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コンピューターは学業成績に悪影響−−。米国で九月末、こんな内容の調査結果が発表になり、諭議を呼んでいる。これまで万能のイメージが強かったコンピューターだが、やみくもに利用する段階を過ぎ、使い方を吟味する段階に入ったようだ。
現地有力紙も報道
このショッキングな調査結果を発表したのは、全米大学入学共通試験の「SAT」や英語能力試験の「TOEIC」「TOEFL」などを手がけている公共教育機関、ETS(教奮テストサービス)だ。調査対象は、日本でいえば小学四年生と中学二年生に相当する学年の合計一万四千人。同機関が定期的に実施している学カテストの結果を今回、コンピューターの利用と絡めて分析したのだ。すると、日ごろコンピューターを利用している生徒の数学の点数が、利用していない生徒に比べて悪かったという。
米国ではだれもが知っている大手団体が実施し、学力とコンピューターの関連についてまとめた初めての本格的な調査だっただけに、ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙など一流紙も報道するなど、現地ではちょっとした話題になっている。中でも驚いたのが、バソコンを授業に使っている米国の教育関係者だ。教育現場でコンピューターを使うべきか、使うべきでないか、ホームページ上の電子会議室などで、今も白熱した議論が続いている。
ETSの指摘を待つまでもなく、パソコンは必ずしも学力向上に役立たないというのは、だれにでも思い当たるフシがあるだろう。ワープロソフトを使うと、読むことのできる漢字は増えても、書くことのできる漢字はなかなか増えない、との声は以前から多い。使い方を誤ると、作業は楽になっても、学力の増強に必ずしもつながらないことは、確かに言えそうだ。こうした直接的な影響だけではない。パソコンを利用すると他のメディアに接する機会が減り、本来は得られた情報が得られなくなる可能性も強い。
効率低下の報告も
特にインターネツトを利用する場合だ。国内の様々な調査機関が、インターネツトを利用するとテレビ視聴や読書の時間が減ると報告している。インターネットですべての情報が得られるわけではないので、つい抜け落ちてしまう情報や知識があるかもしれない。また、睡眠時間もかなり減るため、頭の回転が鈍ることも考えられそうだ。
米国では、それが極端になった「インターネツト中毒」が社会問題になっている。一日何時間もパソコンに向かい、ちゃんとした社会生活ができなくなる現象だ。三年ほど前から報告され始め、日本でも関連書籍が相次いでいる。米国では、ネットに夢中になるあまり子供の面倒を見なくなり親権をはく奪された母親や、学校に行かなくなった学生もいるようだ。
学刀や知識教養、社会生活への悪影響ばかりではない。パソコンの導入が、本来の目的である作業の効率化に必ずしもつながっていないとの調査結果も海外で明らかになっている。
米国のソフト会社のSC○と調査会社のハリス・リサーチが欧州の中堅・大手企業の社員四百人を対象に共同調査し、昨年九月に発表したものだ。それによると、パソコンを使う会社員は一年間に平均三週間分を故障や誤使用などのトラブルのために無駄にしているそうだ。日本でも、頻発するパソコンのエラーに困っている人は多い。
欠点を知って利用を
では、コンピューターは全く人間の役に立たないのだろうか。実は、冒頭のETSの調査をつぶさに読むとその答えがある。学力に悪影響を及ぼすのは単純計算など低レベルの学習にコンピューターを利用した時だけで、応用問題など高度な学習にコンピューターを利用すれば、逆に学力向上に役立つとの結果が出ているのだ。
報道でも、ワシントン・ポスト紙が「学習に役に立たない」と伝えるなど、マイナス面を強調するところが多いが、ニューヨーク・タイムズが「役立つ」と書くなど、プラスに受け止めるところもある。
先の仕事の効率化に関するSC0の調査でも、九〇%以上の人が無駄な時間が多いものの、総合的にはパソコンは仕事に役立つと回答している。当たり前だが、要は使い方なのだ。度を過ぎるとよくないのはパソコンも同じだ。万能視されがちなパソコンだが、今後は欠点や限界を知った上で上手につきあっていく必要がありそうだ。(田久保憲司)
1998/11/14/土