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授業改革のポイント


文部省初等中等教育局教科調査官

北 俊夫


これからの学校づくりの基本的課題


これからの各学校においては,学校運営の主体性,自律一性を確保し,子どもたちが確かな学力を身にづけるとともに,特色ある学校づくりを実現していくためには,校内で共通理解を図り,共通実践を進めていくことが何よりも重要である。
各学校においては,本年度移行措置要項にもとづいて,各教科,道徳,特別活動の年間指導計画を作成し,実施している。また多くの学校では,「総合的な学習の時間」を教育課程に位置づけて何らかの時間を設定して実践を歩みだしている。
これらの授業では,2002年度からの完全実施に向けてスムースにテイク・オフできるよう,いまからできることとできないことを明確にしたうえで,できるところから新学習指導要領の趣旨にもとづいて実践に移すようにしたい。
ここでは,まずこれからの学校において求められる課題について整理する。これらの視点から,教育活動の改善を図っていく必要がある。以下,検討課題を列記してみる。

○学校として,また教師一人一人が,地域の特色やよさ,子どもの実態や課題などを適切にとらえているか。(実態の把握)
○これまでの校内運営組織に無理や無駄はないか。教師一人一人の持ち味を生かし,校務が効率的かつ効果的に運営されるよう有機的な連携が図られているか。(機能組織としての活性化)
○これからの新しい学校像,授業像を共通理解するとともに,学校改善,授業改善のための具体的な視点が明らかになっているか。(授業改善の方策)
○保護者,地域住民と意見や情報等を交換し合うなど,地域と学校との双方向のかかわりがもてる場があるか。(地域との新しい連携)

各学校がこれまで以上に主体性,自律性を発揮するためには,校長のリーダーシップとともに,校長を中心にした教師集団のチームワークが必要となり,それは教師一人一人の確かな見識と指導力に負うところが大きい。これからは,それぞれの学校がプロ集団としての力量をどのように発揮しているかが,とりわけ地域住民から厳しく注目されることになろう。
なお,各学校が教育活動を決定する際には自己規制が必要であり,それらを実践したことには自己責任が伴うことになる。その責任者は,各校長である。

教科等の力をつける授業の改善


(1)総合的な学習を保障する教科等の力

いま各学校や先生方の関心事が,総合的な学習に集中している。教科書がない,まったく新しい教育活動を,各学校においてつくっていかなくてはならないだけに,ある意味では当然のことであろう。ここに各学校の最重要課題があることは言うまでもない。
しかし,この時期に総合的な学習のみに関心やエネルギーが費やされていいのかという問題や疑問が出されている。「教科の力,教科の基礎・基本は大丈夫ですか?」という声が,校内外から聞こえてきそうである。
総合的な学習の時間には,子どもたちが各教科等の学習をとおして身につけた知識や技能,能力などを関連づけたり総合化したりしながら,学習を深めていくことが求められている。ということは,各教科等の力をしっかり身につける指導の充実なくして,総合的な学習は成立しないということであろう。
もちろん総合的な学習に取り組むことによって,教科の力が確かめられたり改めて身についたりすることもある。教科等と総合的な学習は,子どもの学びの両輪として,互いに相乗効果を発揮することは言うまでもない。いずれにしても,総合的な学習にとって教科の基礎・基本をしっかり身につけていることは必要な条件なのである。

(2)これからの授業改革の新しい視点
一10のポイントー
教科等の力を身につけるための,授業改革の新しい視点は何か。それは,学習指導要領の総則に示されている「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」の新旧を比べてみると,何がどう変わったかが把握でき,新たな課題が明らかになってくる。それらは,これからの授業づくりにおいて,新しい研究課題であり,実践課題になるものである。ここでは,新しい学習指導要領に強調された事項を中心に,授業改革の10のポイントを整理する。それぞれについて,さらに詳細は『小学校学習指導要領解説総則編』(文部省,65-94ぺ一ジ)を参照していただきたい。

【2学年を見通した指導】
今回の改訂によって,教科によっては,各学年の目標だけでなく内容においても,2学年まとめられている。国語,生活科,音楽,図画工作,家庭,体育の各教科,第3学年及び第4学年の社会科は,目標と内容が2学年まとめて示された。
これらの教科指導においては,各学校において2学年をスパンに目標・内容の実現を図る必要がある。地域や学校の実態とともに,・子どもの発達段階を考慮して,子ども一人一人が効果的,段階的に学習できるよう,2か年間を見通して内容の配分や順序性を工夫する。その際,内容の抜け落ちや不必要な重複があってはならない。このことは,各学校において,易しいものから高度なものへ,身近なものから距離のあるものへ,具体的なものから抽象的なものへなど,子どもが学習したり理解したりする際の原則を踏まえるとともに,学校の置かれている地域の実態や子どもの発達,学習状況などを踏まえて,特色ある年間指導計画を作成し実践するようにする。
各教科の内容は,必要最低限の事項に厳選されており,これらをすべての子どもたちが確実に身につけるようにすることが強く求められている。

