田中力です。どうぞよろしくお願いします。
まず,お喜びの挨拶をさせていただきます。本日はおめでとうございます。今日,北海道生活科教育連盟が「北海道生活科・総合的な学習教育連盟」として発足したということで,ますます,北海道の生活科と総合的な学習がパワーアップし,全国に向かって,「これが北海道の生活科であり,総合的な学習である」ということを発信していく一番のベースができたということを大変喜ばしいことだと思っています。そういう記念すべき時にお招きいただき,光栄に思っています。はたして,それにお答えできるできるような話ができるかどうか心もとないですが,務めさせていただきます。
■筑波の総合への取り組み
今日は,全道の生活科,総合的な学習を作っていく先生方のお集まりだとお聞きしていますので,平成9年度から11年度までの3年間,筑波大学附属小学校が文部省の教育開発の指定を受けまして,研究を進めましたときのことをお話しさせていただきます。たまたま,私が取りまとめ役で研究企画部長を仰せつかり,3年間務めてまいりました。
このときの研究というのは,全教科,そして総合,全ての教育課程を見直していこうということになっていました。その中で総合というのはどうするか。うちの学校では,「総合活動」という名称ですでに昭和46年に発足し,研究してきたわけな
んですが,それを新しい時代に向けてどう創っていくか,という研究を教科と並行し,取り組んでまいりました。
先ほどご紹介いただきました「総合的な学習の単元開発」という私の本ですけれども,あの本を出したのが昨年の秋です。現在,進行中の研究にはちょっと支障があるということで,平成9年までの,もちろん,その後のことも入っていますが,基本的にはその前までの取り組みを書かせていただきました。筑波大附属小学校に赴任していちばん困ったのが,総合活動の時間なんです。それまでは,私,一応社会科を専門にしていました。社会科は指導要領がある。教科書もある。地域とか学校の指導計画があり,そういう枠の中でどういう工夫をするかというのが私の研究の中心でありました。
ところが,筑波に来ましたら総合活動がありまして,教科書もない,指導要領もない。何を拠り所にしてやったらいいのかと考えている時,先輩から言われたことは,目標ですね。児童が自然な生活を基盤として,自主的・体験的活動を組織することにより,調和のとれた人間的資質の向上を図る。そういうふうな,今の生活科,総合的な学習につながる目標を示されまして,後は関わる対象としてはこんなことが考えられるよ。それから,活動としては,こういうことが考えられるよ。それから,活動を進めていく時は,基本的にこんなことが抑えるべき要素としてあるということを示されまして,後は自由にやりなさいと言われました。
そうすると私はそれまで自分がしてきたことが,いかに枠の中での工夫にすぎなかったかということに気づかされました。そういう文部省だとか,教科書だとか学校だとか,そういうものを取っ払って,目の前の子供と相対する。さて,この子供たちと一緒に体験的に何か価値ある活動をしていこうとした時に,何をしたらいいか?そういうふうなことがそれまで無かったということもあり非常に困りました。これは,多分,総合的な学習を創り出そうとしている全国の先生方も同じような心境にあるのではないかと思います。
■「火おこし」の実践から始めた総合活動
で,まあ,そういう中で色々と試行錯誤して,いちばん最初にこれなら何とかなるのではとちょっと自信というか,これでいけばいいのかというのが見えたのが,「火おこし」です。「火おこしに挑戦」という活動を3年生の3学期,1月から3月にかけて行いました。子供は,火打ちで火おこしをしたり,色々な古代の発火法でやっていって,最終的にユミギリ式の発火法で見事火をつけることができました。その時,つかなかったグループの女の子が,つかなかったことを10年経っても,まだ,恨みに思っている。そして,教師たるもの,全ての子供が火がつくように上手くできるような手だてを講じるべきであるということを10年目に言われまして,本当に女性は…。(笑)いや,失敗体験,失敗しただけで終わってはいけないということを学びました。この時は,火おこしをしようという大きなテーマがあって,そのあとどうするかというのは,それぞれ子供が考えていく。いわゆる子供の選択がその中にあったのです。
そういう活動をしたり,それから,縄文土器を作ってですね,実際料理をして食べようということになり,野焼きをしまして,アサリ汁を作ったり,どんぐりだんごを作ったりして食べたというふうなことをしたこともあります。
