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総合的な学習とは


現在、21世紀の教育を目ざして新たに教育改革が検討されている。そこでは、「生きる力」の育成を目標に「横断的・総合的な学習」が提案されている。これは、数個の教科にまたがり、総合的に学習させる方法で、記憶中心の学習を排し、問題解決の過程を通して生活に役立つ学力を身につけさせようとする。
この指導法は従来、総合的な学習といわれ、個々の教科に分けず、その全部または一部を総合し、しかも子どもの興味・関心に基づき、自発的活動や直接経験(体験)を通して、実践的な能力を育成するための方法と考えられた。
この方法は、伝統的な教科中心の指導法に対する批判として発展した。その背景としては、次の考え方があげられる。

(1) 言語中心の暗記主義を排し、直接経験(体験)を重視し、経験学習や直観教授を取り入れる。
(2) 児童中心の教育思想に基づき、子どもの興味・関心や自発的活動を重視する。
(3) 全人的な教育、すなわち知・徳・体の調和のとれた人間の育成を目ざす。
(4) 教育の生活化を目ざす。子どもの日常の生活経験を中心にして、あるいはそれとの関連において知識・技能を総合的に学習させ、実際の生活場面で出あう問題を処理・解決できる知識・技能・態度を育成しようとする。


カリキュラムの型


このような総合的な学習にも、いろいろのタイプが考えられるが、これをカリキュラム構成と結びつけると、理解しやすい。

まず、教科カリキュラムであるが、これは、学間の体系を重んじて、それぞれ独立した教科で編成するカリキュラムで、アカデミック・カリキュラムともいわれる。これは、よく組織化され、体系化され、単純化されている。したがって、子どもは知識・技能を組織的、系統的に学習することができる。しかし、これはややもすれば、生活や経験から離れ、抽象化されているため、難しく、学習意欲をひきおこさなくなり、学校の学習は、社会生活に適応する十分な力を与えないといった欠点が指摘された。

そこで、他方において経験カリキュラムが提唱されるようになった。これは、子どもの日常の生活や経験、活動を中心にカリキュラムの内容を選定し、それから全体のカリキュラムを構成しようと考える。この立場は、「なすことによる学習」という学習の原理にもあい、単に記憶するのみでなく、自発的活動を含んでいて、固定した教科カリキュラムの弊を救うのに役立つと考えられた。しかし、これは、形式を排斥するあまり、ややもすれば、統一が失われ、単純化、体系化に失敗していると批判された。

そこで、カリキュラムの構成では、生活場面を尊重しながら、それを体系化し、単純化することが求められる。そこで、その構成では、学年の進むにしたがって、すなわち心身の発達にしたがって、経験カリキュラムを体系化し、単純化し、抽象的な関係性を重んじ、教科カリキュラムの長所を生かして、生活環境を学問的に体系化する。つまり、両者の長所をとって相補的にカリキュラムを構成することになる。

このように、教科カリキュラムと経験カリキュラムの長短が理解され、両者は相補的に利用されるべきことが主張されたが、ホプキンズ(1937年)は、この両者をカリキュラム形態の両極にすえ、その中間にいろいろのカリキュラムを配置して教科型、経験型の統一を試みている。
これによって、各々のカリキュラムの特徴を理解することができ、現在問題になっている横断的、総合的な学習の位置づけや役割を理解することもできる。

若干の説明を加える。
関連カリキュラムは、それぞれ独立した教科を認め、それを基礎にするが、必要に応じて2個以上の教科を関連させて教授しようとするカリキュラムである。相関あるいは融合カリキュラムともいわれる。各教科の枠はそのままにして教科間の内容の関連を図ろうとする。
関連のつけ方には、
(ア) 単に便宜上結合したにすぎないもの
(イ) 同一分野の教科を結合したもの
(ウ) 同一分野の教科が融合するように結合したもの
など程度の違いがみられる。例えば、「国語と歴史」、「理科と算数」といった異なる教科の教材を関連させるもの、「歴史、地理、公民」を統合して社会科とするもの」などは、それらの例である。

広域カリキュラム(教科型)は、教科の枠をはずして広い領域から教育内容を編して総合的に学習させようとするものである。総合カリキュラムともいわれる。「歴史、地理、公民、経済、社会学など」を統合した社会科学は、その一例である。これにも、教科カリキュラムの痕跡を残しながら広い学習領域を枠として教育内容を編成するもの、完全に新しい分野を構成しているもの、などその総合の程度には違いがみられる。 広域カリキュラム(経験型)は、経験の中で何を中心とするかよりも、経験の範囲を広くとり、それをまとめて単元としたカリキュラムである。それを秩序立て、体系化すると、教科型の広域カリキュラムとなる。そこで、両者を合わせたものを広域カリキュラムと呼ぶこともある。