【会科的・関連的な指導】
合科的な指導は,従来,低学年においてのみ合科的な指導を行うよう求められていた。今回の改訂では指導の効果を高めるために,これまでも行われてきた各教科相互の関連的な指導同様に,全学年で推進するよう示された。「合科的・関連的な指導」については,次のように説明されている。
・合科的な指導とは,教科のねらいをより効果的に実現するための指導方法の一つである。一つの単元や一単位時間(45分)のなかで,複数の教科の目標や内容を適切に組み合わせて教材を活用して学習活動を展開することである。・関連的な指導とは,それぞれの教科の指導において,各教科等の指導内容や教材,学習活動の関連を検討し,指導の時期や方法などについて相互の関連を図りながら指導することである。
低学年では,特に生活科を中核にして,国語や音楽,図画工作などの教科との会科的・関連的な指導を進めるようにする。また,第3学年以降においても,各教科の目標や内容の関連を図った指導計画を作成して,合科的・関連的な指導を進める。
これまでも低学年においては,合科的な指導を進めることが求められてきた。にもかかわらず,必ずしも十分な成果が見られなかったのはそれだけ課題が多いということであろう。合科的・関連的な指導の充実を図るための指導計画をどう作成し実践するか,小学校教育の全体をとおして推進していかなければならない新たな課題である。
さらに,教科等との関連を図りながら総合的な学習の実践を進めるためには,例えば両者の指導の時期や教材や題材の取り上げ方,学習活動の構成などを工夫して関連的に指導することが考えられる。

【問題解決的な学習の重視】
これからの変化の激しい社会を迎え,また生涯にわたって意欲的に学びつづける能力や態度の基礎を培うことを考えると,子どもに自ら学び自ら考える力を育成することは,これからの学校教育の重要な役割である。子ども一人一人が知的な好奇心や探究心をもって自ら学ぶ意欲を高め,主体的に学ぶ力を身につけること,論理的な思考カや判断力,表現力などの能力を育てることがきわめて重要になっている。
これらは,各教科等の指導において,体験的な活動を組み入れるとともに,問題解決的な学習を一層重視する必要がある。
問題解決的な学習は,子どもが自ら課題を見つけ,自らの学習方法で探究し解決し,一定の結論(答え)を引き出していく学習であり,このような問題解決的な活動をとおして子どもたちは各教科の目標の実現を図るとともに,生涯学習につながる問題解決能力を身につけることができる。そのためには,子どもに学習への興味・関心や問題意識をどう高めるか。子どものなかに潜在化している興味・関心をどう引き出すか。そして,それらを学習のなかでどう生かしながら,各教科の基礎・基本の確実な習得を実現していくかなどが実践上の課題となる。

【学級経営の工夫改善】
教師と子どもたちの間の信頼関係や,子ども相互の好ましい人間関係を育てるとともに,児童理解,生徒指導の充実を図ることができるように,日ごろから学級経営の充実を図る。小学校の子ども一人一人にとって学級は,学校におけるそれぞれの居場所である。一人一人に学習が成立するかどうかの大きな要件である。学級での居心地が快適でない場合には,学校に来ることに楽しみもなくなり,いわゆる不登校への引き金にもなる。また学習が成立しにくい学級になる可能性もある。
学級を子どもにとって存在感のある自己実現の場とするためには,子どもたちが学び合い認め合い支え合いながら学習を展開していくようにする。また,生活場面だけでなく授業においても,一人一人が安心して自分の意思や能力を発揮できるように,日頃から自己存在感や自己有用感を味わわせるとともに,自己決定の場をつくり,自ら責任をもって発言したり行動したりする態度や能力を育てるようにする。これは,すべての子どもにとって,わかる授業,楽しい学校をつくることにほかならない。

