平成8年8月21日(水) 薄曇り
旭区公会堂にて
教育委員会挨拶 中村指導主事
委員紹介
算数科部長挨拶
次代を担う子供たちにとって必要な力は,自ら学び続ける力である。この力を伸ばすために算数科ではどのようなことができるのか問い続けている。
これまで子どもと教師の関係を,「教わるものと教えるもの」という関係でとらえていた。これを「学ぶものと支えるもの」という関係としてとらえなおしていく。
この考えのもとに次のテ−マを考えた。
市算数研究会のテ−マとして,「自ら学びつづける力を育成する算数科学習指導」があり,そして,教育課程のテ−マとして「自ら問題を見いだし,追求する子を育てる支援のあり方」を考えた。
昨年度は,次の視点で提案を行った。「指導と評価の一体化」「論理的思考力や直観力を育てる」「表現力を育てる」「数学的な考え方を育てる」。今年度もこの視点を継続するが,「自ら学ぶ目標を見いだしてそれを実現したいという気持ちをもち,工夫して解決していくことに喜びを感じ,その過程からさらに自ら目標を見いだし,問題解決を継続していくことのできる子ども」という姿を期待し,上記の「自ら問題を・・・」をサブテ−マとした。
では,このサブテ−マの文を3つに分解し,それぞれの言葉に定義付けをしたい。
「問題を見いだす」とは
子ども自身が何故だろう,どうするのだろうと,というような解決への関心や意欲がもてるような学習を展開するために学習問題を教師が与えることから,子どもが自ら見いだすものへと考えを変えていかなければならない(援助から支援へ)。
この問題を見いだす行動は,単元の始めにその単元全体を見通すときや,導入の段階で設定された問題場面から問題に気づくこと,学習の途中,振り返り,終末の各段階で必要だろう。
つまり,「問題を見いだす」とは,活動を通したり話し合いを通すことにより何らかの問題に気づき解決するべき「問題」へと高めていくこと,と考える。
「問題を追求する」とは(1−2参照)
見いだした問題を解決する過程で,よさを発揮し,自ら考え,判断し,自分の解決をよりよいものに練り上げていく,こうした姿が「問題を追求する」ということである。これは,自力解決の場面では「どんな既習事項が使えそうか」「他のやり方はないだろうか」「図や式で説明出来ないだろうか」という形であらわれ,共同思考の場面では「共通する考えは何か」「いつでも使える考え方か」,そして学習後の場面では「学習したことはどんなことに使えそうか」「もっといい方法はないか」「どんな問題が新しく見いだせたか」という形であらわれる。とくに学習後の場面でのそれは,絶えず問題をとらえ,問題解決の過程を継続させるためのきっかけをつくる大事な場面でもある。これが単位時間での「追求」するということである。
単元全体においての「追求」を考えると次のように考えられる。導入で見いだした問題から学習計画を立てるという行動,対象の範囲や場を広げようとする行動,新たな問題を見いだして問題解決を連続させていこうとすること等である。
こうした,「自ら問題を見いだし,追求する」活動を通すことで解決の喜びを味わい,自信をもって主体的に学ぶ力を身につけて学び続けていくことができるものと考える。
「支援」については次のように考える。
導入の段階では,自分の既習事項や経験と結びつけて自分で問題を見いだしたり,提示された問題であってもそれを自分の問題と受けとめられるように支援する。展開では,弾力的な展開を工夫し,関心や考え方などの様々なよさを発揮できるように支援する。子供の考えや感じ方に共感し,その良さが発揮できるように支援する。また,子供どうしが互いに(共感し),互いの良さに気づき,認め合い,学びあえるように支援する。
学習後は自分の活動を振り返られるようにし,自分の進歩がわかるように支援する。今までの学習と関連付けられるように支援する(これからの学習を発展させられるように支援する)。また,学習したことの良さがわかるようにするとともに,新たな問題を見いだそうとするような支援をする。さらに,望ましい学習態度を育てることにより,主体的な学習ができるように支援する。
ここで,支援と指導は対立するものではないと考えている。学習活動のなかでは,子供と教師のそれぞれの立場で主体的な活動を大切にする。教師は,子供の反応を待っているだけではいけない。
支援について研究している2つの学校の考えを紹介する。
藤の木小学校の考え方は,「自己実現を図ることができるように支えていこうとする教師の関わり」である。
