面でパソコンに期待されることの方が大きいでしょう。
まず第一に情報技術教育としてパソコンそのものを教えることがあげられます。 これまでもプログラミング言語教育などいわゆるコンピュータ教育が行われてきましたが、パソコンはコンピュータとしてとらえるのではなく、「読み書き算盤(電卓)」の延長上にいわゆるリテラシー教育として教えることが求められます。そのためには電子計算機としてのパソコンではなく、文房具としてワープロ、表計算そしてグラフ、作図さらにはコミュニケーション手段として電子メールやパソコン通信を教える必要があります。そのためには教育の現場にある先生方がパソコンに対する理解を深めることが求められます。
次にパソコンはそれ自体が教育の対象となるとともに、さまざまな科目の教育を支援するツールとして活用されます。中でもマルチメディアとインターネットに対して大きな期待が寄せられます。マルチメディアは教材の中に文字や数値だけでなく、自由に写真や音声あるいはビデオ動画などの素材を組み込むことを可能にしてくれます。そのためのツールとして6万円程度からデジタルカメラが利用できるようになりました。また、素材を手軽に組み込んで教材を開発するすぐれたオーサリングソフトも利用できます。社会や理科といった科目の中で先生方の工夫が求められます。
マルチメディアではCD‐ROMタイトルも大いに活用できます。電子百科事典、世界の芙術館、クラシックの名曲、etc、さまざまなタイトルが教材として効果的です。パソコン画面をブロジェクタによって拡大投影すればビジュアルな授業になるでしょう。しかし、CD‐ROMタイトルは内容が限定されます。それに対してインターネットは教室にいながらルーブル美術館に出かけたり、航空博物館でスペースシャトルの仕組みの図解入りの解説をみたり、あるいは海外の学生と議論をかわすといったことができます。その可能性は無限といってよいでしょう。もちろん教室でインターネットを実用的に利用するためにはパソコンに加えて高速の通信装置が必要となりますが、たとえば手軽に高速通信を可能とするISDN(NET64)も低価格で導入できるようになりました。インターネットは世界に広がっています。一度でもインターネットを体験し、世界に出てみると日本語の世界に閉じこもっていることが窮屈になってきます。英語を勉強する励みになるという副次的な効果も期待されます。
もちろん、教育におけるパソコン利用はよい面ばかりではありません。パソコンになじめない学生、生徒が出ることも予想され、その対応も必要です。また、ソフトの違法コピ一の問題やパソコン通信、 電子メールにおいて守るべきルール(作法)の教育なども重要です。しかし、そうした問題があるにしても、パソコンはこれまでのどの製品をも上回る大きな可能性を秘めています。今後の動向に注目していく必要があります。
以上
日本経済教育センター発行誌(1996年3月 Vol 179)より
提供 風巻 照美