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座談会

総合的な学習をどうつくるか

共通理解と学校体制の変革が不可欠


東京都立教育研究所指導主事 釼持 勉先生
板橋区立志村第2小学校 金子富男先生(6 年生担任)
中野区立桃園小学校 村山 満先生(4年生担任)


2002年度から始まる「総合的な学習の時間」導入に向け、すでに様々な形で取り組みをスタートしている学校が多い。しかし一方で、どのように準備を始めればいいかいまだ戸惑っているという学校も少なくないようだ。
今回は、都立教育研究所釼持勉先生と都内小学校で教育に携わる方々に「総合的な学習」の現状と今後のあり方について語ってもらった。

(本紙編集部)


教育の基礎力が課題


釼持
総合的な学習が2002年度より始まることを受け、学校現場をおよそ3つの取り組みに分けることができます。まずは「総合的な学習について学ぼう」と模索中の学校。次にすでに間口があって取り組みを始めている学校。3つめが、試みてみたもののどうにもならない、という学校です。どちらにしろ、来年度から移行措置として積極的に105〜110時間取り組む、という学校は少数だと思います。このような現状を踏まえ、2学期から来年に向けて総合的な学習を進めるために何をすべきか、課題や今後の方向などを考えていきたいと思います。
現在、総合的な学習は行事や特別活動を再構成するプランと、一教科で進めてきた内容を総合に結びつけていくプラン、具体的な事例を来年度からの移行につなげるプランがありますが、みなさんの学校ではどのように進めていますか。

金子
本校では、子どもたちの実態をよく知るために、まず学級の様子を担任に話してもらいました。その中で重要と感じたのが、先生方の共通理解です。次の段階が、これまで取り組んできた教育活動の中に、総合的な学習として取り扱えるものがないかの洗い出しです。その結果、「もっと地域について知ろう」「すでに実践している学校の事例を学ぼう」という流れで進めています。

村山
本校では昨年度から区の研究奨励校として、子どもたちに情報活用能力を身につけさせるための情報教育を重点に進めています。 パソコンによる検索や図書資料、新聞、地域の方へのインタビューを情報源として捉え、情報を子どもが自ら選んだり、どれが必要なのかを決め、他者に発信し、自分を表現する活動へと結びつけるという流れで、総合的な学習との関連をはかっています。しかし、総合的な学習で子どもにどの程度の力をつけることができるのか、まだ半信半疑というのが校内の反応です。

釼持
生活科との違いは、総合的な学習の時間には教科の力を含めていかなければならない、という点です。教科の基礎基本が身についていないと総合的なものにはなりにくいでしょうね。 問題点としてはどのようなものがあがっていますか。

金子
地域の方がどれくらい学校に参加してくれるのかが心配です。ある学校では、「こういうことができる方いませんか」といった文書を校長とPTA会長の名前で全校配分したそうなんですが、反応が悪かった。

釼持
協力依頼するにも段階的に経験を積んでいかないと、人材の確保は難しいでしょうね。例えば東久留米市では、行政が広報誌をとおして、地域の方を募集しました。年齢が
概ね18歳から70歳くらい、市まで1時間以内、教員免許を持っている人には授業を手伝ってもらうこともある、という内容でした。今の段階では、行政からのアプローチも大事ではないでしょうか。

金子
実は、生活科の「昔のおもちゃで遊ぼう」という単元で、私の母が、子どもの担任に「お手玉を教えてほしい」と頼まれた。ところが、母は「どうしたらいいんだろう」とおろおろ、当日になってキャンセルしたいと言い出しました(笑)。どんなスタイルで実施されるのかまったく想像がつかなくて、とまどう人は多いと思います。

釼持
総合的な学習がどのような活動なのか、学校は地域や保護者に対してきっちり説明
する義務がありますよね。内容や結果説明についても、担任は地域の方や保護者に伝えなければなりませんよね。どの時期にどういった形で必要なのか、今後もその活動のときには継続的にお願いするのか、あるいはそのときだけなのかの意向も伝えるべきだと思います。

学級の壁を乗り越えるTTの力を生かす


釼持
「あの店に行って話を聞いてきなさい」と言っても、何をどう聞けばいいのかわからないのが子ども。共通する基本内容として挨拶やインタビューのしかたなど、どうやれば気持ちよく取材できるのかを教えることも必要でしょうね。

