教育関係資料目次へ

総合Menuに戻る

数学嫌いにどう教える

2001/2/2/金


「何のために数学を勉強するの」--。こんな問いに、教師はどうこたえるのか。子どもの数学離れが進む一方、二〇〇二年度から教科の学習内容が三割削減される。計算力など基礎学力低下への危機感は現場でも高まっている。一月二十八日から三日間、東京で開いた日教組の教育研究全国集会の「数学教育分科会」では、学びの動機づけや、実生活と数学の接点を実感させる指導方法を探る報告が相次いだ。

「コピー機の拡大、縮小機能の倍率って知ってる?二倍にセットすると、大きさはどう変わるんだろう」。兵庫県の中学校教諭が二年生の「相似と図形」の学習に関連してこんな質問をしたところ、生徒の四六%が「面積が二倍になる」と答えた。

実験を動機づけに
実際に試してみると、「長さの倍率」であることが分かる。コピー機をよく見ると、B5用紙をB4に拡大(面積を二倍)するとき、倍率は一四一%(二の平方根)と表示される。が、会場の教師でも感覚的に「倍率は面積」と思っていた人が結構いた。授業では次に、縦四靖の長方形の絵を縦五靖の額縁にぴったり人れるにはコピー機で何倍に拡大すればよいかを生徒に尋ねる。五を四で割った値(二一五%)に倍率をセットすれば正解。生徒は「コピーの法則」が実感できる。「直観と現実のギャップ、仮説と実験結果が一致する楽しさが学びの動機づけになる」。実験する数学の提唱だ。

実生活の問題解く
新学習指導要領は「自ら考え課題解決能力を育てる」ことを狙いとし、総合学習もこうした観点で行うよう求めている。分科会では総合学習に数学的思考をどう組み入れるかも議論になった。
広島県の小学校からは、五年生の特別活動「コメづくり」の体験学習で、算数と関連させた授業例が紹介された。学校のプランターで栽培した稲を脱穀した重さと、モミを取り除いた玄米の重さを記録。近所の農家が収穫した稲のデータを比較し、どちらがよく育ったかを話し合うことにした。
クラスの稲を脱穀したときの重さは六十グラム、玄米は四十八グラム。農家ではそれぞれ四十グラムと二十八グラムだった。モミの中で育った玄米はどっちが太っているか---。ここで算数の「割合」が登場する。脱穀量と玄米量の割合を計算して、多いほうがよく熟している、という理解を導くことがポイント。数学が実際の問題解決に役立つ、という感覚を学習の動機づけにしようとする試みだ。
ただ討議では、「総合学習は、既に獲得した教科の知識を問題解決の道具として用いるもの」との声があった。総合学習で数学的思考を「養う」という発想は、かえって教科の指導目標をあいまいにする危険性があるという意見だ。
領域の壁を超えてこれに対し、「子どもの頭は教科で仕切られてはいない。異なる領域を行き来する指導をどの授業でも心がけることが重要」との指摘があった。
「二本の直線の交点が連立方程式の解であることを理解している大学生は少ない。それは方程式は代数、グラフは幾何の単元で教え異領域の知識を総合する指導が不十分だったから」という反省も聞かれた。
分科会では、一昨年の東海村の臨界事故で旧科技庁が公表した被ばく線量のデータからどんな法則性が読みとれるかを課題学習した高校教師の実践が紹介された。「被ばく線量は、ほぼ発生源からの距離の三乗に反比例する」との分析をもとに、行政の住民に対する避難指示の妥当性を考えるという高度な内容を含む学習だ。
文部科学省は、総合学習のテーマとして国際理解、環境、情報、福祉の四つを例示。学校現場では、保護者に受けのいい英会話などを導入する動きも広がっている。総合学習にどう数学的思考法を持ち込むのか。試行錯誤が続く。

2001/2/2/金