理不尽だが、従わなければ泣きをみる。こんなおきてが学校でも幅を利かせている。教師間では通用するこのおきて、世の中の感覚とずれていることも少なくない。学校不信が叫ばれ、先生自身も変わらなきやいけないはずだが、このおきてがネックになっている。
その一 先生は一国一城のあるじ。クラス内のことは同僚/先輩も口を出すべからず
「職員室では自分の担任クラス外の生徒のことに口をはさむのはタブー。特に生徒指導の方法が問題で、体罰の是非などが絡んでくるとなおさら」と、都内の区立中学校の英語のA教諭。以前、職員室に忘れ物を取りに戻った際、他クラスの担任が机に足を投げ出して生徒をどなりつけているのを目にした。横目でうかがうと、生徒のほおは赤くはれあがっている。この時は授業の途中だったので場を去ったが、学年打ち合わせの時にその担任に問いただした。すると、若い担任はクラスの生徒指導は担任の権限で、他人が口出しすることではないと反論、険悪な雰囲気が漂い
出した。二人を囲む他の先生は「なぜあんなことにいきり立っているの?放っておけばいいのに」と白けていたとA教諭は語る。後日、学年主任が「あなたの言葉は正しい。先生には個人的に注意しておいたから……」と耳打ちした。
その二 一年目でもベテランでもみな”先生”
民間から教師に転職した人が口をそろえて指摘するのが「先生」と呼び合う不自然さ。区立中学のD教諭もこの習慣になじめない一人だ。「学内だけならまだしも、外で食事していても〃先生〃。かつて、さん付けで呼んだら浮いてしまい即、中止した。新人もベテランも同じ〃先生〃、生徒や自分より年上の保護者からも〃先生〃。この呼び方が教師独特の世界をつくっている面はあると思う」と言う。
校長から研究会に出席してくれと頼まれた新人教諭が、「嫌だ」と断るのも日常茶飯事。仕事に関する上司の依頼や指示を断るなど、民間ではまずないだけに戸惑った。が、「下手に校長からの申し出を全部引き受けると今度は『あいつは管理職狙いだ』なんてうわさされたりする」。D教諭は、お手上げ状態だ。
また、外部からの電話に対し「XX先生は今、お留守です」、などと対応しているのにも驚いた。民間企業では身内に尊敬語をつけるなど、非常識のそしりを免れない。「あんな言葉遺いをする教師が生徒に敬語を教えているのかと思うと。学校は世間の常識が通用しないところとはよくいったもの」と自廟(じちよう)気味のD教諭だ。
もちろん、学校によって状況は異なる。でも、ある教諭は言う。「教育者は人格者であるというイメ−ジがいじめなどの表面化でくずれ,批判の矢面に立たされている。が,この批判を新鮮な気持ちで受け止める教師もいる」。民間との人事交流や,父母が積極的に学校教育に口を出すことで,門戸開放を進めることが必要だろう。
その三 スタンドプレ−はご法度,足並みをそろえることこそ大事
高知県の小学校。B教諭は学習が遅れ気味の生徒のために放課後、補習クラスを設けた。また授業では独自の補助プリントを作成した。
しかし、これに他の先生からクレームがついた。B先生は時間があるからいいが、やりたくても忙しくてできない先生に不熱心のレッテルがはられかねないというのだ。忙しいのは皆、同じ。家に仕事を持ち帰らない日はほぼ皆無だし。それなのにこんな文句を言われるとは」と嘆くB教諭。
同じように、東京都の小学校のC教諭もプリント作成を中止せざるをえなかった。「もちろん面と向かってやめろ,とは言わない。でも『いいよね、独身者は…・』みたいに言われ、プレッシャーをかけられる。気にしなければいいのだが、頻繁な異動のない職場だけに円満な人間関係は重要。従わないと、自分が欠勤した時にクラスの面倒を見てくれないなどのいじめの対象になりかねないし」とため息まじりだ。
1996/9/4/水 掲載記事