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シュタイナー教育に学ぶ

1998/9/7/月 神奈川新聞

森山由美子さん(四四)が代表をしている「竹の子幼稚園」は、横浜市の東横線綱島駅から歩いて十五分の住宅衡の一角にある。普通の民家をそのまま使っていて看板も出ていない。定員は十七人。五年前に開設して既に二十人の卒園生を送り出している。どんな幼権園なのだろう。森山さんは語る。「竹の子の会の親たちから、就掌年齢まで一貫した教育を受けさせたいという希望が出され、三人の子でスタートしました。子育てに迷う母親たちの不安や願いを受け止めながら、父母と教師が共に作り上げていく共同体が、この幼権園なんです」
子どもの発達段階が今どこにあるか。一人ひとりの成長の特徴をつかむため、竹の子幼稚園では、子どもたちが日々描く絵を一つの手掛かりとしている。「児童画は、その子の成長のすべてが描かれるんです。一、二歳では、なぐりがきしかできなかった子どもも、三歳になって反抗期が過ぎると、マルを一生懸命にかく、そのうち、マルの中に点々をかいて、『これが私』というのが姶まる」「それからマルに自分が関心を持ったものをくっつけていく。歯が面白いと思ったら歯を大きくかいたり。次に頭に手足がはえ、頭と胴体が分離し、手足が付いて人間の形になる。幼児期のピークにはお話が飛ぴ出しそうなぐらい、豊かな絵をかくようになりますが、やがて歯の生え替わる時を迎えると、上下、左右対象の絵になり、最後は七色のニジを描く。ニジが絵に出てきたら学童期を迎えるまでに成長したあかしなんです」

▽ニューファミリー
今から六年前に二歳すぎで入ってきたユカちゃんは,小学三年生に成長した。ユカちゃんの絵はそのプロセスを見事に示している。「ユカちゃんは二歳半から一年続く反抗期だったんです。その出方がひとくて、母親は手を焼いていた。
最初に出会った時、ユカちゃん、こんにちはと言っても『フン』。どっから来たの。『知らない』って調子で…」事情を聴いてみると、母親は子どもが求めるままにさせていた。東京ディズニーランドに行き、家ではテレビ、ビデオはつけっ放し。ニューファミリーの典型だつた。「それが子どもにとっては楽しいし、父親、母親も共に子どもとお友達でいられることがいいと思っていたんです。夫帰も、お互いに名前を呼び捨てで呼ぴ合い、子どもにも、そうさせていました」「だから子どもが反抗すると、『どうしてユカちゃん、そんな意地悪するの』みたいな感情を持っていた。親は子供にとって規範となる権威を示さなけれぱならない、という自覚が親自身になかったから、子どもの親に対する反感はエスカレートするはかりで、大変だったんです」
▽親の権威を示す
反抗期には、反抗する子どもにきちんと親が向き合うことが子どもに必要だという。「私なんか高校の時に父親に反抗して取っ組み合いまでしましたが、向き合ってくれる相手がいたから、その不満が解消して、もう一度冷静に自分を見られるわけです。三歳の反抗期も同じで、反抗に出たら、ある時は押し入れに入れて、お母さんの言うことを聞かなければご飯ほ食べなくていい、というように親の権威を示す必要があるんです」
反抗期の出方は、それそれの子どもによって達う。それをユーモアで返すのか、ぷつかって徹底的に否定しておくのがよいのか、そこを問われるのが親や教師の力量で、アドバイスをしながら支え合っていくのが、竹の子幼稚園の役割だという。
「だれでも子育ては初めて体験するのだから難しい。でも、これは反抗期だから、今度、こうやってこらんなさいと言ったときに、それまでの姿勢、態度を親が変えられるかどうかが、その後の子どもの成長を大きく左右します。ユカちゃんは知的な面ぱかりが刺激される今の時代の典型的な問題児だったんです」
食事を作ることが苦手な母親は、外食か、出来合いのおかずを買って済ませていた。
「ユカちゃんとお母さんに朝早く来てもらって、一緒にお掃除を始めたんです。最初は、フンと言って何もしなかったユカちゃんですが、私とお母さんが一緒に、楽しそうにお掃除をする姿を眺めているうち、だんだん興味を示してきて、自分からホウキを持ち始め、参加してきました」
▽母親も自己改革へ
三人だけの楽しい時間を独占することを知ったユカちゃんは登園すると「先生、お掃除」と要求し始める。母親も便所掃除、おやつの手伝いと前より積極的に何でも手伝うようになった。「お母さん自身、この幼稚園に信頼を寄せているという姿を見せるわけです。そうするとユカちゃんの信頼もこちらに開かれてくる。信頼が深まる中で、時にはバシンとやられても、傷にはならない。子どもは、それを受け入れるようになるのです」
「テレビなど知的刺激のない空間で、ユカちゃんは泥に初めて触り、お団子作りが大好きになる。畑でミミズを見つけたと持ってくる。それを見て、お母さんは感動して、ここでのシュタイナー教育に絶大な信頼を寄せ、お母さんの自已改革む始まりました」
それまでの母親は、周りの価値観に沿って生きてきたが、初めて自分が自分に対して主導権を握ることを学んだのだ。そして夫に対しても、「それではユカとの人間関係が作れないから朝は何時に起きなさい」「夜は何時に帰ってきて」と要求した。子どものために料理を研究して作り、家からミツキーマウスの人形などを追い出し、自分と子どもとのかかわり方、生活の仕方を変えていった。
「最初、やせていたユカちゃんの体も、だんだんふっくらとしてきた。このようにお母さんを手助けしてあげると、子どもは成長への道にさっと入っていけます。お母さんが変わらないと、幼稚園でいくら努力しても駄目です。幼児期の母親の力、存在が子どもにどんなに犬きな影響を与えるか、私は十七年間、見てきて実感しています」

天野先生の切り抜きより