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スウェーデンのいじめ対策


学校生活に暗い影を落とし、時に子供を自殺にまで追い込む「いじめ」。教師や大人による早期発見・解決が叫ばれながらも、陰湿なケースが後を絶たないのが現状だ。八○年代後半からいじめが社会問題となったスウェーデンでは、ここ数年開でいじめ防止の法整備や学校ぐるみの対策に力を入れ、成果を上げているという。先ごろ来日した同国のトーマス・エストロス教育椙に「いじめ対策先進国」の取り組みを聞いた。

トーマス・エストロス氏
65年生まれ。34歳。ウプサラ大学公共政策学部卒。同大学院で経済学修士号取得。94年、国会議員となり、財務省税金担当椙を経て、98年10月から教育相。


教育相は「いじめ対策では-学校ぐるみの長期的な戦略が大切だ」とまず強調した。学校の責任を明確にしているのが同国の対策の特徴の一つで、「いじめっ子やいじめに遭った子供を転校させて終わり、という事後的な対応では問題の解決にならない」という。

学校長が独自性発揮


九〇年代前半には学校教育に関する法律やカリキュラムを改変し、いじめの未然防止に関する学校側の責任を強化。九八年には「学校法」を改正しへ「学校は.いじめなど他人を侮辱するすべての行為に積極対応しなければならない」ことを明記した。小中学校の各校長は独自のいじめ対策を作成、自治体に報告することになったという。
九〇年代に入り、学校と保護者との連携も強化。一連の教育改革で、学校が授業内容や行事などを決める際に保護者も積極的にかかわれるようにしており、「問題発生の前に生徒や保護者と議論し、防止策や解決法を計画しておくことは非常に有効だ」と話す。
例えば、ある学校では校長やカウンセラーらでチームを作り、生徒や保護者の相談窓口となる仕組みを導入。生徒の中から担当委員を選び、学校側と子供たちのコミュニケーションを図る制度を作ったところもある。同国の市民団体「チルドレン・オンブズマン」の調べでは、何らかのいじめ対策を講じている学校は九三年の四〇%から、九五年には約九〇%に増えている。
スウェーデンでは私学は少数で、九八%の子供が公立校に通う。授業料や給食費などは公私立を間わず無料で、通う学校は居住地にかかわらず自由に選べる。いじめ対策が成果を上げ、子供が安心して学べる環境を整えた学校は評判が高まり、生徒が広い範囲から集まっているという。

国を挙げて取り組む


同国のいじめ問題は外国人の増加や若者を取り巻く環境の変化などを背景に八○年代に顕在化した。その後、国を挙げたキャンペーンや法整備などの対策に本腰を入れたことで、教育相は、現在いじめに遭う子供の割合は「二-三%になった」と推測する。ただ、一方で「対策は進んだが、いじめられる子供の割合は今も8〜10%に上る」(チルドレン・オンブズマン)と、問題の根深さを指摘する声も強い。
このため政府は今年を「学校でのバリュー・イヤー(価値観を育てる年)」とし、いじめを生まない土壌作りに力を入れている。いじめ問題のほか、民主的な価値観、平等意識について授業で積極的に取り上げるよう奨励しており、教育椙は「学校は明確な規範を掲げ、いじめのような反民主的行為は許さないとの原則をはっきり示すことが大切だ」と強調する。

「いじめは人権侵害」


移民が増加する中で、スウェーデンは「名文化共生社会」の実現を目標に掲げている。しかし「外国人としてのバックグラウンドを持つ生徒はいじめに遭う割合が高い」(学校庁調査)のも事実。「いじめ=人権侵害」との認識を幼時から徹底させることが政府のいじめ対策の根底にあり、教育相も「社会の規範は世代間で自然に受け継がれていくものではない。日々の学校生活で子供たちに絶えず語りかけ、再生産する努力が必要」と話す。また「不況が続き、両親の失業や離婚で家庭の教育力が低下するなど、子供を取り巻く社会環境は悪化している」とも分析。こうした中での学校の責任は「社会、経済状況の急激な変化にも対応できる人材を育てること」とした上で、「違いを乗り越えて他者と協力し合う民主的な価値観を身につけることは、社会で有益な人材となる最低限の資質でもある」と強調した。

1999/2/5/金