村山
3年の社会科の授業で、販売形態やサービスの違いをメインに商店街の調査を進めたとき、子どもが値札のつけ方について疑問を感じた。消費者教育につながる「課題の発見」でした。しかし、社会科の中ではできなかった。それが総合になれば、追求できるのではないでしょうか。

釼持
課題を追求していくと、もはやひとつの教科だけでは授業が成立しないんですね。
例えば、ある調査報告を発表する際にニュース番組のようなスタイルでやろう、ということになる。そこで、自分がキャスターになって伝えるために、どうすればいいのか、と考えていくと、読み方や文章の表現のしかたなど、国語の分野へ発展していく。ビデオに撮影することになると、視聴覚教育です。教科から発展させることで、総合的な学習につながるんです。

金子
本校では、3年生以上で交換授業を実施しています。担任の先生の授業とは違った
視点で子どもたちの頑張りを認めることができ、担任同士の交流にもなります。担任の孤立化が問題視されていますが、それを克服する手立てにもなるでしょうね。

釼持
交換授業が定着している学校は少ないですが、学級の壁を乗り越え、総合的な学習につなげていくためにも、有効な方法だと思います。しかし一方で克服すべき問題点もあります。 例えば隣のクラスをどう理解し、打ち合わせの時間や異学年同士の学年会をどう持つか。指導力や人間性、学級経営能力も問われます。また、評価の段階での問題もあります。加点法での評価がスムースに行われるためにも教師間での共通理解が必要になりますね。これは担任同士の信頼関係にもつながります。

金子
1教科を一斉に2クラスで行うこともありますが、そこで気づいたのは、40人を1人で教えるよりも、80人を1人が主で進め、もう1人がフォローする、という形にメリットがあるということ。子どもにとっては、担任のほかにもう1人相談相手がいることになり、より多くの指導者と関わりを持つことができる。

村山
本校ではTTの加配をしていて、学年合同の学習形態をとる場合もあります。TTの長所は、課題別グループの子どもたちを十分見ることができる点です。 

釼持
1人の先生では多くの課題に対応しきれませんから、基本的には最初の段階からTTを行っていかないと。TTなしで総合的な学習は成り立ちません。 TTには主も従もない、と私は考えています。地域の方が入ってきたとき、誰が主で従、ではなく、その方も主として子どもに接していかなければ。

釼持
具体的には、総合的な学習の中で今後、どのような活動をしたいとお考えですか。

村山
高齢者が通う生涯学習館が学校に併設されています。ここを総合的な学習に結びつけたい。生涯学習館に通う高齢者の作品や活動に触れ、実際に体験してみることで、生きがいについて気づいたり学べたりするのではないかと思います。 学習には「流れ」が必要だと思うんです。まず最初に自分で疑問や問題を見つけ、調べ、なんらかの形でまとめ、それを発表する。けれど、これで終わってはいけない。次に新しい課題が出るような流れが必要だと思います。

釼持
例えば「ある公共機関から学校まで何歩あるか」をマップにするという授業を行うとします。マップを作ったあとにどうしようか、と投げかければ、生涯学習館に通う方に届けよう、あるいは駅にはろう、となるかもしれない。さらにはどうやって届けようかなど議論の範囲は拡がります。これからは、それぞれの子どもに言う機会を与えられる。どんなふうに梱包し、誰に何のためにどのように送るのか、それぞれ違うことをやっていい。これまで手をつけてこなかった部分ですよね。 体験イコール総合ではないんです。マップを作ることで終わってしまえば、体験のみで総合ではない。そこを乗り越えるにはどうしたらいいか。ここに総合的な学習があるのですが、多くの学校はまだそれをわかっていないように思います。


気づきの芽を持たせる学びのネットワークを


釼持
総合的な学習をすすめていく時、まず子どもたち自身が「こういう課題がやりたい」と思わなければ進みません。どのようにしたら1人1人の子どもたちに気づきの芽を持たせられるでしょうか。

村山
課題を子どもに自主的に持たせることはとても大切だと思います。しかし、課題によっては、校内の図書室で調べて終わり、という子も出てきてしまう。課題を持つことと同時に、それを追及する方法についても、子どもと相談しつつ、教師も見通しを持たなければならないでしょう。 また、総合的な学習の時間というのは小学校で完成するものではないと思うんです。ですから、課題の持ち方、調べ方、発表のしかたなど基礎的な部分を身につけさせるためにも、小学校のうちはある程度指導者が意図的に行なうことも必要なのではないでしょうか。

釼持
課題設定をすべて子ども任せで行なうのではなく、全員で取り組む教師指導型があってもいい。外に向けた目を大事にしながら、こういうこともできるんだよ、と示唆できるよう見通しをもち、「できそうだ」というところまでたどりついていかないと、子どもたちが追求できる課題は成り立たないでしょう。例えば「私はケーキが好きだから、どのケーキがいちばんおいしいか、調べたい」と言われたらどうしますか?

