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かわいい子には手伝いをさせよ


「かわいい子には手伝いをさせよ」−−教育専門家の問でそんな意見が強まっている。小中学生を対象にした調査によると、家で掃除や食器の片付けもしない子供が増えている。これでは生活体験が乏しく頭でっかちになる、という心配からだ。母親たちの会話の形をとり、手伝いの現代的効用について考えてみた。

60%が掃除もせず
母親A
米国の高校に一年間留学していた娘がしみじみと言うの。「ママは私に甘いね。向こうの親は、子供に掃除、洗濯から食事の準備まで分担させるのが当たり前だったよ」と。確かに私は娘に家事をさせてこなかった。
母親B
日本ではどこの家庭も似たり寄ったりじゃないの。川村学国女子大学教授の斎藤哲郷氏が昨年、小中学生に調査したところでは、家の掃除を手伝っていない子供が六○%もいたそうよ。十一年前の調査に比べて二一ポイント増えていた。食事の片付けや買い物もしなくなっている。
母親C
布団の上げ下ろしだって二人に一人は親任せ。自分で着る服を母親に準傭してもらっている中学生も七%いたのよ。
B ふだん身の回りのことさえ自分でしていないから、学校の修学旅行やキャンプで、きちんと食事したり寝たりできるか、不安がる子供が増えているとか。体は大きくなっても、ひ弱な感じだなあ。
A ただ、そうは言っても、子供に手伝いをする余裕がなくなっている事情もあるのよね。現代っ子は塾やスポーツ教室などで忙しい。一生懸命に勉強しているのを見ると「掃除を手伝って」なんて頼めないもの。勉強は後でいいからと、はっきり言える勇気がなくて・・・。

意図的に作る手も
C 親も仕事やら何やらで時間がない。手問暇かけて家事を教えるより、つい自分でやってしまいたくなるのが本音ね。旭化成工業の共働き家族研究所が九四年に調査したところでは、九割以上の親が手伝いをさせたいと思っている。でも余裕がなくて、ずるずるといってしまうんだって。
A 肝心の、手伝ってもらう仕事がなくなってきたことも大きいよね。買い物も週末にまとめてするし、洗濯は全自動だし。
B だけど、東京国際大学教授の詫摩武俊氏は「手伝いの教育効果は大きい。意図的に作り出してでもやらせよう」と強調している。
A どういうこと?
B 例えば、小学校三年生くらいなら、旅行に行く時に新幹線などの切符を買ってきてもらうのはどうかしら。駅の自動販売機ではなく、みどりの窓口で職員と話しながら買うようにする。初めてだと子供は不安で胸いっばい。けれど、できたら大きな自信になるということ。
A ゴミを出したり玄関から新聞を取ってきたりするような、親の使い走りとはちょっと質が違う……。
B  そう。幼稚園の子供だったら、いつも飲んでいる牛乳と同じパツクのものを近所のコンビニで買ってきてもらう。もちろん自動車には気をつけて、安全なルートを親が教えておく必要があるけれど。こんなふうに年齢に応じ、工夫を要する課題を与えて、出来た時に思いきりほめてやる。子供は家族の役に立ったと手ごたえを感じるわ。家族にとって自分は欠かせない存在だと思うことが、前向きな生き方にもつながる。
A 親からすれば、やはり面倒だなあ。仕事を考え出すのが大変だし、子供が失敗したらお金や時間が損する。
B しんどいけれど、日曜日とか、時間がある時にやってみる価値はあるね。今の子供に一番欠けているのはそういう生活面のたくましさ、生活力だから。

父親の参加欠かせず
C 手伝いをした報酬としてお金をあげるのはよくないそうよ。むしろほめて、きちんと認めてあげる方が子供の心に残る。なんでもお金のご時世だからこそ、無償奉仕の喜びを体験させたい。手伝いにはその意味でも教育効果がある。
B 欧米では、金銭管理を学ぱせるためにお金を渡す家庭が多い。それも一理あるけどね。
A 恵泉女学薗大学教授の大白向雅美さんは、忙しい子供たちをこうした手伝いに引き込むためには父親の家事参加が欠かせないと話している。それから少しでも早く始めるのが大切。中学生になると,思春期で自分のことで頭がいっぱいになり,家庭での役割なんか考える暇がなくなるそうだから。
1996/10/9/水 掲載記事