豊岡小学校の考え方は,「学ぶ児童に寄り添って下支えすること」である。そのためにも,まず,児童を知ることが必要と考えている(渋谷先生言葉)。
いずれにしても,全ての児童の考え方を認めていくところから,支援が始まる。教師は,子供と同じ視点にたつことが求められるだろう。教師も子どもとともに考えていくのである。
<事例について>(以下はメモ程度,詳しくは資料を参照すること)
支援とは,自己実現を目指す子供への教師の主体的な活動,と考える。
自分のできるところから多様に考えていく,その対応
不完全な問題については,3年のひまわりの種の問題。種の数がわからない場合
6で割る問題から,6で割れない場合の問題で,問題を深めていく
正三角形を敷きつめる問題から高く計の問題へ,子供の活動を展開
誤りやすい例の提示の例として,事例4
(1−5ペ−ジ)弾力的な展開
子供考え方に共感
(1−7)
事例5
ある子のこだわりをみんなで取り上げる
予定の展開とは異なっても,その子のこだわりを取り上げ,みんなで考えていく
(1−8)
それぞれの良さを認めていく:6年の場合の問題
どれが一番良いかということではなく,どの考え方もその良さを認める
学習後の感想,考えのあとを振り返るよさ
(以上 高倉教諭の提案)
(以下 道の下教諭の提案)
運動場の混み具合の問題
子供の疑問やつぶやきを取り上げる問題の場面としての例
ひき算で考えた子供に対する支援
事例2
発想を的確に捉え,問題を捉えるように教材化する
ジオボ−ドで三角形をつくる操作を通して三角形の特徴をとらえる
子供の次の課題として,できた三角形の性質を調べてみよう
事例3(1−14ぺ−じ)
間違いを取り上げ,思考に揺さぶりをかける
平行四辺形の問題をとり上げて
面積を求めるのに,ある考えを否定するのではなく,なんとか使えないかと改善をしていく。間違いやすいことをとりあげることで揺さぶりをかけたり,軌道修正できないか,そう考えた。
操作の過程で,長方形とは面積の求め方が異なることに気がついた。
事例4(1−17)場面を設定して子供が問題を作る
1年 引き算の場面
(1−18)に考え方が集約される過程が授業記録の中に見ることができる。
13−8で,13を10と5で分ける考えを話し合っている。ただ,どの子の考えも認め計算しやすい方法をとれるように,と考えたが。
(以下 成田教諭による提案)
事例5 5年の小数の問題
導入の問題から学習計画を立てたり,毎時間の学習後に対象の範囲を広げて問題解決を連続していく。
指導講評(日高先生,石川先生)
子供が何を考え,何をしようとしているのかを見定めることを考えてもらいたい。
分からないから分からないままで良いというのではない。そういう子供は現実にいるのであって,その子がどういうところがわからないのか,よく見定める。自分のできるところまで戻ってみる。できるところとできないところの違いを意識させることからどこが分からないのか気がつくのではないか,そういう支援があってもよいのではないか。
学習したことを使って次にどういうことができるか,という学習を発展させる(学習を開くとも言う)ことができるだろう。そういう学習のまとめがあって,次に今日はこういうことができそうだと感じる子供が育つのではないか。
子供が自ら問題を本当にしているかどうか,再度考えてみたい。生きる力というのは子供が自己実現していくことなのでだが,どうしたらいいのかな,困ったな,と感じることも自己表現であろう。そういうときには,問題を明確にしてあげることが支援になるのではないか。今日の問題はこれまでとここが違うと気がつくことも,自ら見いだした問題ではないか,と思う。
学習態度というのは,学習の仕方でもあるが,今日はこういうことをするんだな,と気がつくことで学習態度が形成されるのではないか。追求する子を育てる。やろうとする気がでないと意欲が出ない。興味,関心があれば意欲がわいてくる。子どもには(というより,人間には,と言ったらよいか)こうなりたい,こういうことをわかりたい,という気持ちがあるわけで,そういう意欲の高まりが出るとよい。高まるということが,追求する姿が育てていく。「自ら」ということだが,自分の力でなんとかしていこう,自分の持てる力で,自分のアイデアで解決できるように保証すること。それを積み上げることによって自信に繋がっていくのではないかと考える。
解決できたらそれを伝える,ということ。「表現」になるのだが,それを考えることも大事。また,解決をみた場合も,別の考えでやってみようとする,その積み上げが自ら学習していく学習態度の形成につながるのではないかと思う。
