困った人たちと対応策
1997/9/8/月
個性尊重の掛け声のもと、近ごろオフィスには多様な行動形態や価値観を持った人が急増中。その副産物だろうか、一緒に仕事をするとイライラさせられる「困った人」も増殖しているようだ。彼らとの人間関係に悩む人も多く、心理学本が売れるのはそのためとの説も。そこで身近な職場にもきっといる「困った人」たちと対応策について考えてみた。
翻訳本が売れる
「『困った人たち』とのつきあい方」(ロバート・M・ブラムソン著)という本が人気を集めている。相手をする上で厄介な人たちを「無口で反応しないタイプ」「優柔不断なタイプ」など七つに分け、それぞれの対処法を具体的な事例を交えて解説した本だ。出版元の河出書房新社によれば、六月の発行後すでに七万部以上が売れており、「この種の本では予想以上の手ごたえ」だという。
「日本でも困った人に悩まされでいる人が、それだけ多い証拠でしょう」とは翻訳者の鈴木重吉氏の弁。ただしこの本の事例はすべて米国の話。身近なオフィスではどうかと見回すと、あちこちから「困った人」たちに対する苦情が聞こえてきた。
----今年入社したA君は困惑顔で話す。「せっかく 仕事を覚えてきたのに、アクタガワ係長ったら『いよいようちも雲行きが怪しいらしい。君もかわいそうだね、こんな時期に入社して』なんて将来を悲観するこどばかり言う。やる気はなくなるしきちんと評価してもらえるのか不安だよ」
片や同僚のB嬢。「あら係長なんてノブナガ課長に比べればましよ。なにしろ課長は人の気持ちを考えないで強圧的に仕事を押しつける。仕事の目的をきちんと説明してくれればいいのに、質問すれば『黙ってやればいいんだ!』でしょ。そのくせ上役に対しては愛想良く、『上しか見ないヒラメ社員』、なんて陰口をたたかれているわ」----。
いずれも近ごろ多い「困った人」たちの典型例。特に上司に多く、部下たちからは悪評さくさくだ。まずは彼らへの対応策から。ウチダ・ビジネス教育研究所(束京・渋谷)の内田政志所長はこう話す。
「YES,BUT」で
「悲観的で自信のない上司はリストラとが倒産増といった企業を巡る環境悪化のあおりで生まれた。でも話を聞いてくれるだけまし。何か提案する時は他社の事例などデータをそろえて安心させればやがては乗ってくる。一方、強圧的な上司は昔からいるがなかなか厄介。何か言われても驚いたり感情的になってはダメ。まずは共感を示し、後で少し自分の意見も言ってみる『YES,BUT』の手法で応じては」
もちろん「困った人」は上司ばかりでなく、部下や同僚にもいる。----
「同期のミチナガには迷惑している。この世を自分のものと思っているほど自己中心的。チームで動いているのに『僕のやるべき仕事はこんなのじゃない』なんて協力しない。ようやく引き受けても『人手が足りない』とが『予算が少な過ぎる』なんて不平不満ばかり並べてやがる」と憤まんやるがたないのは中堅社員のC君。これを受けたD課長。「新人O」のウエキは無責任社員の典型。よくふらりといなくなり、いつかはロッカー室でマニキュアを塗って たそうだ。先日は作った資料を『ダメ』と言ったら、手直しするんじゃなくてそのままシュレッダーに入れてしまい、あきれてものが言えなかった」----。
上司にとってやはり一番困る部下は、仕事に意欲的 でない人たち。彼らの対応策について、文教大学教授の上杉脅氏(心理学)は提案する。「上司としては仕事を多めにやらせて引っ張っていくしかないでしょう。日常業務とは別に長めのスパンで課題と目標を与えて頑張ってみさせては。それでも仕事をしないなら何らかの理由があるわけだから、一度腹を割って話し合う必要がある。話して分からなければ人事部に相談すべき。部下を使いこなせないことが自分の失点になるなんて気にしないことでず」
もちろんそんな「困った人」どチームを組むことになった〃不幸な”同僚たちも頭が痛い。
会社全体にマイナス
「『嫌な奴』と上手につき合う法」(PHP研究所)の薯者である保坂栄之介氏によれば、「イライラや怒りの感情に負けてはダメ。間をおいて冷静になれば、問題処理能力が生まれてくるはず」。カッとなったらコーヒーを買いに行ったり、トイレで頭を冷やしてみるのもいいだろう。相手と自分との相性を深く考え、それでも共倒れになる可能性があると判断した時は上司に相談するしかない。
上杉教授は社員個人ではなく、企業にも意識改革が必要と説く。「社員の労働意欲に関して会社ぐるみできちんとサーベイすべき。同じような人員で似たような仕事をしているのに、仕事の能率が遵う職易があれば、それは能率の悪い職場に『困った人』たちがいる可能性があるからです。『困った人』の存在は会社全体にとってもマイナスなんですよ」