ぼけ予防検証

20029月21日(土)

 

「サバなどの青魚や、ブロッコリーなどの緑黄色野菜はボケ(痴ほう症)の予防になる」「手先を使う趣味を続けるとボケにくい」一一世間にはボケ予防に関する様々な通説が出回っている。目下、厚生労働省の研究班が通説の検証に取り組んでいる。その主任研究者を務める筑波大学臨床医学系精神医学教授、朝田隆さんに個々の通説の"効き目"を診断してもらった。

通説の検証は筑波大学や国立精神・神経センター、東京都老人総合研究所などの八機関が担当。茨城県や東京都など全国五カ所で約一万人の高齢者を対象に、「睡眠」「栄養」「運動」の三つの側面から実施中だ。実際には、ボケ予防に効果があるといわれている「三十分以内の昼寝」「サバやイワシなど青魚」「手先を使う趣味」などを高齢者に実践してもらい、その効果をアンケートや医学的な評価法によって測定しながら追跡している。

朝田教授によると、これまでの研究で明らかになったボケの危険因子は、

@アルツハイマー病を誘発するとみられる遺伝子の有無

A加齢

B昼寝の習慣

などだ。「アポE4」と呼ばれる遺伝子を持っている人は、これを持っていない人に比べ、発症率が三・五倍高い。年齢が十歳増すごとに、発症率は一・三倍高くなる。逆に、三十分以内の昼寝の習慣があると、発症率は半数以下に下がる。

昼寝30分有効 こうした研究と、朝田教授らのグループが茨城県内で過去一年、高齢者二千人の追跡調査をしてきた経験。その両面から、朝田教授は各種のボケ予防の通説について次のような評価を下す。

まずはプラス効果があるといわれているものからチェックしてもらうと

○「昼寝をするとボケにくい」

昼寝にも適切な時間がある。三十分以内だと発症率は低く効果的。六十分を超えると発症率が三-三・五倍へと高くなる。長時間の昼寝の習慣は要注意なのだ。

○「サバやイワシなどの青魚をよく食べると、ボケ防止になる」

オランダの学者グルーブが七千人の高齢者の追跡調査をした結果、青魚をよく食べる人は発症率が低いことが判明した。青魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)に予防効果があるとみられる。

○「緑黄色野菜にはボケ予防効果がある」

ブロッコリーやニンジンなど緑黄色野菜をよく食べる高齢者の発症率も低い。これらに多く含まれるべ一タカロチンに予防効果があると推測される。

○「編み物や陶芸など細かい手仕事はボケを防ぐ」

手先を使う趣味やスポーツがどこまで効果を持つのかは、まだ調査から定量的に立証されていない。だが、経験的にはプラス効果をもたらすものと考えられる。

○「囲碁やトランプなどのゲームはボケ予防になる」今の段階では、効果があるとは認められていない。例えば囲碁を若いときから続けている人の中に、ボケ症状が出ても、定石パターンを忘れずに、ちゃんと碁を打ち続ける人がいる。同じ趣味をずっと続けるよりは、年をとってから新たな趣味に挑戦する方が効果は期待できる。

 

マイナス説は?

次にマイナス効果をもたらすといわれる通説はどうか。

●「テレビばかり見て外出しないとボケやすい」

●「住み慣れた土地を離れ、息子の家族などと同居したりすると、発症することがある」

●「近所付き合いができない高齢者はボケやすい」

いずれも立証できない。すでに初期症状が出て、こうした行動が見られるのかもしれないのだ。

●「上にぺこぺこ、下に威張るようなタイプはボケる」

●「子犬などペットをかわいいと思わない人は、ボケやすい」

この二つは、定量的な測定もできず、現段階では根拠が認められない。朝田教授は「一連の通説の検証には、最低五年はかかる」とみる。検証がさらに進めば、実効の伴うボケ予防法が提案されることになる。

(編集委員 足立則夫)

 

 

 

マカ

標高四千併前後のアンデス高地で栽培されている多年草。大根やカブと同じアブラナ科に属する。原産地はペルー。現地では昔から栄養価の高い食べ物として知られ、朝鮮ニンジンになぞらえて、「アンデス・ニンジン」「ペルー・ニンジン」と呼ばれることも。

アミノ酸豊富な南米の植物

ペルー政府はアンデス高原に育つ穀物「キアヌ」などとともに、マカを輸出産品に育てようと栽培を奨励している。"マカの成分を分析すると、体脂肪の代謝や筋肉に働きかける「アルギニン」というアミノ酸の含有量が多い。また、ビタミンB群や、カルシウム、亜鉛、鉄などのミネラル類も多く含んでいる。このため、滋養強壮や女性の更年期障害などに効果があるといわれる。サントリー、ファンケルなどの健康食品メーカーがマカから抽出した成分を使ったサプリメント(栄養補助食晶)を相次ぎ商品化し、注目を集めている。

サントリー健康科学研究所にょると、ラットを使った実験では、マカを餌に与えることで血中の成長ホルモン濃度を増加させたり、繁殖活動を促す効果があることが確かめられているという。栄養価が高い植物であることは確かだが、サプリメントを摂取する際には決められた用量を守るなどの注意は必要だ。