総合学習の分類については、これまで多くの方が研究されていますが、ここでは、4者の分類を年代順に紹介していきます。おそらく代表的なものだと思います。
(1)田中博之[1986]の分類
私が持っている文献の中では、最も古いものですが、現在も総合学習を構築する際の出発点的な存在です。ただ、孫引きなので詳しい解説はできませんが、少し分析をしてみたいと思います。
まずは、軸の設け方についてです。縦軸の「教師決定」「児童決定」は、だいたい想像がつくと思いますが、学習活動の決定権がどちらに優先権あるかということです。まあ、主体的な存在がどちらかということでしょう。わかりにくいのは、横軸ですね。「明確な目標と評価」は、言わば各教科の学習のようにカリキュラムがしっかりしていて、その順序に従って学習が進んでいくということでしょう。「ゴールフリーな評価」は、カリキュラムのような順序性が薄く、方向が定まっていないような状態、言いかえれば、次に進む方向がその活動から生み出されるということでしょう。したがって、前者を「教科カリキュラム」的なもの、後者を「即成カリキュラム」的なものとして考えることができます。
こうした、縦横の軸を設けることで、4タイプの総合学習が見えてきます。これらは、過去の実践から分類されたものでしょうから、これまでに、こうした実践研究が積まれてきたということになります。「W:生活学習」の代表的な実践として、長野県伊那市立伊那小学校が挙げられます。
清水毅四郎「合科・総合学習と生活科」黎明書房、1989、p.300
(2)山本幸夫[1997]の分類
山本さんは、小学校の先生です。編著者である今谷さんは、神戸大学発達科学部の教授です。ということは、明石小学校の実践と深い結びつきがあるということですね。
さて、ここでも縦横の軸が設定されています。縦軸の「学習の主体性」は、先の田中博之の分類とほぼ同意でしょう。横軸の「時間枠」とは、「総合学習」をどの時間枠を使って展開するかということです。また、以下に、A、B、C、Dの4つのタイプの解説の一部を引用します。
今谷順重「総合的な学習の新視点」黎明書房、1997、p.54
A「総合学習」・「教科外」−「子ども主体」型
学習内容や活動を子どもが自分の興味・関心に基づいて主体的に決定するものである。学習の素材は、子どもが無意図的に見付けたもので、未整理なものが多い。
活動の時間枠は、教科学習の時間枠とは別に、教科外に、「総合学習」の時間枠を設けるというものである。
■実践校■筑波大学附属小学校、愛知県岡崎市立矢作小学校
B「総合学習」・「教科間」−「子ども主体」型
学習内容の決定や活動において、子どもの主体性を重視する。活動の時間枠は、既成の領域や教科の時間枠の中で行う。内容やテーマを基に各教科や領域のつながりを図りながら、指導計画や授業時間の調整を行い、実践していくというものである。
■実践校■神奈川県横浜市立日枝小学校
C「総合学習」・「教科外」−「教師主体」型
学習内容(主にテーマ)を教師が主体となって決定する。そのテーマは人間の生き方、在り方にかかわる現代的課題に関するものが多い。
時間枠は、Aのタイプと同様、教科学習の時間枠とは別に「総合学習」の時間枠を設けるというものである。
■実践校■東京学芸大学教育学部附属大泉小学校
D「総合学習」・「教科間」−「教師主体」型
Bのタイプと同様に既成の領域や教科の時間枠の中で、実践を行うことを特色とする。あるテーマや課題について、各教科や領域のつながりを図りながら、指導計画や授業時間の調整を行うというものである。
■実践校■佐賀大学教育学部附属小学校
(3)加藤幸次[1997]の分類
加藤さんは、上智大学文学部の教授で、個性化教育(オープンスペース、オープンスクールなど)で有名な方です。
さて、ここでは5つのタイプになります。大枠は1、2、3と4、5の2つになります。なぜ、こうなるのかは、総合学習の考え方によります。
ひとつは、教科学習における「総合化」を目指した形です。もうひとつは、総合学習を目指した形です。前者は、「社会や大人が用意した内容であるため、子どもたちは文化遺産の「受容器」にたとえられ、後者は、文化の創造、知識の再生を目指して、子どもたちが主体的に活動していくことに力点をおいている」と述べています。