練り上げの場で,それぞれの考えを出し合いながら高め合うということだが,その場で,いろいろな考えで解いたり,別の解き方で解いている場で自信が生まれる。教師はそれを認めてあげる,よいところをアピ−ルしてあげる,子どもは,自分の考えと比べながら認める態度を育てる。
たとえ,正答を得られなくても,また解法がよくなくても,子どもが気がつかない良さというものがあるはずで,それを認めてあげる。
一方では,教えなければいけないこともあるはずだが,それについての指導は今後の研究でもある。
気を付けてもらいたいのは,子どもが発表するときに,自分の解決の結果を言っているのか,解決への手順を言っているのかを見極めることである。そして,何故,そのような考え方をしたのか,その考えの良さはどういうところなのか,等を明らかにする。聞くほうの児童も同じで,「いいです」と言ったとしても,「結果」がいいのか,「解決の過程(手順)」がいいのかを見極めないといけない。そのうえで,どうしてその考えをするといいの,という投げかけを教師がしてあげる。「こうするといいと思う」とか,「こういうわけでこうするといいよ」というようにである。こうした解決の根拠が明示できるように支援してあげることが教師の役割の一つでもある。子供が気がつかないことに目を向けさせてあげる,そういうことで高まりが見られるようになるだろう。
子どもと教師のコミュニケ−ションの場と時間を,遅れている子にも進んでいる子にも保証してあげることが必要であろう。
12時11分 一日目終了
平成8年8月22日(木) 晴れ
教育課程 2日目 9時30分〜
ティーム・ティーチング(以下「T・T」)についての提案
研究チーム 傳 満恵(原 小学校) 田中 精一(南太田小学校)
石川 和彦(杉田小学校) 宮坂左絵子(下野庭小学校)
石川和彦先生提案
横浜市では現在124校にT・Tのための教員が配置されている。この中で半数を超える学校で算数のT・Tを実施している。ここでは次の事項を今日,提案する。
T・Tのねらい
実践例
T・Tを実施するための手順
T・Tのねらい
「個に応じ,個を伸ばす」
ポイントは個に応じる指導をしているか,ということ。
一斉画一的な指導から抜け出す
学級の壁を取り払う,もしくは低くする。
教師それぞれの特性を生かす
T・Tの形態 5つの型
同一学級内でのT・T
ア 習熟の程度に応じた学習……基礎・基本の定着を図るのに有効
イ 興味・関心に応じた学習課題の選択……学習課題を子どもに選ばせ,学習課題毎に指導を分担
学級の枠をこえた学習集団……異学級間の子どもの交流,高めあいが見られる。教師の特性,経験,個性を生かすことができる
ウ 習熟程度……それぞれの学級での全体指導を通した後に習熟度に応じてグループ分けして指導
エ 興味・関心に応じた学年T・T……学習課題を子どもに選ばせ,学級の枠をこえて複数教師が指導を分担
オ 体験的な学習において……体験学習,実験・観察等で有効
※ 算数の場合は学年内が思い浮かぶが,学級内,もしくは習熟度が考えられる。
実践の注意
● 意志の疎通を図る:共通理解が必要,教職員の配置,実践教科,実践学年
● 教師の役目をはっきりさせる
● 子どもの様子をよく理解するようにつとめる
● T・Tの意味を子どもにも伝え,理解してもらう
● 学習環境を整える
● 保護者の理解を得る
算数科でのT・T実施のステップ
● 指導計画・指導案の作成
○ 年間指導計画作成→単元指導計画作成→各時間の学習指導案作成
○ 充実したものにするには,学習の流れ全体にわたってチームで進める
○ 子どもが主体的に学習できるように指導計画を見直す
○ 何年のどの単元をT・Tで行うか,年度始めに計画を立てる。
○ 単元の指導計画作成段階では,T・Tを生かせるように指導計画を見直す
○ 指導案作成について:課題,授業の流れ,主要発問とその意図及び評価について共通理解を図る。また,担当教師の役割分担を明確にする。枠組み(展開案を表形式で作るとして,上の段にくる見出しのようなもの)としては例えば,左から「ねらい」「学習活動と予想される反応」「T1の支援と留意点」「T2の支援と留意点」「評価」等が考えられる。T・Tでは,複数の教師が役割を決め,同時進行で授業を進めるが,その流れがわかるような展開案を工夫されたい。
● 教材・教具の事前準備もチームで行う。
学習プリント,具体物,ビデオソフト,パソコンの設定やパソコンソフトの用意,掲示物,測定用具
● 授業では