コア・カリキュラムは、生活経験を中心に中核課程と周辺課程で構成するカリキュラムである。前者は、すべての子どもが共通に要求される基礎的経験の組織であり、後者は、各個人の要求に応えうる経験や活動を含んだ組織である。子どもの現実の社会生活から単元を取り上げ、これを発達に応じて順序立てる。この単元は、経験単元といわれる。活動を中心とするので、活動単元ともいわれる。

これにも、いろいろの型があるが、子どもの生活上の問題を学習単元とする中核課程とし、これと関連をもった算数、国語などの体系的知識、技能からなる用具教科と音楽、図画工作などの表現教科とを周辺課程とする型もある。


総合的な学習の課題


前述のカリキュラムの型に応じて総合的な学習にも、いろいろの型が考えられるが、一般的な長所としては、子どもの自発的学習を促し、主体的創造的な思考力、問題解決力を育成し、実践的な生活力を身につけさせるといった点が指摘され、短所としては、教師が問題を探すのに骨が折れ、指導計画を立てるのに労力と時間を要する、作業が多くなり、指導に時間がかかる、子どもの興味や自由な活動を尊重するあまり、場当たり的な学習となる、系統的な知識、技能が習得されにくい、などといった点が指摘されている。
したがって、総合的な学習を効果的に行うためには、次の点に配慮することが必要である。

(1) 子どもの発達
総合的な学習の効果は、思考力の発達によって異なる。従来の研究によると、推理力を中心とする思考力は、8歳以前、9〜10歳、11〜12歳以後という3つの段階を経て発達するといわれている。すなわち、8歳までには、大小、時間、空間関係などの簡単な推理が直観的にできるようになり9〜10歳では、かなり進んだ概念的関係が意識的にとらえられるようになり、抽象作用もある程度発達する。しかし、言語的理解や表現に困難がある。11〜12歳以後になると、純粋に論理的関係、抽象的関係を意識的にとらえはじめ、言語的理解や表現もでき、簡単な形式的推理ができるようになる。
つまり、幼児期、児童期前半までは、具体的思考、自己中心的思考であるが、児童期の後半からは、次第に概念的思考、抽象的論理的思考へと変化しはじめ、青年期には、さらにこの傾向が強められる。
したがって、直接経験や活動を重視する総合的な学習は、小学校低学年には適するが、高学年になると、常に効果的とはいえない。

(2) 学習目標
指導法の効果は学習目標によって異なる。例えば、ガニエ(1974年)は、学習される知的技能は、低次のものから高次のものへと階層をなしており、関連する低次の技能を完全に習得することによって高次の技能の習得が可能になるという学習階層モデルを提唱している。すなわち、単語の発音、記号や事物の名称のような低次の学習から弁別、概念、法則の学習を経て、高次の問題解決の学習に達するという。
この立場に立てば、基礎的な技能の学習は系統的な学習法が効果的であり、初めから総合的な学習を用いても必ずしも効果的ではない。

(3) 課題分析
総合的な学習を用いる場合にも、まず、単元の終わりに達成すべき目標を具体的に定義することが必要であり、次にその最終目標を達成するのに必要な下位目標を見分け、さらに、その下位目標を達成するにはどんな下位目標が必要かを見分けることが必要である。以下、同じ手続きにより、最終目標に達するのに必要なすべての能力、技能について分析し、適切な順序で階層に示すことが必要である。この手続きは課題分析といわれる。このように最終目標に到達する順序も考えないで、子どもの直接経験や自発的活動に訴えるだけでは、場当たり的な学習になり、期待する力は習得されないであろう。

(4) 自己制御学習
学習者中心の学習指導においては、学習者が学習目標を達成するため、認知と行動を自ら活性化し、維持することが必要である。この学習過程は、自己制御学習といわれ、自ら目標を設定し、自分の行動を監視し、その結果を自己評価し、自ら賞罰を与える自己強化の過程が重視される。しかも、この学習を促進するためには、学習者が(ア)課題の要求、(イ)本人の特性、(ウ)効果的な学習方略について正しく理解することが必要である。

(新学社のHPより)