これは短い活動なんですけど,こういう熱気球を作って飛ばすという活動もしました。ところが,このような活動はすべて学級単位の活動でありました。ですから,学校としての研究としてはやや,沈滞ムードとなっていました。そして,総合活動自体もややマンネリになっていました。研究会なんかも,総合は「冬の時代」でありまして,参加者がほとんどこない。授業が終わって,残る先生がひどいところでは,2〜3人しか残らないような,冬の時代でもありました。
それから,生活科が誕生した時代になります。生活科の教室は人であふれている。それまでは1・2年も総合活動という時間があったんですけれど,そのころは1・2年も閑古鳥が鳴いていました。ところが生活科が誕生するという頃から,1・2年の教室はお客さんで溢れました。ところが3年以上の教室は相変わらず閑古鳥が鳴いていました。ところが総合的な学習が出来るんだと言われ始めてから,3年以上の総合の教室も立錐の余地もなくお客さんであふれてきました。ですから,今は,総合と名前がつけば,人が集まる,総合とつけば本は売れるという,そろそろそういう時代は終わりつつあるようなんですけれど,そういうふうな状況を呈してきたわけであります。
■総合的な学習を見直す4つの視点
さて,そういう状況の中で,総合的な学習の時間に対する先生方の注目が集まりつつある中で平成9年度から研究開発学校の指定を受け研究を始めることになり,この総合活動をどうしていこうかということで見直しを進めたわけであります。
見直しを進めていく中で話し合った視点が4つあります。
第1の視点は,従来の総合活動も同じなんですけれど,学習内容の総合的な扱いです。一つの教科に偏ることなく様々な教科を統合していくような形ですね。そういう学習内容の総合的な扱いを今まで以上に進めていこうということです。
2つ目は,子供の選択を幅広く認めていこうということ。テーマの中で子供の自己選択・自己判断・自己決定をいかに認めていくか。活動の中に子供の選択をどう取り入れていくか。子供の選択の幅を広げていこうというのが2番目の視点です。
3つ目は,学習集団の柔軟な扱い。集団は柔軟にしていこう。これは,ここに挙げてある活動は学級単位の活動であります。ですから,学級単位の活動も大事にしながら学級という集団を越えて自由に,テーマ別に集団を作っていく。集団を柔軟にしていこうというのが3番目の視点です。
そして,4番目の視点は,これもいくつか取り組みがあったんですけども教室を飛び出して,さらに学校を飛び出していく。その対象や方法に応じて学校から飛び出す。それから,学校以外の様々な人々と出会う。交流する。そういう機会を作っていこうということで考えたわけです。
■クラスタイム・テーマタイム
クラスタイムはクラスごとに学級の子供と担任とで活動を作っていく時間です。それに子供の自己選択を広げるということで,テーマタイムという時間を考えたわけです。テーマタイムは5・6年を例にしますと,5年4学級,6年4学級あるんですが,その8学級を解体しましてテーマによって自由にグループを作る。そして,テーマを投げかけるのは教師なんです。5年と6年の4学級ずつ8人の教師。それから専科の教員が10名ほどいまして,その半分の5人程度の者がつき,8たす5で13名のものがそれぞれ自分がやりたいテーマを考える。これは,後からお話しますが,ある程度の枠があるんですが,基本的には自分がやりたいこと,先生が子供とともにやりたいことを提案する。そして,集まった子供と活動していく。講堂に5・6年生を集めまして12〜3名の教師が自分のテーマについて,これがいかに面白いかということを語っていく。それを子供が聞いていまして,説明が終わったところですぐに第一希望に○をつける。第一希望だけ。人数がすごいばらつきが出てくるわけです。でも,それでも構わないんです。第二,第三希望は取らないんです。あくまでも第一希望優先ということでやる。
そうすると,かなり悲劇も起きてまいりまして,いちばん最初のテーマタイムでは,筑波映画会社というものをある先生が提案しました。その筑波映画会社を希望したのは100名を越えたのです。全部で320名ですから3分の1がその映画会社に行ってしまった。逆に0というテーマもあったんです。一人も希望しなかった。でもそれでも,0になったテーマはしょうがないから消滅ですけれど,100人以上集めても一人でやるということになります。筑波映画会社は子会社を作り,事なきを得たのですけど,中にはだんだん狡賢いことを考える教師も出てきまして,普通クラスは40人ですから,出来れば5,6人。7,8人だと小回りも効いて外へ行ってもやりやすいと。ですからあまり面白くないよ。ちょっと不安でしょとか,これは厳しいサークルだからとか,色々と手段を講じまして,あまり集まらないような方策を考えて4人とか5人を集めて,意気揚々と外へ出掛けていく。そういう人もいました。(笑)