○ 予想外の反応に対して臨機応変に柔軟に対応
○ 子どもの学習の様子を見ながら,問題把握,自力解決,共同思考,練習の時間配分を調整
○ 複数の教師から認められた,励まされたという経験を多くもたせる
● 評価と反省の段階
学習内容の習得状況,興味・関心の高まりの様子,個人の学習状態を複数の目で見取り,反省と評価をチームで行う。
「指導についての評価」は,自己学習力を育成したか,個に応じた指導をし個を生かすことができたか,教師の役割分担は適切であったか,教師の指導や支援は適切であったかを評価し,次の指導を改善する。
事例について (資料2ー10〜) 宮坂先生提案
事例1 4学年 「変わり方調べ」 自力解決の充実をめざすT・T指導
子どもの学習状況を細かに把握することが出来る
学習段階の各段階で役割を明確にして行う(事例)
前時の学習の復習で,T・Tが支援
前時の実態を元に,個に応じて指導
具体操作 補助プリント
具体操作→表に整理
掲示物で復習
具体物→式化
授業後の感想(児童):満足感,充実感が見られた
事例2 6学年 「比と比の値」 少人数のグループ分けでの指導
学級を2つに分けて少人数での指導すると,発表が増える,成功体験が増える,共感が多くなる,支援しやすい,個に目が届くと,といった利点が認められる。
2つ(以上)のグル−プに分ける場合,多様な考えが生まれる集団,学びあいが生まれる集団になるように分けたい。
「多様な考え・・」には等質集団にする。「学びあい・・」には人間関係を留意する。分ける場合,「発表しやすいので,たくさんの考えが出るように,そして発表から友だちのよいところを学び学びあうことができるように」と伝える。そのうえで教師がこの視点をもとに2つ(以上)のグループに分ける。
学習指導案の工夫
学習指導案への書き込み:ねらい,学習活動,支援,評価の項目を話合いながら作成
各子どもに対する支援,発問を記述
少人数での学びあいの時間を設定し,全体の学びあいへの準備をする。
事例3 4学年 「四角形」 パソコンを併用した事例
パソコンを使うメリット
ア 手作業よりはやく正確に作図できる
イ 一つの図形だけでなくいくつかの図形を調べることにより帰納的に学習できる。
ウ 入力した図形の変形ができるので四角形の相互関係をつかめる
エ 対角線の長さ,対角線の交わり方を変えることで四角形の見方を深められる
問題解決をするための道具の一つとしてパソコンを利用する。従ってパソコンを使うかどうかは子どもの考えによるのであり,パソコンを使う子どもは当然,目的をもってパソコンに向かうことになる。その際に,パソコン操作を支援したり,助言したりする教師が必要になる。そこで,この学習はパソコンによる学習を支援する教師と,プリントや他の道具を利用した学習の支援をする教師とに役割を分担して進めることになった。
今後の課題
以下のことを学校全体として考え,取り組んでもらいたい
● T・Tの意義,目的,形態について職員全体が理解を深める
● 担当教師と学級担任教師の打ち合せの時間を確保する
● T・Tのねらいを中心にT・Tを組織する
● 学級T・Tや複数学級T・T,学年T・Tを試みる
● 学習環境を整える(教材,教具,教室,活動できる空間の場,校内の人材やボランティアの活用)
● 保護者の理解と協力を求める:保護者への啓発活動
討議
Q 佐々木先生:打ち合わせの時間をどのように確保しているのか
Q 内藤先生 :多くの方が経験することが大切ではないか。
A 豊岡小学校 渋谷先生
少人数に分けるタイプを実践している。できるだけ多く報告しあう工夫している。子どものノ−トを提出してもらい,コメントをかき,子どもの考え,良かったことを小黒板にかく。話し合う時間のことよりも話し合う材料を多くするように気をつけている。
A 希望が丘小学校 斉藤先生
全校にわたって指導をしている。その学年の指導にかかる数週間前に指導案を担任,学年に渡す。質問は学年研究会で。学校内にT・T指導委員会を設置して各学年から参加してもらっている。
A 下野庭小学校 宮坂先生
学年近くに机を設置し,担当教師と学年担任教師の交流が増えるようにしている。
A 南台小学校 南部先生
学年研究会で次の週のことを話す。短時間で担任と相談する(授業開始前の5分間,教室に向かうときに廊下で)。できるだけ子どもの様子を知るために子どもの活動に参加するようにしている。2クラスで3人の授業も試みた。