という考えから、すでに実践されているものを参考に分類しています。1、2、3は教科をベースにし、4、5は、子どもの興味・関心を基にしているという点については、これまでみてきた分類と共通しています。
加藤幸次「総合学習の思想と技術」明治図書、1997
(4)村川雅弘[1998]による分類
いよいよ最後です。村川さんは、鳴門教育大学教育学部の助教授で、生活科の実践にも詳しい方です。
私が所有している文献の中では、一番新しい分類で9つのタイプになっています。しかし、源流は、最初に紹介した田中さんの分類だと思います。というのは、横軸の言い方は変わっていますが、カリキュラム絡みの設定だからです。
これも、これまでの実践からつくられたものだと思いますが、それだけ多種多様な実践が積まれてきたとみることができます。特に、中央部分に位置する選択制的な学習は、中学や高校で実践されているのではないでしょうか。
水越敏行・村川雅弘「小学校総合的学習の新展開」明治図書、1998
こうしてみると、総合学習には、実に様々なタイプがあることがわかります。が、大枠はだいたい同じと言えるでしょう。つまり、課題設定や学習活動の決定権をどこに置くのかという点、学習内容の範囲をどうするのかという点の2つに絞られると思います。これらは、総合学習を設計する際の重要な要素になると言えます。
ここで、注目すべきは、加藤の「1『教科』総合学習」と村川の「A単一教科−教師決定型の総合学習」です。どちらも単一教科内における総合学習という見方をしています。
総合学習というと、合科やクロス、学際的研究分野(環境や国際理解など)、生活における新課題等をその内容にすることが強いイメージとなっていますが、複数教科や他領域で展開するだけではないということです。つまり、単一の教科、既存の単元であっても総合学習として展開することが可能だという見方です。このことは、今後の実践に大きな意味を持つことになると思われます。
この数年で、総合学習に対する注目度が増したのと同様に、実践も積まれてきました。また、生活科が導入されて、その指導や活動構成の工夫も発展してきました。これらの蓄積を最も容易に生かすことのできる総合学習、それが、先の単一教科における総合学習と言えるでしょう。また、単一教科内に導入することが、現状では最も実践しやすいのかもしれません。
さて、こうしたそれぞれのタイプをひとつでも行えば、総合学習を実践したことにはなるのですが、それだけで子どもたちがどれだけ育つかは疑問が残ります。そうかといって全部を行うのもたいへんなことですし、決してすべてを行う必要もありません。ですが、1年、3年、6年、9年といった長いスパンの中で系統的に進めていく必要があると思います。また、子どもたちの発達段階や実態に応じて行うことは言うまでもありません。
ここでいう系統には2つのタイプがあります。ひとつは、総合学習としての系統です。もうひとつは、学習内容としての系統です。
前者は、これまで見てきた分類を基にしながら考えていくことができると思います。後者は、別の枠組みが必要です。それが、次期指導要領案で提示されている学際的研究分野(環境、国際理解、情報など)です。これらはあくまでも例ですので、必ずしもこれらに限定されるわけではありません。しかし、こうした枠組みがなければ、総合学習としての学習内容の系統性を持つことはできません。
これまで見てきた総合学習の分類をこれからの授業構築や単元構成を組むときの参考にしていきたいものです。こうしたモデルを基に、独自のものにしていけばよいのです。今、自分がどのタイプの学習を行っているのか、これからどんなタイプの学習を行っていきたいのかのヒントにはなると思います。また、学習内容によってもタイプが変わってくると思います。子どもたちにこんな力をつけさせたいという願いからタイプを選ぶこともできるでしょう。そうした模索を行いながら、2002年の実施に向かいたいものです。
1999.1.15
1.(2)を訂正しました。今谷さんの分類としていましたが、誤りで、山本幸夫さんの分類でした。近藤さんよりご指摘をいただきました。ありがとうございます。
1999.2.2
------------------------------------------------------------------------
E-mail;武蔵影丸yame31@bf.mbn.or.jp