村山
本人の興味を尊重しながら、例えばケーキの作り方など、発展性のある課題となるように助言していきたいですね。また、学校での時間内でできることかどうかも見極める必要がありますし、子どもと相談しながら課題設定について一緒に考えたいです。

釼持
総合的な学習の時間にたてる課題には、教師指導型の課題、教師と子どもがいっしょに考える課題、子どもに任せられる課題と3段階くらいある、ということを前提にしつつ、教師でも見通しを持たないと、課題だけあって一歩も進まない、ということにもなりかねません。例えば空き缶はリサイクルに使えるものと使えないものがある、といった投げかけで、空き缶拾いは他教科へつながります。このつながりを持たせる、という点が総合的な学習として必要です。
次に必要なのは、自分の生活とかけ離れすぎた課題としないこと。ある程度現実の生活と密着した課題であるほうが子どもたちにとって追求しやすいものになる。結論として何かに結びつけようと思わなくてもいいんです。 学びのネットワーク作りも重要です。課題を追っていくと、1人では解決できなくなってくる可能性が高い。友達と意見を出し合ったり、専門家や地域の人に話を聞いたり、知的交流の場を持てるのが総合的な学習の場です。


励ましと記録 評価について


釼持
評価についてはどのようにお考えでしょう。

村山
学習の過程の中で文章、メモなどを蓄積していくことで、数値で表す以外の評価ができると思います。

金子
励ましや認める、というコメントの積み重ねがこれからは大切なのでは。各時間ごとの記録と感想に教師がコメントを添える、というやりとりを重ねながら、課題を終了する際に教師からの励ましの言葉があれば、子どもも安心して次の課題に取り組めるのでは。

釼持
総合的な学習の場合には、地域の協力者やボランティア、他クラスの先生方など、より多くの目で子どもを見ることができる。その分、作業の記録を残しておかないと、何をやってきたのかがわからなくなり、評価のしようがない。記録をファイルに残すシステムを大切にし、学ぶことの意欲や広がりを見ることが評価の観点になるでしょうね。
総合的な学習は、継続的な取り組み方と集中的な取り組み方があります。子どもが、何時間もひとつの課題を追求できるかどうかも研究しなければならない点です。子どもによってはどこまでも追求していける場合もあるが、それがむつかしい子もいるでしょう。最終的には、どの時期にどんな内容(領域)を考えて、どのくらいの時間設定が、という見通しが必要です。場合によっては、総合的な学習の時間をどう設定するかという時間割にかかわる学校運営の工夫も不可欠でしょう。

村山
これまでは学級・学年単位での取り組みでしたが、これからの学習形態はどうなっていくのでしょう。全校体制がいいのか、課題別で進めるべきなのか。また、他学年にわたる活動の場合、どう時間を保障していけばいいのでしょう。今はとにかく時間を設定していますが、2002年になったとき、外部の方も入ってきた場合、どのように評価、発展させていかなければならないのか。

釼持
特定の曜日に、小学校の低学年は1、2時間目 に生活科を入れ、中学年は3、4時間目に、高学年は5、6時間目に総合的な学習の時間を入れておくと、全校でやる場合に、2学年あるいは全学年で取り組むこともできる。ノーチャイムの学校も増えてくるでしょう。学校運営も工夫しなければ、毎週毎週時間割りが変わるということになってしまいますよね。

村山
総合的な学習を導入すると学力が低下するのでは、と悲観的に捉える教師もいるのが気になりますが。

釼持
新しく始める教育課程が学力低下につながると即考えるべきではないと思います。総合的な学習が導入されることの背景には、国際化や環境問題、技術革新など、既存の教科では対応しきれないからで、出るべくして出たものです。確かに内容も減り、新しい時間が増えますが、総合的な学習は各教科の基礎基本が身についていなければ取り組めません。 文部省は、30年ぶりに小・中・高で学力調査を行なうことにしました。これを、学力が低下しているからやるんだ、とは思いたくない。学力とは何かということに一石を投じる、既存の調査とは異なったものであってほしいと望んでいます。

本日はお忙しい中、ありがとうございました。