私は1回目は,アニメーションを作ろうというテーマにしまして,2回目は東京の中の江戸を求めてということですね。子供が東京を調べて,江戸情緒が残っている所を捜し出すということ。これは,両方とも14,5人集まりましたので,ちょうど活動しやすい人数でした。これは,富士塚というちっちゃな富士山を,このころは富士信仰というのが江戸時代は多かったです。ちっちゃな富士山を作って,そこに登れば富士山に登ったような御利益があるというような神社です。そんな所を見に行ったりしました。そして私も3回目になり,なるほどああいうふうに言うと人数が少なくていいのか,そうか,じゃあ私もその方針でやるかなあと考えましてですね。(笑)
えーと,「南北問題とは何だろう」というテーマにしました。テーマからして面白くなさそうなんですけれど,それを非常につまらなそうに,深刻そうに話したところ,希望した子供は一人でありました。(笑)おまけに悲惨なことに,一人の子供と2月の研修会で授業しなければならないことなった。それでも,みんなは面白がって,「いやあ一人でしたね」。(爆笑)
ですから,その一人のK君という子とですね,南北問題でインドネシア大使館へ行ったり,インドネシア料理を食べてみたりしました。で,研究会の当日は,インドネシアの大使館員の人に来てもらい,アンクルという楽器を演奏することにしたんですけど,この楽器が一つの楽器で一つの音を出す。ですから,ドレミファソラシドで8音必要なんです。ところが人数はK君と私と大使館員の人の三人しかいない。しょうがないからその時来てた顔見知りに出てもらい,それで演奏をしたわけです。
一人ではということで,余り人数が少ないと私の信用にも関わりますので,次は一生懸命集めようと思いました。(笑)その頃,私が家にいると必ず見る番組がありました。馬鹿馬鹿しい番組なんですけど,日曜日,北海道はどうなのか分かりませんが,「鉄腕ダッシュ」という番組がありまして,あれをパロディにしてやると面白いかもしれない,「鉄拳ダッシュ」ということで子供を集めようと思ったわけです。では,どうなったかというところをビデオでお見せしようと思います。テーマタイムの概要なんですけど,去年の夏にNHKの3チャンネルでうちの学校の総合をシリーズの一貫として放映されたビデオのテーマタイムの部分です。
<ビデオナレーション>
5・6年生が一緒に行う総合学習の一つテーマタイムの初日です。この日,13人の先生が自らそれぞれやりたいテーマを子供たちにアピールします。子供は興味を持ったテーマを一つ選びます。自分の提案したテーマに子供が興味を持ってくれるかどうか,先生にとって緊張の一瞬です。テーマタイムが始まって4回目の活動。自分で作ったピンホールカメラで撮影するまでにこぎつけました。始めての撮影としてはまずまずの出来。
このカメラ入門を選んだ子供は43人でした。音楽室の一部が暗室です。現像の結果,この日多くの子供たちがうまくいきませんでした。「総合は教科と関係なしのいろんなことが組み合わせられるということですね。前は石についてとか,放送番組を作るとかやったんですが,いろいろ自由にできるということですね。今回はピンホールというのは,まず自分がそういうことがやってみたいと思ったわけですね。ピンホールというのは,まず,カメラを作るということ,それから,撮るという面白さがあって,それから現像するというふうに楽しみがいっぱいあって,それもうまくいくかどうか分からないということがお楽しみじゃないかと思います。」(N教諭)
中国語のテーマに集まった子供は13人です。自分の能力の限りに挑戦してみようという先生の呼びかけにこたえて,89人の子供が集まりました。一人一人の子供からやってみたいことを募集し,毎回挑戦することを決めて89人で挑みます。友達と夢中になってやる楽しさを味わわせたいと,先生は考えています。
道に関することをテーマにしたことに集まったのは2人。道に関わることを子供たちの興味に沿って観察していきます。
