2002年度からの全面実施に先立ち、「総合的な学習の時間」(総合学習)が今春から先行導入できるようになる。画一的な教科学習から脱して、学校の裁量で教科の枠を超えたユニークな授業ができるのが最大のメリットだ。導入に備えて、社会人講師の活用や実験授業など様々な試みが活発になっているが、全く新しい試みだけに教育現場には戸惑いも大きい。大阪府教育センターの指導主事で、府内で「相談行脚」を続ける二人の話を中心に、総合学習の課題を探ってみると----。
同センターは昨年7月、教科教育部カリキュラム研究室に専門チームを作り、総合学習に関する相談を受けたり、研修会を開くなど積極的に活動している。スタッフはこれまでに大阪府内の計約150校を回り、相談を受け付けた。電話相談も多く、総合学習の「お助けマン」的な存在だ。
専門チームのメンバーで指導主事の藤村裕爾さんと筒井寺夫さんは、まず小学校に比べて中学校の取り組みの遅れが気になるという。中学校は小学校と違って教科担任制をとっており、教科をまたがる総合学習の実践に機動的に動きにくい。受験勉強に直結しないから、三年になると生徒や父兄から拒否反応が出かねないという心配もある。
小、中学校を通して、学校によって準備の進み具合のぱらつきも目立つ。現場の教師からは「年間三百時間以上のカリキュラムを作る労力が大変。時間が足りない」「総合学習で指導要領の学習量が約三割も減る。学力低下が言われる中、総合学習でどんな学力を付けさせるのがが難問」などの声が多く、これらは全国の教育現場に共通する悩みといえる。
文部省も昨年10月、小学校内けの総合学習の事例集を出した。授業内容や学習展開などを具体的に紹介する内容で、近く中学、高校向けも刊行する。同省は当初、「各学校の創意工夫が大切。授業が画一的になる心配がある」として事例集を出すことに否定的だったが、「参考になるものが何もないと困るだろう」と〃方向転換"した格好だ。
同省小学校課の担当者はコ戸惑いは当然だし、本格導入まで手探りが続くだろう。事例集に縛られず、授業法や態勢、授業環境に知恵を絞ってほしい」と指摘。「国が決めて現場に下ろすのではなく、総合学習は分権型学習の先駆。学校全体で、さらには地域との連携を強めて取り組むことが大切」と強調する。
総合学習が教育現場に活気を生んでいるのは間違いない。「相談員」として現場の様々な取り組みを見てきた藤村さんと筒井さんは「学校がどんどん開かれてきた」と実感している。筒井さんは「実験授業、モデル授業などを通して学校と地域や人とのかかわりが深まり、相互交流も進み始めた。学校同士が連携や情報交換を意識するようになったのも収穫」と言う。
藤村さんは「しんどい作業だが、子供を前にして個性ある授業を進めるのが教師の役割。社会に目を向けた新鮮な授業が増えることで子供の目の色が変わり、先生も力が付く。総合学習を契機にカリキュラム全体に独創性を持たせる努力が根付けば、学校は必ずもっと元気になる」と話す。
本番が近づくにつれ、教育現場の不安は高まり、新たな課題が浮かび上がってくる可能性もある。「詰め込み主義」という批判が強かった教育を、大きくユニークに変えるインパクトを持つ総合学習をどう実践していくか。教師と学校の力量が問われている。
2000/1/28/金