1999年(平成11年)6月18日(金曜日)
2000年度から小中高校で前倒し実施が可能になった「総合的な学習の時間(総合学習)」をにらみ、ユニークな実験授業を先行して始める学校が増えている。「国際理解や環境問題など、これまでの教科の枠を超えた学習」が総合学習の目的だが、実験授業では保護者が先生役になる試みも。ただ、中学校では教科担任制や受験対策のため対応が遅れるなど、課題も浮き彫りになっている。
六月上旬の火曜日。手業県浦安市立南小学校で努餌七時半から、カヌi郡国駆朝練に励んでいた。プールに浮がぶ四そうのカヌーのうち、杉材の一そうは児童の手作り。江戸川と境川に挟まれた同校が「川」をテーマに取り組む総合学習の一様だ。
同校では昨年,林間学校で訪れた黒部川でのカヌー体験を機に、五年生が地元の境川で生物や水質汚染を調査。さらに、べか舟と呼ばれる海苔(のり)採集の小舟が行き来した境川の歴史も学習。源流をたどるうち、江戸時代からの杉の産地、埼玉県名乗村と交流を深め、同村からカヌーキットを取り寄せた。五カ月かけて完成、プールでの練習を経て夏には境川に浮かべる予定だ。
今月には五年生が同村で地元小学生と交流するなど、川をめぐる探求は環境、歴史、体力作りといった教科にまたがる学習だけでなく、友達作りにも発展。村瀬光全校長は「まるで旅をするように自由に学べるのが総合学習のだいご味。自分の人生を方向付ける〃生き方教育"が実践できる」とメリットを強調する。
大阪府の箕面市立萱野小学校では先月、ペルー人音楽家のセルン・カセレスさん(43)を家庭科の授業に招き、六年生がペルー料理作りに挑戦した。「トウガラシたくさん入れると辛いんちゃう」。児童の質問に「ペルー料理にスパイスはつきもの」とカセレスさん。「ペルー料理なんて初めて。家に帰って作ってみたい」。にぎやかなおしゃべりも、れっきとした国際理解教育だ。
保護者が教壇に立ったのは京都市立高倉小学校。五年生のある班は伝統的な街並みコ泉町家の変遷」をテーマに選択。歴史に詳しい保護者の指導で町家の模型を完成させた。
授業の性格から身近な体験を取り込みやすい小学校に対し、中学校での取り組みの進展は今一つ。文部省は「担任が主要教科を受け持ち生活科の素地がある小学校に比べ.、中学では教科担任制で教師間の調整が必要なのも一因では」と話す。受験優先で実験授業をする余裕がないケースもあるといい、大阪府教育委員会は「受験が大きな壁となっている」と認める。
小中学隆での全面実施は三年後だが、導入を急ぐあまり「本来の目的を外れ、珍しい体験をすること自体が目的になっている」との批判も。東京都教育庁の担当者は学校を視察する度に、「目新しい取り組みに目を奪われて各教科の基礎をおざなりにしないようお願いしている」という。
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総合的な学習の時間
文相の諮問機関、教育課程審議会(三浦朱門会長)の九八年の答申を受け、学習握導要領に盛り込まれた。各教科で身に付ける知識や技能、態度などを相互に関連づけ、深めていくことを目的としている。特定の教科書はなく、環境教育や国際座解、福祉などの教科横断、的なテーマを扱い、体験的な学習,問題解決型の授業を目指している。二〇〇二年度に全国の小中学校で完全実施されるが、二〇〇〇年度から先行実施してもよいことになった。