テーマタイムも8回目。今日は最終日です。ピンホールカメラの作品が展示されています。初めは失敗続きだった子供たちも腕前を上げました。
以上がテーマタイムの様子でした。鉄拳ダッシュのことですけども,子供たちからテーマを募集しまして,やりたいことに挑戦していく。ですから,いわゆる何十人何十脚と違うのは,あれはこの日でおしまいなんです。同じ帽子の子供が何十人何十脚,14,5人で走っていましたけれどクラス単位では皆成功しているんですね。全員ではうまく行かなかったんですけど,それはそこでおしまいということで,子供から出たのでいくつか紹介しますと,「校内おにごっこ」とか「一分間で泣けるか」「筑波大学附属小学校から東京駅まで500歩でいけるか」「2メートルでいいから大きな羽根で飛びたい」「一時間みんなで空き缶100個集められるか」「屋上から投げたボールをキャッチできるか」「目をつぶってどこまでいけるか」「目隠しをして障害者の気持ちになりたい」「卵でキャッチボール10回できるか」「屋上から流した水を下で飲めるか」等訳のわからないことを色々言っていますけど。じゃあ,子供たちは何をこの鉄拳ダッシュから学んだかと言いますと,まことにもう,私の担任している子供ですから(笑),非常に協力的で,こういうことを書いています。
■総合的な学習で育つもの
「ぼくは鉄拳ダッシュに入ってよかったことは,まず第一に協力するということです。鬼ごっこでは鬼が近づいても冷静に判断する,判断力。隠してあるものを見当付ける観察力。」「駅から茗荷谷まで何メートルか自分を信じて考えたりすることです。」Oという女の子ですね,「私がこのテーマに入った理由は,まず内容が面白そうだと思ったからです。その上,力先生が担当だからぜったい楽しくなるはず…。(その割には南北問題では一人だったですが…。)鉄拳ダッシュのように色々なことに挑戦するのは,とてもいいことだと思いました。」それから,「何回かのテーマタイムの間に色々なことに挑戦したけど,不可能ということはないと思う。きっともっと長い時間をやれば,今までやって来たことだって,不可能ではないと思います。」それから,「驚いたことは自分の歩幅で距離が測れるということです。まず,トラック一周何歩で歩けるかをやって,自分の歩幅を知って,後は何歩で茗荷谷に行けるかを数えるだけ,案外簡単な方法で距離が分かるんだなあと思いました。遊んだだけのテーマタイムだったけど,一応知ったこと,学んだこともあったみたいです。」「目隠しをして直線をあるくのは,どんな人でも絶対無理です。不思議だけど,皆右に曲がってしまいます。」というようなことで,この鉄拳ダッシュというテーマについては,皆で協力する。不可能に挑戦する。限界まで自分の力を試すということでやってみたわけです。
で,他のテーマについても中国語とか,N先生という音楽の先生が言ったように,まず,自分が楽しい。自分がやってみたいというのが一番最初にあるんだということ。ですから,総合活動,総合的な学習の時間をやるにしても,まず,先生が面白がるというのが大事ではないかと思うんです。教科は,教える内容があって,目標があって,どうしてもそれを達成させたいということがあると思うんです。教科は,目標・達成・評価である。それに対して,総合というのは,主題・体験・表現であるというようなことを言っている人もいるわけなんです。
学習指導要領で,生活科と総合の一番大きな違いは,生活科は履修すべき内容が示されている。この内容はやりなさいと履修すべき内容が示されている。総合の場合には,内容が示されていない。全て課題例であるということですね。その辺に先生方が工夫する余地があるんではないかと…。本校の総合活動の場合にも,クラス単位の,言わば学級王国でですね,それぞれのクラスで総合活動に取り組んでいた時代には,だんだんだんだんマンネリ化して,学校としての活気は無かったんです。なんか,先輩が作ってきた時間をただ引き継いでいくという感じだったんではないかと思うんです。
ところがテーマタイムを始めると,非常に学校全体が活気づいてきた。自分で面白いテーマを探してみて,それを子供に提案し,子供と一緒に遊ぶ,活動する。その子供は,初めて出会う子供で,そんなところに面白さがあるんではないかと思います。
■フリータイム