Q 落合先生:以前にもT・Tの研究が行われていた。その時も,人間関係,時間の問題,専科になりがちということが話し合われた。しかし,T・Tは時代の要請。T・Tをきっかけに,学校全体の取り組みをどうするか,を考える。学年をうまくつかえないかと考えた。学年のチームとしてのあり方,組織の中での位置づけなど。「指導の個性化」はあっても「学習の個性化」は無い,と本に書かれていたが,先生の特性を生かすという意味で,クロス・カリキュラムも考えても良いのではないか。時間と空間の活用という意味でこれから考えていかなければいけないだろう。
Q 赤崎先生:学年チ−ムの工夫,1学年3クラスを4人でみる,というように。5分の短い時間を使って,担任と打ち合わせをした。略案を毎時間担任に渡して,随時担任と話し合いをもつようにした。学校全体で取り組むことが大事。
指導講評 丸茂先生
「協力教授組織」という名前でT・Tの研究をしているところもある。
講演記録
演題 「T・Tのあるべき姿を求めて」
聖徳大学教授 手島 勝朗先生
話の柱として,「T・Tの意義・良さ」「T・Tの効果的な運用」「T・Tの授業VTRから,分析」「その他」をたてて話をしたい。
T・Tの意義
今回掲げられているテーマの「自ら・・」と「T・T・・」の2つは無関係なテ−マではなく,必然的なものである。T・Tは授業様式である。学ぶ力,見つめなおす力を育てる授業様式である。学ぶ意欲を培っていく教材をどう見るかに主眼がある。
T・Tの意味であるが,求めるところは,ひとつである。学級担任教師とT・Tの違いは何かというと,複数の教師で見たほうが,子どもの実態を捉えられやすいということである。
一番目は,ああいう反応があったのに何故取り上げられないのか,ということが減るのではないか,ということである。子どもの反応を取り上げやすくなる。こういう例がある。分数の割り算で,「4/5 ÷ 3 =1/5+1/5÷3」と考えている児童がいたが,授業をしていた教師はこの考えを見過ごしてしまった。この子は,1/5を3等分するという事に目を向けていたのであり,授業を見ていた私はとてもよい考えだと思った。T・Tにより,こういったよい考えを見逃すことがなくなる。また,授業する教師がかわると子どもの学習態度がかわることがある。クラス替えをすることで子どもが変わることがあるのと同じだろう。人間と人間との相性というのがあるので,T・Tはこの点でも意義がある。
二番目は,子どもの内在している能力を開く,ということである。内在する能力が何かをきっかけにして開くことがある。
私が飛び入り授業をするときがあるが,その時に担任に何も書き込まれていない座席表を求める。この子どもの特徴はこれこれ,というようなことを一切書かれていない,名前だけの座席表である。さらに,私がこうして授業する最大の目標は先生で,その授業のなかで横から子どもを見てもらいたい,と担任にお話をする。普段活躍しない児童が活躍することもあるからだ。その授業のなかでは,ほとんどの場合,子どもが生き生きする,という反応が見られる。
三番目は,教師間の学びあいもT・Tの良さであろう。T・Tをやることによってゆとりが生まれ,子どもの反応をとらえたり,もう一人の教師の動きを見て学ぶこともできる。T・Tを日常的なレベルでの授業公開と考えれば,教師間の学び合いができる。教師は,子どもに学び,教師に学ぶ,ということを通して技量を高めることができるのである。
学習したことを定着する時間を持つが,そのとき,遅れている子に目が向きがちで,進んでいる子に目を向けられないことが多いが,T・Tによって,打ち合わせをして,多くの子どもに目を向けることができる。
教材を見つめる目,というのはどうしても必要である。例えば,「通分」の教材があるが,教科書の取り上げ方を見ると「解法の良さに目を向ける教材」,「通分を使って三角形の仲間分けをするという教材」がある。しかし,教師としては,教科書には一番大事なことが書かれていない,そういうことをまず認識することが必要なのである。「通分」という題名,それと「問題」の間をどう読み取るか,それが,問題追求のポイントになる。
既習事項をやってもっと別な問題ができないか,ということから入るかもしれない。そうすると,違いを明確にしなけれけない。
それから,作った問題,道具立てを一気に与えてやる方法もあるし,少しずつ与えて展開する方法ある。例えば,ストロ−を使って三角形を作るという教材で,教科書に書かれているような内容を一気に与えると情報が多すぎることもあるので,少しずる与えるほうが考えやすいのではないかと思う。
T・Tの効果的な運用について(新潟県の新井小学校での実践を通して)