【自らの将来を考える指導】
子どもに選択能力を育成する観点から,各教科等の学習場面に,子ども自身が学習問題(課題)や学習活動を選択する場を取り入れる。また自らの生き方を考える観点から,自らも進路や将来について考える機会を設けるようにする。自らの将来について目を向ける機会を設けて,自分のよさや可能性などに気づき(自己理解),自分らしい生き方を考え実現していこうとする意欲や態度を育てるようにする。
そのためには,各教科の指導において,自ら問題意識や興味・関心などにもとづいて課題や問題を見つけ,自分が考えた目的に応じた方法で解決していくことにより,選択能力や解決能力を育てることができる。これらの能力は,将来の生き方を考える際にも生かされる。また自己評価の場や機会を工夫して,子ども自身が自分の成長を実感したり自覚したりできるようにする。自己評価には,自己理解をうながすとともに,新たな課題を意識しさらに挑戦しようとする意欲を高める機能(自己教育力)があるからである。

【個に応じた指導の充実】
今回の学習指導要領では,各教科において必要最低限の内容に厳選されており,それらはすべての子どもたちに確実に身につけることが求められている。そのためには,子ども一人一人に応じた指導を一層充実する必要がある。各教科等において,学校や子どもの実態に応じて,従来の指導方法や指導体制を検討し工夫改善する。
指導方法については,一斉指導のほかに,個別指導やグループ別指導といった学習形態の工夫,子ども一人一人の理解の状況に応じて行う繰り返し指導,子どもが自ら見いだした課題に取り組む学習,教材・教具の工夫や開発,コンピュータなどの情報機器の効果的な活用,指導の過程における評価の工夫などの面から個に応じた指導を充実させることが考えられる。
また,指導体制については,ティームティーチングや合同授業,交換授業など,教師が協力して指導することによって,一人一人の学習状況により手厚くかかわることができるようになる。

【情報手段の有効な活用】
学校において,VTRやOHPなどの視聴覚教材や機器とともに,コンピュータや情報通信ネットワークなどの利用の場や機会が増えている。今後も,コンピュータやインターネットなどの整備が計画的に進められており,これらをどう効果的に活用して学習を展開するかが課題となる。
従来の視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用に加えて,子どもがコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実する。このことにより,教科等の学習効果を一層高めるとともに,情報活用の能力を育成することが求められている。
また,例えば社会科では資料の収集・活用・整理・発信など,算数では数量や図形の学習,理科では観察や実験などにコンピュータやインターネットを活用するようにする。

【学校図書館の計画的利用】
学校図書館を各教科等の学習において計画的に利用する場を設け,子どもの主体的,意欲的な調べ学習などの活動を展開するとともに,読書活動の充実を図る。
各教科の指導のなかで,学校図書館を活用する場や機会を計画的に設定し,学習活動を展開する。国語での図書や社会科での調べ学習だけではなく,それぞれの教科の学習内容を身につけるために学校図書館の利用のあり方について検討し実践するようにする。
そのためにはこれからの学校図書館に対して,子どもが自ら学ぶ学習・情報センターとしての機能とともに,豊かな感性や情操をはぐくむ読書センターとしての機能を発揮することが求められている。学校図書館に対する考え方を改め,新たな整備と教育課程への位置づけが各学校において課題となる。

【子どもの学習意欲を高める評価】
各教科の基礎・基本を確実に身にづけるとともに,自ら学び自ら考える力を育てるためには,評価のあり方や方法について十分に検討する必要がある。そのためには,指導の過程や成果を評価し,それらを授業改善に生かすとともに,子どもの評価に当たっては,子どものよい点や進歩の状況など,優れたところを積極的に評価し,子どもの学習意欲を高めるようにする。
特に重要なことは,他の子どもと比較した評価ではなく,子ども一人一人がどのように伸びようとしているかを見とり,一人一人がもっているよさや可能性,進歩の状況などをとらえる個人内評価の視点を大切にすることである。また子ども自らが自らの学習活動を振り返り,新たな目標や課題をもって学習を進めていけるような評価を行うようにする。

【学校相互の連携・交流】
家庭や地域のさまざまな人々の協力を得るなどして,家庭や地域社会との連携を深めながら学習を展開する。また,小学校聞及び幼稚園,中学校,盲学校,聾学校,養護学校などとの連携や交流を図る。さらに,障害のある子どもたちや高齢者などとの交流の機会を設ける。
学校同士の交流としては,例えば,自然や社会環境の異なる学校同士が相互に訪問したり,コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用したりすることが考えられる。また高齢者などとの交流として,授業や学校行事などで,地域の高齢者を招待したり,高齢者の施設を訪問したりして,高齢者との交流を図ることができる。さらに障害のある人たちとの交流の場を設け,互いを正しく理解し,共に助け合い,支え合うことの大切さを学ぶことができる。
このようにして,地域に開かれた学校づくりを進めることが一層重要になる。

光文書院提供 ワーク研究 No.97(平成12年9月1日 発行) より