そういうことで,かなり活気が出てきまして,さらにそれをもう一歩進めようということで,その次に用意したのはフリータイムということです。で,今日いただいた物の中に,総合的な学習のねらいというのが書いてありまして,「自ら課題を見つけ…」とあるんですけども,ほっといても子供が課題を見つけるようになるのか,主体的になるのか。子供はほっといても育つのか?そんなことないと思うんですね。その前段の「各学校が創意工夫を生かして」というのは大事だと思うんですが,そういう子供を育てるためには,ある程度筋道をつけてあげる必要があるんじゃないかと考えます。だんだん,そういう力をつけてあげる。ですから,クラスタイムというのは,別な言い方をすれば,テーマに浸る。テーマを十分に楽しむ。学級の仲間と担任の先生と一緒にテーマを設定してそれを楽しむ。皆でテーマに浸る。テーマを楽しむ時間じゃないかと思うんです。テーマを楽しんだ後,次にテーマタイムとなって,今度はテーマを選ぶ。先生が提案したテーマの中から自分が取り組んでみたいテーマを選ぶ。テーマを選んだ中で,さらに自分なりの選択をして活動していく。次にテーマを選ぶ段階です。テーマに浸って,テーマを選ぶ段階を通過することで,最終的には総合的な学習の時間でねらう自ら課題を見つけて追究していく資質や能力が育っていく。フリータイムでは,テーマを自分で見つける,テーマを設定する,それから,自分で調べる方法を考える,そして最終的にはワークショップを開いて発表すると,テーマを選ぶことからの一連の流れを子供自身が作っていくというそういう時間に設定したわけです。
これは,言わば,最終的な我々が考えた一つの到達点なわけですけれど,こういう流れで子供を育てていこう,だんだん,自分でテーマを選んで作っていくような力をつけていこうということです。もう一つ,忘れてはならないのは,基盤は教科だということ。教科の学習が,従来と同じように分かりましたかという教え込みのような授業をしていて,総合の時間になったら,さあ,課題を見つけなさい,さあ,自ら学べ,自ら考えろと言っても,それは無理だと思います。ですから,教科の学習も総合で言っているような問題解決に向かっていかなければいけないだろうし,総合の中でもいくつかのステップを踏み,子供を育てていく必要があるんではないかと思います。
我々がフリータイムを始めるにあたって,申し合わせたことの一つは,テーマを作るのを急がない,極端な例を言いますと,7月の一番最後にオリエンテーションをしましてそれから夏休みを経過して,11月末から12月にかけてワークショップを行うんですけど,最後のワークショップの時に「わたしはずっとこんなテーマを探して歩きました…」と,自分のテーマ探しの旅という発表でもいいんじゃないかと。テーマを設定するのを急がない,テーマをじっくり考える時間を持たせるのは大事じゃないかということでいったわけです。
後は,生活科の時と同じように,活動している途中の子供をどう見ていくか,そのあたりのことは,これまでの生活科の研究が生きてくるんではないかと思います。
では,フリータイムの様子を見ていただきたいと思います。
テーマタイムは4年生の3学期から始まりまして,4年生の3学期,5年生と一緒になって1回目のテーマタイム。5年生になって,1学期,6年生と一緒に2回目のテーマタイム。5年生の2学期に1回目のフリータイム。5年生の3学期に4年生と一緒にテーマタイムの3回目。それから,6年生になり,1学期にテーマタイムは,4回目。2学期に2回目のフリータイム。4年生の3学期から始まって,テーマタイムを4回。フリータイムを2回経験して卒業していくということになるわけです。
テーマタイムは7,8回の回数が行われます。昨年度のフリータイムは最終的に終わるのは11月の19日で,10回です。ワークショップが2週間にわたって行われます。で,それぞれの学級を2つに分けまして,半分のグループは11月下旬の第1回のワークショップで発表。発表のスペースは,自分で確保する。そこで自分のお店を開く。残りの半分の子供は見て回る。3年生は自由参観。3年生,4年生,それから5,6年生の半数は見て回るということになります。それぞれのクラスごとにどこでだれがどんな発表をしているか,テーマと名前の一覧表を作りまして,それを全部一冊にまとめまして,子供に配る。見る子は,それを見ながら回る。それで,フリータイムの活動をしながら,アンケートも取っていいということで,言うなれば相互評価ですけど。子供が自分で,こんな所を見てもらいたいということで,評価項目を決めて,自分なりの相互評価のカードを作り,発表を見た子供に感想を書いてもらう。そういうふうなことも取り入れました。
■総合的な学習における指導と評価