特定の学年にすると係わる教師が限定されてしまうので注意。T・Tが必要とされる学年は特定できるものではない。そういう潜在的な疑問点から,全学年,全学級によるT・Tへ。学期毎に重要単元を学習。T・T教諭と担任が相談して,4月は何年,5月は何年というように,T・Tが学年を通して渡り合うということを考えた。
課題別,個人,能力という型を考えた。これから,二進型(2人の先生が協力する型で,打ち合わせの下,役割分担をする),一進一補型,二別進度型(2人の先生が別々に授業を進める型)の3つ考えた。このうち一進一補型では,係わる先生が同等の立場で授業を行うということがポイントである。
しかし,T・Tのスタイルはいろいろある。横軸として教科,学年を,縦軸に個人を考えた場合いろいろなスタイルが考えられる。
2人の教師が係わる場合に,1+1が1.5くらいになればいいのではないか,という気持ちでやらなければT・Tに取り組めないだろう,と新井小学校では話し合った。また力のある先生がやる気をもってできる学校にしなければT・Tは定着しない。
授業のVTRを見て,T・Tのありかたを話してみたい。これは,2年生の「ナンバリングの問題」の授業である。
導入で,「算数の歌」を歌う。これは音楽の先生にお願いして作ってもらった。このように他の先生にも協力してもらっている。
教師が問題を板書,児童にも書くように指示。「子どもが4れつにならんでいます。まさこさんは前から8ばんめでうしろから7ばんめです。」
問題の提示だが,模造紙に書くことも良いのだが,途中で板書を止めたりして子どもに状況を考えさせることもできるので,板書を勧めている。
とここまで書いて,その続きを子どもに作らせて発表させる。
発表であるが,話すだけが発表とは考えないで,立つなどの行動も発表と考えている。ビデオでは,「同じ考えの人は座っていいよ」。
子どもに板書の続きを付け足させながら発表。同じなら座っていいよ,と指示。
多くの子が「合わせて」と言ったが,ある子(及川君)は「違いは」と言った。こうした,違う反応をどうするか,である。
こうして問題を作りましたが,ここまでが,二進型ならT1の役割ですね。
この後,自力解決に入り,児童が紙を(メモ用紙)教師に提出する。
次いで板書,「みんなの・・・」。
予想された反応が出ない場合,教師がその反応をしたという子になって提示すればよい。「みんなのこたえ」として,「ア 16」,「イ 15」,「ウ 14」,「エ わかりません」,と板書する。
子どもの発表で,「及川」君の発表を取り上げた。先生は,実際はこの子の言っている意味がよく分からなかったと言う(会場 笑い)。次に,「どうして15になるのかわからない」という児童の発表がある。
ところで,教師の発問の意図と子どもの解釈の間にずれが生じるときがある。ビデオに出ている子どもの反応は7+8がどうして15になるのか,という説明になろうとしていて,これは授業者の意図した反応ではなかった。(この場面を見て会場,笑いに包まれる。そして,講演者の言葉,「授業って難しいですね。」)
16人と反応した児童の発表(ビデオ)。8+7=15 まさ子さんを入れて16人。
子どもは発表しながら考えを変えていくのです(ビデオでは発表操作している児童が少しずつ考えを変えていっているが代わりの考えが思い浮かばなくて困っている様子を映している)。
さて,ふつうは練り上げの時に具体物をから入るのだが,ここでは,観念から入り,図,物という順で進んでいる。物に入るとき,教師が,黒板の前にさりげなく磁石を置いておいたが,それを児童が何気なく使ってくれた。(これも教師の作戦なんですね,と。ここでも会場の中で笑い)。ここで,色分けしたので教師が「すごいね」,と褒めたら,児童はもっとあざやかな色を使い始めた。
ところで,14人の説明と16人の説明が対立している。そこに「及川」君が発言を求め,黒板で操作をする。「もし,15だとしたら・・・」と,成り立たない例を提示している。他の子は「14になる」根拠を言っているのに,である。こうした,成り立たないという根拠を言える「及川」君が凄いですね。
次いで,積み木を配って確認の操作に入る。最初に与えなかったのは,数えてしまうからである。視点を定めて具体物を与えることが大事,いつも具体物からというのはどうか,と思う。
最後に,2人3脚の前の学習を取り上げて生活の場に広げた。
(ここで,ビデオによる話は終わる)
より良い様式を追求するためにもT・Tを考えてもらいたい。
お礼の言葉 菊池先生 南瀬谷小学校長
終了12時20分