5年,6年を持っているとき,私が口を酸っぱくして言ったことは,何しろ,体験というのが大事なんだ,体験というのが無い場合は研究が行き詰まってしまうということを言いました。体験というのは,一番直接体験は社会参加。実際仕事をやってみること。調査とか見学とか,実際に現場に身を置いて,調べたりすることが2番目の体験。それから,収集の活動。4つ目は制作・実験の活動。動作化の活動。表現方法。最終的にワークショップではどういう表現方法が考えられるか。どういう体験ができるかは,子供がクラスタイムやフリータイムの中で学んでいることではないかと思います。うちの学校の総合活動では,クラスタイム,テーマタイム,フリータイムの形で徐々に子供の選択の幅を広げていく,だんだん自ら学ぶ力をつけていけるように促していこうとしています。子供にとってはこの3つの流れは好評です。これまで,学年の終りに思い出ベストテンということを子供に書かせたりするんですが,5,6年の子供たちはフリータイムなどの活動を書いてくれて子供にとって思い出深いものとなっています。
それでは,各学校ではどのような取り組みをしていけばいいか考えてみたいと思います。子供たちがアジアの留学生と交流する活動では,アジアの人々に実際にその国のカレーライスを作ってもらいました。そのカレーを御馳走になりながらの留学生と交流しました。その交流の一番元になっているのは,子供の興味・関心です。子供にとってその活動が喜びを持って,価値あるものを見つけ出すことができるものなのかどうかということが大切です。
「人に優しい町を探そう」ということで,3年生のとき学校の回りを歩いて調べていきました。その中で,地下鉄の券売機の点字の部分を見つけたりなど,福祉との関わりがあることも出てくるだろうし,学校や地域の特色に応じた関わりというのも出てくるだろうと思います。
子供が育っているのかどうかは,その時々で子供の活動を記録したり,最終的には文集にまとめたり等して見ていくことではないかと思います。これはクラスの子供たちの活動記録をまとめたものです。
総合の学びということで考えると,こちらの資料にも書かれていますが総合のキーワードは,「つながり」とか「かかわり」ということになると思います。
何と関わるかということは,3つあるだろうと思います。
1つは学ぶ対象とのかかわり。どういう対象とかかわるかということです。対象には人と物とかがあります。
2つ目のかかわりは,仲間とのかかわり。友達がかけがえのないものとなってくる。一緒になって汗を流しながら,やっていく体験は子供たちにとって絶対に意義のあることだと思います。
最終的には,対象とのかかわり,仲間とのかかわりを通して,自分を見つめるということだと思います。中教審では,「自分探し」と言っています。うちの学校では,「自分作り」ということをテーマとしたんですけど,最終的には自分を作っていくということ。自分を作っていくというのは,自分の中に他者の目を持つということ,それが自分を知ることになるということです。
自分の中に他者の目をもつことができるようにするためには,その前段階として,他者の目を意識するということ。ですから,学級集団の解体は,新しい友達との出会い。新しい他者の目ができるということが必要です。先生とも新しい出会いがある。そのように,多様な対象とのかかわり,多様な仲間とのかかわりが自分をつくっていくことにつながるのではないかと。自分作りや自分探しというのは,自分だけで出来ることではないんだということ。対象や仲間とのかかわりの中でできていくものだと思うのです。
■これからの研究
これからの研究はどうあるべきかということですが,どんな活動があるかをたくさん集めることがこれから研究で大切なことだと思います。たくさんの活動例を集めて,その中から先生がピーンとくること,これやってみたいなあというものを探すということが大切であると思います。
後は,学校の中で先生同士が面白がるということ。学校全体を巻き込んでいくことができていかないかなあと思うんです。
次は,大きなテーマを考えて,子供の選択を認めていくということ。例えば街のガイドマップを作ろうとなった場合,いろいろな要素が考えられるわけですね。人がいる,生き物がいるというふうに…。
これまでに様々な総合の本が出ているので,その中から,活動だけでも抜き出してみることもよい方法だと思います。
そろそろ約束の時間になりましたので,ここで終りにしたいと思います。また,さらに面白い意味のある総合を作っていきたいと思っています。どうも有り難うございました。